有田芳生の『酔醒漫録』

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「新風舎」のあくどい商法

2006-11-29 08:57:01 | 立腹

 11月28日(火)朝からずっと雨。予定では午後から二つの試写会に行くつもりだった。それをやめて葉書書きなどの雑務をこなす。藤原新也さんの日記が「新風舎」のあくどい商法を取り上げている。「週刊文春」でも小さな記事になったが、「霊感商法」ならぬ「希望商法」とでもいえるようなやり口だ。エッセイや写真の賞を設け、そこに応募し、落選した人たちに「共同出版」を持ちかける。会社として制作や流通に責任を持つから、費用の半分を出さないかというわけである。それが200万円だと最初は提案するそうだ。多くの出版社、とくに中小の会社は経営問題を抱えている。そんな出版社にとって自費出版は経営を潤す。一般的には100万円(80万円でも可能)も出せば製作費(編集、印刷、製本など)は充分なのだが、相手から300万円ほど出させる。自分史やエッセイなどを単行本にしたい人は多い。しかし、そうした希望を持っていても、実際に出版できるまでにはさまざまな困難がある。原稿への不安もあれば、負担金額の問題もある。そこに懸賞募集へ応じる根拠がある。「新風舎」のやり方は、被害を受けたという人たちの証言を読むかぎり、出版への期待を利用した悪質さが見受けられる。この出版社は事件やノンフィクションなどを文庫本で出しているので、何冊かを購入したことがある。実は『歌屋 都はるみ』が文春文庫で絶版となったので、増補版の出版を「新風舎」に話をしてみようかと思ったこともあった。やめてよかった。いまのように問題が続出してくると、これまでの出版物は、悪質な出版方法を隠すための役割を結果的に果していることになるからだ。長引く出版不況と著作を持つことへの願望が背景となっているのだが、「希望商法」は限度を超えている。

061128_23050001  外岡秀俊さんの『情報のさばき方』(朝日新書)をふと開けてみた。赤線を引いたところが眼に入った。外岡さんが何度も触れた疋田桂一郎さんの文章についてである。「疋田さんは文章の綾や表現の襞よりも、全精力を費やして事実関係の細部の確認にこだわる方でした」と外岡さんは書き、その心がけは「巧みな文章よりも、正確に伝えることに大事を置いた無味無臭の文章」だったと引用している。新聞記者による報道記事のことなのだが、ノンフィクションでも基本は同じだ。「事実関係の細部の確認にこだわる」ことに何ら問題はない。単行本『X』のために国際シンポジウムの記録『東京裁判を問う』(講談社学術文庫)を読む。夕方から長女と有楽町ビックカメラと銀座アップルショップ。留学に必要な電器類を買う。地下鉄で田原町。浅草の雷門まで歩く。家族と待ち合せをして米久本店で牛鍋を食べながら送別会。鷲神社まで歩き、酉の市を楽しむ。入り口では長女と二女の知人が熊手を売っていた。そぞろ歩きつつ少し大きめの熊手を購入。アントニオ猪木に顔が似た男性の発声に合わせて「いょーっ」と手をたたく。深夜に近くなったので帰るべく歩いていたところ七味唐辛子売りが気になった。眼の前に並べられた一味、胡椒、胡麻などの7種類をその場で混ぜ合わせて売っている。香具師(やし)の渋い口上は芸だ。小沢昭一さんが『日本の放浪芸』(岩波現代文庫)で紹介したように、「舌先三寸しゃべくりの面白さ」に感激。酉の市の興奮を身体に感じて鷲神社をあとにした。


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18 コメント

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新風舎、わたしも原稿投稿しました。 (asahi)
2006-12-14 10:15:17
新風舎、わたしも原稿投稿しました。
月間賞の中には入りましたが年間には選ばれず、電話やアンケートが来ました。
セミナーの参加を誘われ、出版者にも遊びに来ないかとも言われました。
そんな暇もお金もないので今は無理です。と言いいましたが考えておこうと思っていました。
このブログを知ってよかったです。

先日 新風舎の出版大賞に応募し「一時通過しまし... (K)
2007-05-02 11:49:09
先日 新風舎の出版大賞に応募し「一時通過しました」と封書が届き浮かれてしまっていました。
 「新風舎」と入力して色々みていて愕然としました。
「希望商法」ですか。切ないです。
 夢を実現したいという気持ちを踏みにじることは どんな人であれ 決してしてはいけない事です。 わずかな可能性にかけて、自分を信じて頑張っていこうとしている 切なる想いを 人間の大切な感情を 「新風舎」人に沢山の想いを伝える出版社がそんなことをしていたら 信じることを諦めろと言われているようで‥‥
ぽっかり穴があいてしまった気分です。
ですがやはり子供の頃からの夢をそう簡単に諦めたくはありません。一度きりの人生ですから夢をもって生きていきたいです。疑う事は簡単で、はかりしれない絶望感を植えつけてしまいます。信じることよりも簡単です。その中に自分を置いてしまったら負けのような気がします。 知識のない私に汚点があったのだと 今回は流して もっと視野を広げて活動していこうと思いました。
遅くなりましたが新風舎から手紙が来るまで事実を... (ふむっ)
2007-08-02 20:13:04
遅くなりましたが新風舎から手紙が来るまで事実を知りませんでした。
今はとても複雑な気持ちです。
自分は1年前に本を出したした。

制作時間は十分すぎるほど時間を頂きました。
正直な話。
うまく乗せられたんじゃないかと思うときもありました。
細かいことはたくさんありますがここでやめときます。

ただ色んな人が夢を持って自分と同じような立場にいる人がいると思います。
その夢が壊れないでいてほしいと思いました。

悲しいのはせっかく世に出た本が
新風舎で出版したことによって潰れたんじゃないかと思うといたたまれません。
出版した人は悲しんでると思います。
どんな本でも本人にとってとても大切なんです。
それを詐欺の本みたいになってるみたいで。

自分はどちらの肩も持てません。
両者に対して「ふざけるな!」て気持ちです。
失礼しました。
私は小説を趣味で書いています。はじめ、自分の小... (enterme)
2007-08-16 20:15:43
私は小説を趣味で書いています。はじめ、自分の小説の技法を磨きたいと思い、新風舎の表現学校に行きました。この学校は新進の作家を呼んで講義をするのですが、この学校に通うと、出版相談会の案内のDMがきます。これに行きますと、原稿を共同出版しないかと営業されます。ちなみに、私がこの相談会に行ったとき、言語に障害を持った方が隣で相談をしていました。私の場合、書籍の流通に関する知識があったため、話を聴いて、「これは詐欺商法だ」と気づき、その後は一切新風舎には近づかないようにしています。書店に営業をして、販売すると説明をしていますが、一定の業界に関する知識を持っている人には、嘘だとわかる内容です。ちなみに私は、300万円の見積もりを提示されました。一般の方は絶対に近寄らないほうがいいと私は思います。私が今でも気になっているのは、あの隣で相談をしていた障害を持った方が、騙されたのではないかということです。
小説をどんどん投稿させて紹介しているサイトって... (nijono)
2007-08-25 18:34:17
小説をどんどん投稿させて紹介しているサイトって、怪しくないですか?出版された本、ていうのを見たら、新風舎と文芸社だけでした。自分も趣味で小説を書いていて、いずれどこかで発表しようと思っているのですが、詐欺に合わないか、心配です。
皮肉にも、有田様のブログを知るきっかけが「新風... (ソナム)
2008-01-08 00:20:55
皮肉にも、有田様のブログを知るきっかけが「新風舎」でした。
私のように、朝鮮戦争、従軍慰安婦、連行などについて関心が薄い人に読んでもらいたいと思い、新風舎から出版しました。売れなくても「末永く売り続ける」ということだから、倉庫代がいるのだろうな、と思って割り切っていました。
私にとって新風舎は、本を出すための、才能と自信と情熱と時間と忍耐の欠如を、お金で補うことで夢を実現してくれた会社です。この2年間に得たものもたくさんあります。負け惜しみや傲慢に聞こえるかもしれませんが本心です。
考えても仕方がないので、本業のために眠りたいと思いながらも、眠れずにお邪魔させていただきました。怒りはありませんが、やはり動揺しているのだと思います。
ただ、在庫はどうなるのかなあ、ということが心配です。有田様に手にとって頂ける可能性が少なくなったのは本当に残念です。国会図書館にあるらしいので、足を踏み入れた時に思い出していただくだけでも光栄です。
こういうずうずうしいことが書けるのも、出版の産物だと思います。
先日、コメントをエントリーさせていただいて、気... (ソナム)
2008-01-15 21:38:00
先日、コメントをエントリーさせていただいて、気持ちを受けとめていただいたように感じ、穏やかな気持ちになることができました。ありがとうございました。今日、新風舎から手紙(通知)が届き、再び複雑な心境です。今は、明細を要求すればよかった、という己が不覚と、信用ということの大切さを実感しております。
ところで2冊目の方は、11月15日に奥付があるのに、国会図書館の検索で出なかったので、先のコメントを訂正します。1冊目はありました。(蛇足ですが^^;)
新風舎という出版社には、埋もれていく個人の思いを残してくれる、という期待をしていました。その気持ちまでは失くしたくないと願っています。
色々な人が騙されていて気の毒ですね。 (匿名希望)
2008-01-19 16:52:40
色々な人が騙されていて気の毒ですね。

なんだか不愉快です。
新風舎も、在庫を引き受けてくれる会社を探してく... (ソナム)
2008-01-20 14:37:33
新風舎も、在庫を引き受けてくれる会社を探してくれればいいのに、と思います。
書いた人にとって本は我が子のようものと思います。それを、廃棄することになったので40%出して引き取れ、という「提案」に、憤懣やるかた無しです。
すみません。感情的なので、公開されなくていいです。お読みいただきたかっただけです。
自分としては、出さなければ死ぬ時に後悔したと思うのでいいのですが、この本を出す、と親に報告した時の父親の一言「年金一年分」という言葉が忘れられません。
本日、以下のメールを新風舎に送信しました。 (音無)
2008-01-22 19:37:26
本日、以下のメールを新風舎に送信しました。

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新風舎保全管理人 川島英明様

私は新風舎から「ISBN 4-7974-5135-1」と
「ISBN 4-289-00207-2」を出版した著者の○○○○(筆名:音無)です。


2008年1月22日付けのあなたの「質問に対するご回答」によると、

> 4 出版契約について
> 出版契約は破産により終了となります。
> ③本の所有権は新風舎にあります。

と書かれてありますが、
出版契約は破産により終了となるのに
どうして破産した新風舎が本の所有権を主張できるのですか?
説明してください。

すみやかに、著者に在庫品と印刷データを無料で返却してください。
ご多忙のことと存じますので私が引き取りに伺います。

繰り返しますが、
すみやかに、著者に在庫品と印刷データを無料で返却してください。

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