有田芳生の『酔醒漫録』

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安倍晋三36回の「思います」

2006-09-29 09:36:48 | 思索

 9月28日(木)朝6時すぎから単行本『X』の原稿を書く。電車のなかでも歩いていても、そしてプールのなかでも頭のなかは昭和24年あたりのことを考えている。「ザ・ワイド」で困ったことが起きた。最初のテーマは東京駅で火災が発生して京葉線がストップしたというニュースからはじまった。「発生もの」といって、放送までに起きた事件などを急きょ取り上げることがある。情報番組だから当然のことなのだが、コメンテーターとしては大変だ。予定されていたテーマならそれなりに準備ができる。しかしテレビ局に行ってから新しい項目が入っていると、そこから「仕込み」が必要となる。「困った」というのは、どうしても情報が限られるからだ。スタジオでは草野仁さんから3回も質問がやってきた。2回までは処理できたが、最後は具体的な情報ストックがなくなってしまった。何とか「切り返し」てようやく次のテーマに移ったとき、困惑がはじまった。何かといえば「思う」という言葉に囚われてしまったのだ。コメントの結びを「思います」としていることが気になってしまったのだ。そしてすぐに浮かんだのは安倍晋三の総理就任記者会見のことであった。これからの政治を語ったとき、「思います」という言葉を36回も使ったのだ。心理学者などは「思います」という言葉の多用は、自信のなさの現れだと分析する。そうなのだろうか、だとしたらコメントの終わりをしばしば「思います」で締めくくっているぞと気になり出した。コメントはいかに着地するかが難しい。技術的問題でもあるが、本質的には認識の程度の反映だろう。たとえば自分が実際に調査し、蓄積のある問題では断定をしているからだ。

060928_19410001  しかしそうではなく情報として獲得した問題では、どうしても断定はできず、「思います」「~ではないでしょうか」となる。ある大学教授のコメントがいつも「~なんですね」だったとき、口調は柔らかでも、高見に立って語っているように伝わってきた。語尾の処理は難易度の高い問題だ。自信のなさとしての「思います」と開かれた「思います」がある。安倍総理が「思います」を多用するのも無意識なのだが、政治家としては頼りなさを感じさせてしまうのだろう。『日本国語大辞典』(小学館)で「思う」を引いてみた。最初に「何か具体的な考えや感情を心にいだく」とある。さらに見ていくと「そうだと深く信じこむ。また、自信をもつ」ともある。ならば「思います」に自信のなさを感じるのは、語義的には問題があることになる。こんな説明もあった。「『考える』は『筋道を立てて客観的に判断する』という頭のはたらきを表すもの」だが「『思う』は思考や感情の具体的内容に重点がかかり、またどちらかと言えば想像、決意、心配、恋情など、主観的、感情的な要素が強くはいっている」とある。精神活動を表す「考える」と具体的な感情を喚起する「思う」ということだ。安倍総理の言葉遣いが断定でないことから弱さを感じさせるのだろうが、それが多用されることでより自信のなさに映ってしまうのだ。コメントとしての「思う」の使い方を「考え」よう。大山の「ちくら」でホームページ管理人の澤田篤さんと飲む。長芋ソーメン(680円)の芸術的な包丁さばきに感嘆した。


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2 コメント

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「思います」は、対面的な場で使われるときは、「... (五十嵐茂)
2006-09-29 10:17:34
「思います」は、対面的な場で使われるときは、「と、私は思う」という意味をふくみ、「あなたにも通用するかわからないが、私の考えでは」という限定をあらわす場合があるかもね。この場合の表現は、私限りの確信ですという一歩引いた立場を表明することができます。いずれにしてもワンクッション柔らかくする効果があるでしょう。安倍さんのニュアンスは直接聞いていないのでわかりません。
世の中に断言男というのも居ますが、これは断言を自分の権力的権利と思い違いしている男でしょう。私にとってはうらやましいかぎりの人ですが。
これは一般論ですが、自分の考えを提起する際は、... (Kogane)
2006-09-29 19:38:39
これは一般論ですが、自分の考えを提起する際は、断定口調より、「~と思います」の方が、他人に対する配慮が感じられ、いいと思います。「私の考えはこうですが、(あなたは)どう思いますか?」と言った感じかな。「自信の無さ」などの印象は受けません。

それと言葉づかいの観点から、最近「きれいです」、「面白いです」など、「~です」の多用が気になります。「面白いと思います」とか「きれいだと思いました」の方が良いと、お・も・い・ま・す。

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