季節も考えずに、フト行きたいと思ったところに行ってしまうこの習性はどういうものだろう。
先日川が見たくなり、江戸川まで行ってきた。
まず、柴又駅で降りて腹ごしらえをすることにした。
確か数年前に、上京した両親と共に独身時代の兄が車を運転して来たことがある。
日曜なのに、たいして賑わっていなかった。
道々うまそうなものが売られており、誘惑されながらトボトボと歩いた。
帝釈天へ。
何があるというわけでもないので、参拝してすぐ引き返した。
あまり混んでいない店を探して、お酒を飲み、焼き鳥丼を食った。
店の常連らしきオッサンが
「シェケナベイベー。また来るから。ヨロシク。シェケナベイベー」
と、若い女給に何度も言っていた。
30回ほど言い続けてオッサンは帰った。
腹を満たして眠くなったが、一応そのために来たので川を目指す。
江戸川沿いに着くと、月がぽっかり浮かんでいた。
矢切の渡しで向こう岸まで渡ろうという魂胆だったが、なぜか閉まっておりがっかりした。
向かいに船が見える。あれで渡るのだろうか。たいそうオツなことだろう。
しばらく川を眺めていると、犬を連れたオッサンがやってきた。
「やってねえだろ、今日は」
「今日はやっているはずではないんですかね。こういう不親切なこともあるものですね」
「寒い。今日は寒い」
「はい」
犬がこちらを見ている。ナデてほしいみたいだ。
俺の隠されたXパワーは「犬の表情が分かる」ことだ。これでいくらか見知らぬ犬に噛み付かれて往生したことがある。
犬は撫でられて目を細めた。
「何という名前ですか」
「スミタってもんだ」
「犬の」
「ボンちゃんだ」
「ボンちゃん、ボン」
犬は尻尾を振って喜んでいた。
「さむいさむい。帰るぞ。ボン来い」
オッサンとボンちゃんはゆっくり土手を登り、散歩に戻った。
いい風景だ、と思いながら見送った。
寒風が身に凍みてきた。
そういえば何年か前、季節を考えずに日本海沿いを旅して、五能線の途中の駅で高熱を出した覚えがある。
最終目的地の大間崎には観光客など誰もおらず、かすかに見える北海道から吹きつける寒風と次のバスが来るまでの3時間ほど対峙するはめになった。
ウミネコの群れがなんか怖かった。
強風にさらされながら金町駅まで歩いた。
駅前の喫茶店でコーヒーを飲み、手帳を取り出してここ数ヶ月の金のやりくりを計算して、暗い気持ちになった。
先日川が見たくなり、江戸川まで行ってきた。
まず、柴又駅で降りて腹ごしらえをすることにした。
確か数年前に、上京した両親と共に独身時代の兄が車を運転して来たことがある。
日曜なのに、たいして賑わっていなかった。
道々うまそうなものが売られており、誘惑されながらトボトボと歩いた。
帝釈天へ。
何があるというわけでもないので、参拝してすぐ引き返した。
あまり混んでいない店を探して、お酒を飲み、焼き鳥丼を食った。
店の常連らしきオッサンが
「シェケナベイベー。また来るから。ヨロシク。シェケナベイベー」
と、若い女給に何度も言っていた。
30回ほど言い続けてオッサンは帰った。
腹を満たして眠くなったが、一応そのために来たので川を目指す。
江戸川沿いに着くと、月がぽっかり浮かんでいた。
矢切の渡しで向こう岸まで渡ろうという魂胆だったが、なぜか閉まっておりがっかりした。
向かいに船が見える。あれで渡るのだろうか。たいそうオツなことだろう。
しばらく川を眺めていると、犬を連れたオッサンがやってきた。
「やってねえだろ、今日は」
「今日はやっているはずではないんですかね。こういう不親切なこともあるものですね」
「寒い。今日は寒い」
「はい」
犬がこちらを見ている。ナデてほしいみたいだ。
俺の隠されたXパワーは「犬の表情が分かる」ことだ。これでいくらか見知らぬ犬に噛み付かれて往生したことがある。
犬は撫でられて目を細めた。
「何という名前ですか」
「スミタってもんだ」
「犬の」
「ボンちゃんだ」
「ボンちゃん、ボン」
犬は尻尾を振って喜んでいた。
「さむいさむい。帰るぞ。ボン来い」
オッサンとボンちゃんはゆっくり土手を登り、散歩に戻った。
いい風景だ、と思いながら見送った。
寒風が身に凍みてきた。
そういえば何年か前、季節を考えずに日本海沿いを旅して、五能線の途中の駅で高熱を出した覚えがある。
最終目的地の大間崎には観光客など誰もおらず、かすかに見える北海道から吹きつける寒風と次のバスが来るまでの3時間ほど対峙するはめになった。
ウミネコの群れがなんか怖かった。
強風にさらされながら金町駅まで歩いた。
駅前の喫茶店でコーヒーを飲み、手帳を取り出してここ数ヶ月の金のやりくりを計算して、暗い気持ちになった。