有田芳生の『酔醒漫録』

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「かぐや姫の物語」を見た

2013-12-24 12:29:13 | 映画
12月24日(火)いま締め切りを原稿を書きつつ、筆休めにフェイスブック用のこれを書いています。昨日は池袋リブロに行って矢崎泰久さんの『人生は喜劇だ  知られざる作家の素顔』などを買ってから、豊島園で「かぐや姫の物語」を見ました。2時間半が短く感じられました。次女は「あの絵がイヤだ」というので見てはいません。でも僕には素敵なタッチでした。感覚はそれぞれです。高校時代の古文の授業で習った竹取物語の冒頭はいまでも覚えています。しかし全体を読んだことはありませんから、どんなストーリーかは、詳細を知りません。8年をかけた作品で50億円の製作費だそうです。私的な感想では生まれてから死ぬまでの物語だと思いました。月に戻れば現世の記憶が消えるというのですから、まさしく死をイメージしているのです。『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』には「長期記憶」という表現が出てきます。死の厳しさを説明したくだりです。「ひとりの人間が長い時間かけて収穫し、ため込んだ記憶が一気になくなってしまうわけで、非常に不幸な、かけがえのない損失だと思います」。かぐや姫が嘆くのは、地球で経験してきた多くの記憶ーそれはうれしいことや哀しいこともふくめたすべてーが失われてしまうことでした。「生きている手ごたえ」というセリフがありました。自然のなかで遊び、労働する「手ごたえ」。高畑勲さんは人間社会の根底的な幸福感を描こうとしたのではなかったか。僕にはそう思えました。そして冒頭とエンディングロールで日本テレビの氏家斎一郎さんの名前が製作者として流れていきました。氏家さんもすでに亡くなっています。氏家さんの記憶は消えても、「生きている手ごたえ」は確実に存在していました。「かぐや姫の物語」は、人間存在の根本原則をアニメで表現したのです。さて原稿に戻ります。何とかめどをつけて夕方にはジムで泳ぎたいと思っています。


「十三人の刺客」を見た

2010-10-01 06:22:21 | 映画

9月30日(木)もう10月か。会館事務所で事務を終えていくつかの所用。神保町に出て「萱」で夕食。常連の重森ゲーテさんが23日に亡くなったことを知らされていたけれど、顔を出すことができなかった。重森さんは作庭家・庭園史家の重森三玲さんの三男で名前は埶氐(ゲーテ)。長男は完途(カント)、次男は弘淹(コーエン)、三男が埶氐(ゲーテ)、四男は貝崙(バイロン)長女は由郷(ユーゴ)だった。「こんな名前やからいじめられたよ」というゲーテさんの京都弁が懐しい。奇才の三男があっという間に去っていった。享年74。残念でならないが、人間の別れはこんなものかもしれない。勢いで「家康」。名古屋市長の評価が別れる。市長は現代の「極小ボナパルト」ではないか。そんな疑問もあるが、しばし注視したい。時間ができたので「十三人の刺客」を見る。「義」のために生きることに共感。


「日本のいちばん長い夏」の薦め

2010-08-10 11:04:47 | 映画

 8月9日(月)国会の議員会館は閑散としている。議員が週末から地元に戻っていることに加えて閉会中ゆえである。名古屋から後援会長の樋者正昭さんが来訪。打ち合わせの後、雑務。夕方になり銀座「教文館」へ。「新潮」9月号とカール・マルクスの『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日「初版」』(平凡社ライブラリー)を入手。壹眞珈琲店で「新潮」掲載の丸谷才一「竹田出雲よりも黙阿弥よりもー井上ひさしを偲ぶ会で」を読む。「わたしたちは井上ひさしの芝居の、初演や再演や三演の小屋に足を運んで見物し、拍手喝采したことを、後世の日本人に対して自慢することになるでせう」という締めくくりに共感。井上ユリさんによればシベリア抑留を井上流に描いた『一週間』は、最初の連載2回ほどは米原万理さんも眼を通していたという。今年暮れか来初には江戸時代を舞台にした短編連作が単行本になるとも聞いた。「『一週間』は劇化できませんかねぇ」と訊ねると、「ひさしさんは書きはじめるときに小説か脚本かを決めていたから、それはないですね」とのこと。しかし映画にしたいという話はあるという。時間を見るとギリギリだった。急いで東映へ。半藤一利さんが編集者として昭和38年に『文藝春秋』で行った座談会(文春新書)を文士劇として再現した「日本のいちばん長い夏」を見る。政治家、官僚、作家など28人が集まって行われた座談会は、ポツダム宣言受諾の背景、原爆投下、ソ連参戦などをリアルに明らかにしていく。市川森一さんは村上兵衛、田原総一朗さんは志賀義雄、山本益博さんは人間魚雷回天に乗るはずだった上山春平さんを好演。迫水久常は誰だろうと疑問だったが、何と「ザ・ワイド」でも一時だがご一緒した湯浅卓さんだった。映画の前に金券ショップに行ったが扱っていなかった。上映も1日に2回。「今、この日を思い起こすのは、今度の戦争で死んだ『310万人』以上の同胞のことを忘れないためなのであります」。こうした趣旨の映画を多くの人たちに見てもらいたい。


「ハーツ・アンド・マインズ」に描かれたベトナム

2010-04-15 12:04:55 | 映画

 4月13日(水)大山の事務所でポスターやキャッチコピーなどの打ち合わせ。6月12日に参議院選挙の「決起集会」を大山で行うことにした。5月31日には憲政記念館で『闘争記』(教育史料出版会)の出版記念会を行うこともすでに決定。予想される公示日まで72日。全国行脚第2弾も近づいてきた。京橋でベトナム戦争50年を機会に公開される「ハーツ・アンド・マインズ」を見る。わたしの原点としてのベトナム戦争。実写フィルムは歴史の証言者だ。射殺される「ベトコン」、爆撃で亡くなった子供たち。よく知られるシーンが、まるでいまのように再現されていく。ウェストモーランドが、アジア人の生命は西欧よりも軽いなどと公言していた。こんな奴等がのうのうと戦争を指導していたのかと思えば、アメリカの野蛮に改めて怒りが込み上げてくる。その愚劣が湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争へとつながっていった。建国の一時期にアメリカは戦争と無縁だった。オバマの思想と行動が問われている。神保町「萱」。小幡利夫さん、某出版社のKさんと戦略会議。「ジェィティップルバー」で菅直人さんの御子息、源太郎さんと出会う。


映画「クロッシング」の緊張感

2010-03-27 09:02:32 | 映画

 3月26日(金)すごい映画があったものだ。出張準備を終えて虎ノ門へ向った。「クロッシング」。端的な感想をツイッターにこう書いた。〈すすり泣きが広がった。一般試写会で異例の拍手が起きたのは脱北者を描いた「クロッシング」。収容所国家・北朝鮮の実態がここにある。昨年末に政府主催で行われた拉致問題集会よりも多い観客。盧武鉉政権では公開できなかった映画がようやく日の目を見た。必見!〉。4年前に完成していた作品を私たちはようやく見ることができる。映画を公開できない国とははたして民主主義国家なのか。そこで描かれた北朝鮮も、脱北者100人からの証言に基づいた真実。あまりにも悲しい結末は、そこに救いを描けるような現実ではないからだ。果たして日本でこのような水準の映画は作れるのか。現実との緊張感である。ここで描かれた世界は拉致問題とつながっている。31日に「意見広告7人の会」はツイッターを活用した運動を世界に発信する。


「インビクタス/負けざる者たち」

2010-03-26 11:30:31 | 映画

 3月25日(木)参議院選挙と単行本の準備作業。銀座「シネパトス」で「インビクタス/負けざる者たち」を見る。クリント・イーストウッドの爛熟した作品には驚くばかりだ。ネルソン・マンデラの指導者としての判断力は、獄中27年に熟成したものだろう。長い獄中にあって猜疑心が肥大化する者とそうでない者の違いはどこから生じるのだろうか。いずれにしても人間の深みはどう時代に向き合うかで生まれるものだ。87歳になった鶴見俊輔さんの『思い出袋』(岩波新書)を読んでいて、この柔軟な思考は、ご本人がいつも語っている「不良精神」から育ったものではないかと思えてくる。「ぼんやりしているが、自分にとってしっかりした思想というものは、あると思う」と鶴見さんは書いている。古在由重さんも語っていたように、思想とはその人の行動に現れるものだ。自分でも充分に把握できていない「ぼんやり」した判断で行動しても後悔がないもの。それが思想だと鶴見さんはいう。死刑判決を受けた22歳の金子ふみ子が天皇の恩赦を拒否して自殺したのも、そこに思想があったからである。


「ザ・コーヴ」「いのちの山河」の難しさ

2010-03-24 10:04:12 | 映画

 3月23日(火)午後から秋葉原でイルカ漁の実態を撮影した話題作「ザ・コーヴ」を見る。大山の事務所に戻り、夜は文化会館で岩手県旧沢内村の先駆的福祉政策を推進した深沢晟雄(まさお)村長を描いた「いのちの山河」を見る。板橋社会保障推進協議会主催の催しで、朝昼の会に700人、夜の会にはざっと300人ほどが参加。配られたチラシには私が昨年「週刊朝日」に書いたルポが全文収録されていた。とてもいい映画だが、啓蒙作品ゆえに面白くないジレンマ。時代考証にも疑問があったのは、たとえば深沢の妻(とよた真帆)がかけていた眼鏡。1950年代末から60年代にあんなセンスのいい商品はなかったはずだ。歴史の事実を作品にする難しさは、ドキュメンタリーの方が訴求力があるからなのだろう。ツイッターから。〈国際的議論になっている日本のイルカ漁(和歌山県大地町)。その実態を描いた「ザ・コーウ゛」。最後のシーンが残忍で、直後の立ち食いソバさえ不快に感じるほど。一方的撮影で漁師の言い分が無視されている問題の一方、はていつからイルカ漁が日本の伝統になったの?と批判者の意見にも疑問〉。イルカ漁が1200年前からの伝統というのは虚偽。太地町でイルカ漁が行われるようになったのは、捕鯨ができなくなってからで、ここ20年から30年のはず。家畜と自然生物、環境問題と食の問題を区別して議論すべきだ。勝手に撮影、公開したからだろう。太地町の町民の顔にはボカシが入れられている。町長や水産庁関係者は公人だからボカシを入れていないというが、イルカ漁反対を主張している町会議員にもボカシが入っている。本人たちの希望だというが、公人がそんな逃げ腰では話しにならない。


「新しい寅さん」=笑福亭鶴瓶

2010-03-16 09:40:21 | 映画

 3月15日(月)がん治療の最先端技術=重粒子線治療の患者さんから取材。心臓カテーテル手術など、日本が世界に誇る医療技術を完備した国際医療都市構想については、6月発売の『闘争記』に書き下ろす。「富の分配」とともに「富の創造」が求められている日本にあって、新しい産業構造が必要だ。「産業としての医療」を患者の立場でいかに推進していくかが課題。銀座に出て教文館で『ヘミングウエイ短編集』(ちくま文庫)購入。「壱眞珈琲店」で読書。新橋でクリニック。北海道遠征で現地スタッフのOさんと電話でやりとり。安売りチケットを買ったものの、時間がなくて見ることができなかった山田洋次監督の「おとうと」。ようやく劇場に行くことができた。ツイッターから。「上映終了間近と知って昨夜最終回で「おとうと」を見た。山田洋次監督の「新しい寅さん」=笑福亭鶴瓶がすごい。吉永小百合は優しくも毅然とした「日本の母」を演じる。世間から困った存在と排除される人間の哀しさと孤独。その心奥にまで降りていくことのできないせちがらい渡世。心震わせる秀作だ」。   


「海の沈黙」の新鮮さ

2010-01-28 09:22:36 | 映画

 1月27日(水)参議院選挙用の文書を作成。気分を変えようと京橋で1947年にフランスで制作された「海の沈黙」を見る。ナチス占領下のフランスを舞台にしたレジスタンス映画。部屋を占拠したナチの将校。老人と姪はそこに誰もいないかのようにいっさい語らない。「徹底した沈黙の抵抗」。フランスを愛する将校はパリに出かけて愕然とする。そしてある決断をする……。「アバター」などの3D映画が話題の映画界にあってモノクロが新鮮だった。今年2回目のジム。泳いでから神保町「萱」。帰るべく路上を歩いていたら朝日新書編集長の岩田一平さんに遭遇。マスコミ志望の学生たちが集う「ペンの森」に顔を出し、しばし雑談。


「イングリアス バスターズ」はすごい映画だ

2009-11-28 08:00:06 | 映画

 11月27日(金)091128_072601 完璧な二日酔い。起きてすぐに「液キャベ」を飲む。12月24日ごろに発売される福田ますみさんの『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫)解説原稿のゲラに手を入れる。大山の事務所。新党日本時代に宣伝物でお世話になったEーグラフィックスコミュニケーションズのHさん、Kさん、Hさん来訪。これまでのお礼と今後のご協力をお願いする。駅前の薬局で再び胃薬購入。東武練馬のSATYで「イングリアス バスターズ」を見る。脚本の人物造形と俳優陣の演技、物語性、映像リアリティ、音響効果など、すぐれた映画の出来に驚く。目を背けたくなるシーンの数々。しかし戦争の現実とはこういうものなのだろう。成増に移動してホテルヒルトップのサウナで体調回復。駅の改札を出たところで買った日垣隆さん編著の『戦場取材では食えなかったけれど』(幻冬社新書)の序章「戦場に行かなかった父から子へ」を読む。日垣さんの御長女、御長男は、それぞれ一度だけお会いしたことがある。礼儀正しい挙措は、こうした父親から生まれたのだと納得。「戦場取材」ものという印象を受けるタイトルだが、序章を読めば「どう生きるか」という普遍的問題を扱ったものだとわかり、西郷隆盛を少し休んで、明日には読み終えるはず。自民党支持の「会長」と雑談。遅くなったので「兼祥」でビールに餃子。あちこちで選挙で1票を投じてくれたという声と、来夏への協力を申し出てくださる声あり。ありがたい。