弁護士山本行雄 情報提供 札幌弁護士会所属

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放射性物質、公害関連法整備、日弁連意見書、弁護士上田文雄、弁護士山本行雄

2013-08-24 13:25:28 | 放射能汚染防止法制定運動

2013年7月3日付で、日本弁護士連合会会長あてに、日弁連会員として、弁護士上田文雄、弁護士山本行雄の連名で、意見書を提出しました。以下に連絡先の記載を除く全文を紹介します。短い報道記事では十分に情報が伝わらないと思います。意見書の後に若干の説明をしたうえ、関連資料を添付しました。

 

<引用開始>

                                            2013年7月3日

日本弁護士連合会会長 山岸憲司 殿

                               札幌弁護士会所属 弁護士 上田文雄

                               札幌弁護士会所属 弁護士 山本行雄

         放射性物質に係る公害関連法整備の取組みに関する意見書

 日弁連は、早くから原子力の問題に取り組んできました。私たちも日弁連の会員として、又市民として、この問題にかかわってきました。

  しかし、日本は、世界第3位の原発保有国となり、遂には、福島第一原子力発電所の事故という悲惨な結果を招いてしまいました。このような結果の背景には、法制度の欠陥という重大な問題が横たわっています。

  放射性物質は、環境基本法関連の法律と、原子力基本法以下の原子力関連の法律に係っています。前者については、全面的に適用除外とされてきました。後者は、原子力利用のための法律体系であり、放射性物質を公害物質として規制するものではありませんでした。従来放射性物質については「法の空白」として指摘されてきたものです。

  福島第一原発事故を契機に、国会において、この法の空白が問題となり、2012年6月20日環境基本法13条の放射性物質適用除外規定の削除法案が成立し、放射性物質は、同法上の公害物質と位置づけられるに至りました。

  環境基本法では、「政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。」(第16条)とされています。これに従い、放射性物質についても環境基準を設け、これを規制しなければならなくなりました。

  しかし、環境基本法改正に伴う2013年6月17日改正の大気汚染防止法と水質汚濁防止法では、放射性物質の適用除外規定は削除されましたが、新たに規定された内容は、大気の汚染や水質の汚濁についての監視と、汚染・汚濁状況の公表のみです。放射性物質に対する公害規制法としての実質を欠いており、依然として法の空白のままです。 

  同時に法律改正によって、放射性物質の適用除外規定が削除されたのは、環境影響評価法、南極地域の環境の保護に関する法律のみであり、土壌汚染対策法など重要な環境・公害関連の法律は、依然として、放射性物質を適用除外にしたままになっています。

  私たちは、北海道における高レベル放射性廃棄物関連施設の問題を通して、人間が生み出した放射性物質が、環境と人間に及ぼす深刻な公害物質であることを強く認識させられてきました。膨大な量の放射性廃棄物についても、公害という視点から捉え直し、その性質に応じた法制度を構築する必要があります。

  私たちは、これまで脱原発を求めてきました。これからも求めていきます。しかし、福島第一原発事故に直面しして、改めて現実を見直したとき、最早、脱原発で安心できる段階ははるかに超えてしまったことを認識せざるを得ません。日本には、福島第一原発事故で破壊された4基の原発の外に50基の原発があります。加えてこれまでの原発操業が生み出した、大量の放射性廃棄物があります。更に、福島第一原発事故によってもたらされた放射能汚染という深刻な問題があります。これに対処するには、放射性物質を公害物質として正面から捉え、必要な汚染防止のための法律を整備する必要があります。

  わが国には、公害問題に取り組んできた国民的経験があります。「公害国会」に至る歴史的経験があります。この経験を放射能汚染に対処するために生かすべきです。 

  環境基本法が改正された今、日弁連は、人権擁護の立場から、放射性物質による環境汚染防止のための公害法の整備に本格的に取り組むべきです。

  そこで、次の2点について、私たちの意見を述べさせていただきますので、検討いただくようお願いいたします。

                          記

1、放射能汚染に対する公害法の整備について、総合的に調査研究して、その立法化に寄与すること。

2、日弁連として、早急に、次の趣旨に沿った内容の方針を明らかにし、広く国民に知らせること。

  「現在の法制度では、放射性物質による環境汚染及び人への健康被害を防止できないこと。環境基本法の改正を踏まえ、放射能汚染を防止するための、放射性物質に対する総合的な公害防止法を整備する必要があること。」  以上

<引用終了>

 

*意見書についての簡単な説明

 ① 意見書の中で、大気汚染防止法、水質汚濁防止法で、新たに規制された内容は「…についての監視と、汚染汚濁状況の公表のみ」と記載しましたが、「公表」のほか、常時監視結果の「報告」があります。

 ②短い報道記事で私達の意見書の趣旨を正確に把握していただくのは、難しいところもあるかもしれません。若干説明します。

   私達の考えは、環境基本法に代えて別の法律を作るのではなく、環境基本法適用という前提の上に、放射性物質に汚染防止のための法律を整備すべきだというものです。

   環境基本法の前身ともいえる法律が公害対策基本法だったのですが、そのときから放射性物質は公害関連の法律から全面的に適用除外されてきたもです。今回の環境基本法の改正によって、放射性物質が、同法上の公害原因物質として位置付けられたことは極めて重要です。しかし、今現在、「基本法適用、個別法不適用ないし未整備」の状態です。そこで、個別の法律を整備させなければなりません。一方、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染に関する既存の法律改正だけでは、将来わたって「汚染させない」制度にはなりません。法制度全体を見直し、総合的な放射能汚染防止法整備しなければならないのです。   <文責山本>

 

 

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<参考資料>

 この記事は、当ブログの他の記事の転載ですが、現在の放射性物質に関する法律問題を整理したものです。市民運動の参考資料ですが、報道関係書の方にも説明資料として渡しているものです。 

2013.9.8海洋放出の記載で、濃度規制は原発にはあり、再処理にはないので、その旨訂正しました。

 

環境基本法改正と、再稼働問題などを見据えての、当面の運動のための参考資料としてまとめました。

*全体の構成は、 1で、環境基本法改正により国が行わなければならない法整備とはどのようなものか、 2で、国が法整備を怠っている内容を整理し、 3で、その結果、われわれがどんな状況に置かれているかを指摘し、 4で、関係各方面に対するアプローチを実践するための例文集という内容です。

 

1 環境基本法の改正に伴い、国が行わなければならない法整備

 

(1)2012年6月20日環境基本法13条の放射性物質適用除外規定条項が削除になりました。

   環境基本法は、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることを「公害」としています。(2条3項)。放射性物質は、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染の原因物質ですから、当然この定義に当てはまります、。

   国は、環境基本法の定めに則して、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染について、放射性物質に関係する法律、政令などを整備しなければなりません。

   以下、公害規制に特化して説明します。環境基本計画については、別の機会に譲ります。法整備すべきポイントは次の3点です。

  ① 環境基準(環境基本法16条1項)と規制基準(環境基本法21条1項)を定めること。

  ② 常時監視体制を整備すること。(環境基本法21条1項)

  ③ 違反に対する、行政処分や、罰則を定め規制を順守させること。(規制には当然伴うものです。個別の法律に規定されます。)

   上の内、規制基準、行政命令、罰則は必ず法律で決めなければなりません。

 

(2)環境基準と規制基準とは

  ① 環境基準

     「政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。」(環境基本法16条1項)。と書かれています。

     この基準は、行政の達成努力目標です。具体的法規的性格はなく、強制力は有しないとされています。(判例、学説)。しかし、実務的には、この基準を実現するための政策が実施されていますので軽視できません。

  ② 規制基準

     「国は、環境の保全上の支障を防止するため、次に掲げる規制の措置を講じなければならない。1 大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染(中略)の原因となる物質の排出(中略)その他の行為に関し、事業者の順守すべき基準を定めること等により行う公害を防止するために必要な規制の措置」(環境基本法22条1項)と書かれています。

     この基準は、具体的法規制を有します。法律による強制力を持つということです。違反には操業停止のような行政処分や刑事罰があります。個別法で排出基準などの用語を用いることがあります。

 

  ③ 両基準の具体例

    上で述べたように2段構えになっています。イメージを持ちやすいように水質汚濁防止法の例を示しておきます。

    *カドミウム

      環境基準  =リットル0.01㎎以下

      規制基準  =リットル0.1㎎

    *P C B

      環境基準  =検出されないこと

      規制基準  =リットル0.0003㎎

    *アルキル水銀

      環境基準  =検出されないこと

      規制基準  =検出されないこと

 

(3) 常時監視

   公害規制のためには、汚染状況を常時正確に監視し、把握することが必要です。常時監視は国の義務です。なお、常時監視の実施者は、法律の規定により都道府県や市などの自治体に行わせることができます。「大気、水質、常時監視」などのキーワードで検索すると、身近に観測所などがたくさん設置されているのがわかります。法律を身近に感じることができるでしょう。

 

(4) 行政処分や刑事罰による強制

   公害について「規制」するということは、法律によって決めたことを強制するということです。大気汚染防止法のばい煙排出規制の例で紹介します。水質汚濁防止法も、ほぼ同様です。

  ① ばい煙発生施設の改善その他の措置命令などの行政処分(大気汚染防止法9条、9条の2)

    命令違反は、1年以下の懲役又は百万円以下の罰金(大気汚染防止法33条)。

    注:改善命令などが先行し、これに従わなかった場合に刑罰を科す方式を間接罰方式と言います。

  ② 排出基準違反、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(大気汚染防止法33条の2)。

    注:事前の改善命令などを経ず、基準違反を直接罰する方式を直罰方式と言います。

 

    ここで刑事罰の重要性について触れておきます。実際の検挙数が少ないことなどを理由に、刑事罰を軽視したり、行政指導を重視する考えが根強くあります。このような考えは事業者や行政に「強制力がない」という口述を与え、公害は犯罪であるという「公害国会」の成果を後退させるものです。行政周辺から流出する考えです。注意しましょう。

 

(5) その他関連する重要な制度や法律

 

  ① 総量規制

    汚染源が集中する地域では、濃度による排出規制だけでは不十分なので、排出の総量を計画的に規制すること。大気汚染防止法、水質汚濁防止法、ダイオキシン対策特別措置法などに採用されています。

  ② 排出口規制

    公害物質の発生施設の排出口で規制基準量を定める規制です。大気汚染防止法(13条1項)水質汚濁防止法(12条1項)でも採用されています。

  ③ 上乗せ、横出し

    条例では、法律の規制より厳しい基準を定めるのが「上乗せ」、条例で規制対象や地域を広げるのが「横出し」です。大気汚染防止法も、水質汚濁防止法も明文で肯定しています。明文がなくても原則的に認められるという説が有力です。

  ④ 技術的助言

    地方自治法上の(245条の41項)法律用語です。平成12年4月1日施行の地方分権一括法案で採用された制度です。従来「通達行政」と言われてきたように、国優位、地方劣位の悪しき慣行を改善するという振り込みでできた新しい概念です。地方公共団体の自主性及び独立性を尊重し、拘束しないということになっています。しかし、予算その他で優位に立つ国が地方に押しつける手段になることは十分あり得ます。濫用されやすい制度です。注意が必要です。実例をがれき問題の例で紹介しておきます。

    福島第一原発事故のがれき処理について、平成23年8月31日付の環境省から各都道府県・政令指定都市に、技術的助言としての「8000Bq/㎏を超え、100,000Bq/㎏以下の焼却灰の処分方法に関する指針について」で、焼却灰が100,000Bq/㎏を超えてもセメントで固化した後100,000Bq/㎏以下なら安全な埋め立てが可能としています。要するに、どれほど汚染されていようと、セメントを混ぜて10万ベクレル以下にすれば廃棄物として処分できるというものです。このような「安全に処分できる」と一方的に通告するような文書は、到底地方の自主性や自立性を尊重しているとは言えないでしょう。

  ⑤ 公害犯罪処罰法

    正式名称「人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律」です。「公害罪法」と略称されることもあります。法律分類としては、刑事法に属します。1970年の「公害国会」で成立しました。

    公害によって、人の生命や身体を危険にさらすことは犯罪である、という法律が生まれた意味は大変重要です。公害法には、個別の法律が定める行政処分や刑事罰の他に、このような刑事法の裏付けがあります。ただし、最高裁は公害汚染事故2件について、連続して無罪にし、事実上骨抜きになっています。実効性を持たせるには改正運動が必要です。

 

2 改正後の、大気汚染防止法と水質汚濁防止法には、環境基準も規制基準も定めていません。土壌汚染については適用除外規定のまま放置し、何もしていません。国会も政府も怠けています。

 

(1) 環境基本法違反の大気汚染防止法と水質汚濁防止法

   2013年6月17日、大気汚染防止法と水質汚濁防止法の放射性物質適用除外規定が削除になりました。(他に2法律が改正されましたが別の機会に譲ります。)

   1で述べたように、環境基準、規制基準を定め、常時監視システムを整備し、違反には行政処分や罰則を科すような法整備をする必要があります。ところが規定されたのは「常時監視」と常時監視の「報告」、それに汚染状況の報告だけです。

   公害規制は、基準を作って守らせ、違反を罰することです。環境基本法で定めることになっている環境基準も規制基準もないのですから、環境基本法違反の欠陥法です。規制基準がないので罰則もありません。

 

(2) 放射性物質について、環境基準、規制基準に相当する線量限度の数値はすでに存在します。環境基準は0.05ミリシーベルト、規制基準は1ミリシーベルトです。

 

    被爆線量限度そのものは、これまで取り入れてきた国際的な基準を公害規制の基準に移し替えるだけですから、決めるのは極めて簡単なはずです。これを勝手にゆるめるような基準を定めるのは国際基準に違反しますし、これまで国民に示してきた基準と矛盾することになります。

 ① 環境基準

   これは、具体的法規性は有しませんが、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが「望ましい基準」です。(環境基本法16条1項)。

   これに相当する基準は、原子力委員会が定めています。「発電用原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針につて」(昭和50年5月13日)で、実効線量年間50マイクロシーベルトとされています。(50マイクロシーベルトは0,05ミリシーベルト。1ミリシーベルトの20分の1です。)。馴染みのない方が多いようです。少し長めですが、以下に主要部分を引用します。

   「発電用軽水炉からの放射性物質の放出に伴う周辺公衆の被爆線量を低く定めるための指針を下記の通り定める。」「1 線量目標値 発電用軽水炉施設の通常運転時における環境への放射性物質の放出に伴う周辺公衆の受ける線量当量を低く保つための努力目標として、施設周辺の公衆の受ける線量当量についての目標値(以下「線量目標値」という。)を実効線量当量で年間50マイクロシーベルトとする。ただし、線量当量の評価においては、気体廃棄物については放射性希ガスからガンマ線による外部被爆及び放射性ヨウ素の体内摂取による内部被ばくを、又、液体廃棄物中の放射性物質については、海産物を摂取することによる内部被ばくを実効線量で評価するものとする。(中略)『線量目標値』についての解説 原子炉安全基準専門部会 線量目標値は、法的規制である『線量当量限度』などを変更するものではありません。(中略)いわゆる公害と言われる騒音その他人工的な現象による環境への放出もできるだけ少なくすることが望まれますが、人工的な放射性物質の環境への放出もできれば少ないにこしたことはありません。更に、前述のように、放射線防護上低線量被ばくについて厳しい考え方に立ってみれば線量当量は少なければ少ないほど望ましいことであり、又、現代社会においては医療を初めとして、各種の放射線を被曝する機会が多いことなどを考えれば、個々の原子力利用施設において法的規制値以下であることをもって足りるとせず低減が行えるところでは積極的に低減の努力が払われるべきであります。この低減の努力については、抽象的な考えを示すだけでなく、定量的な目標を示すことによって、その実効を一段と推進することとしたものです。」  <以上引用終了>

  注記:福島第一原発事故後の数字に慣らされてくると、現実離れした理想の数値に見えるかもしれません。しかし、この指針の数値は、これほど低い数値に抑えているのだから心配する必要はないと、自慢してきたものです。現在も原子力委員会の指針として生きています。

 

  ② 規制基準

   これは、具体的法規性を有します。事業者が「遵守すべき基準」です。これに相当する基準は、多くの人が知っているように年1ミリシーベルトです。原子炉等規制法や放射線障害防止法の定める公衆被ばく線量限度です。

   大気汚染防止法も水質汚濁防止法も、少なくとも上記基準で直ちに法律に取り入れることが可能です。規制基準を定めれば、当然違反に対する操業停止や刑事罰の規定が必要になりいます。法律の改正に難しい問題は何もありません。国が意図的になまけているだけです。

   法律による強制力が伴う規制基準を定めないと、汚染度に合わせて「安全だということにしてしまうこと」ができるということです。次の大事故が起きて100ミリシーベルトのところに人を住まわせる政策を取っても国民は法的に止める手段がありません。日本は今、そのような法制度のもとにあるということです。

  ③ 常時監視実施者

    大気汚染防止法も、水質汚濁防止法も、常時監視は都道府県知事です。(大気汚染防止法22条1項、水質汚濁防止法15条1項)。改正後適用になった放射性物質の常時監視者は、例外規定を設け国になっています。

    ここまで見てきたように、環境基準も規制基準も定めず、常時監視実施者も国ですから、実質的に公害法としては、従来の適用除外と変わらず、中身が空っぽです。国は、放射性物質を公害扱いしている「ふりをしている」だけと評価できます。

  ④ 行政命令や罰則

    大気汚染、水質汚濁、土壌汚染について、放射性物質の規制基準がありませんから、基準を守らせるための排出施設の改善命令のような行政命令も、違反に対する罰則規定もありません。次に福島第一原発事故のような事故を起こしても、汚染を罰する法律はないのです。

 

(3) 注意点:基準の数値は同じでも、原子力関連法と公害法としての規制では全く違うこと。

 

  ① 1ミリシーベルトの公衆被爆線量限度の例で示しておきます。

    *原子炉等規制法、放射線障害防止法の規制

      公衆被ばく線量限度  =年1ミリシーベルト

      違反の罰則       =なし

      基準を超えて公衆を被ばくさせること =規定なし。したがって罰則もなし。

      <福島第一原発事故の放射能汚染の例がこれにあたる。今後同様の事故を起こして環境汚染をしても、公害規制法違反にならず、罰則も科せられない。>

    *環境基本法に従って公害法で規制する場合

       環境基準、規制基準を定め、規制基準や命令違反を罰する構造となる。

      <福島第一原発事故のような放射能汚染は、犯罪として処罰される。放射能汚染の重大性から、他の公害汚染の処罰より遙かに厳しい処罰が必要なのは当然>

 

   ② 両者の違い、産業振興法と公害規制法

     原子力基本法は、その目的条項に書かれているように、原子力利用のための法律であり、国家による企業振興法の性質を持ちます。他方、環境基本法は、放射性物質を公害物質として、企業活動を制限し、人間や環境を守ろうとするものです。根本において性格を異にします。原子炉等規制法の安全基準も、原子力利用の枠内のものです。公害規制を外し、放射性物質をばらまいても罪に問わないような法制度にし、原子力産業を肥大化させてきたのです。

 

 (4) 土壌汚染については、環境基本法に違反して、公害規制の法整備を放棄しています。

 

         土壌汚染については、「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(1970・12・25)と、土壌汚染対策法(2002・5・29)があります。前者は、公害国会で成立したもので、当時は「土壌汚染防止法」と略称されていました。後者は、都市部の土壌汚染が拡大したことが契機で制定された法律です。両者とも放射性物質を適用除外にしています。(農用地土壌汚染防止法2条3項、土壌汚染対策法2条1項)。

    以上のように、福島第一原発事故による汚染だけでなく、他の全国の原発、再処理施設、その他の放射能公害発生施設からの土壌汚染を規制する法律は、何もありません。大飯原発や、泊原発、青森の再処理施設で事故を起こして農地や宅地を汚染しても、責任を問われません。

 

 (5) 原子力産業は公害産業として検証し直しが必要

    ここで、我々が直面している課題の全体像を振り返っておきたいと思います。

    放射性物質を、公害規制から全面排除してきた結果、汚染防止という基本概念を欠いたまま、「後始末対策」の見通しもなく、54基の原発を建造し、膨大な量の放射性廃棄物を生み出してしまいました。そして福島第一原発は汚染を拡大しています。

    環境基本法が改正された今、原子力産業は最悪の公害産業として、捉え直し、検証し直すことが必要です。

    老朽化していく50基の原発が次の事故を起こしたときの、汚染被害の予測・把握・対策、廃炉に伴う汚染なき後始末対策、生み出された膨大な量の放射性廃棄物の管理・処分対策、福島第一原発事故により拡大する汚染物質の拡散対策・・・改めて先の見通しのない、深刻な状況が立ちはだかっていることを再確認する必要があります。

    放射性物質は、法律上の公害原因物質と位置づけられたのですから、原発産業と、その政策は、法制度も含めて公害防止という「これまでになかった視点」で捉え直すことが必要です。又、そうさせなければなりません。

    たとえば、最悪の公害原因物質である、高レベル放射性廃棄物は、改めて、公害物質として捉え直し、地球環境を汚染させない方法を考える必要があります。現在の「特定放射性物質の最終処分にに関する法律」は、科学的根拠もない地層処分の安全性を前提にしたものであり、見直しが必要です。これまでの、政策手法は、受け入れ自治体の同意問題を中心テーマとして、政治的に決着しようとするものです。このような検討のあり方を過去にさかのぼって検証し見直す必要があります。 

    環境基本法の適用を契機に、放射能汚染の防止という総合的な法制度の整備が必要です。原発産業が生み出した巨大な課題は、場当たり的な法律で対処できるようなものではありません。

 

3 法の未整備の結果、我々はどのような状況に置かれているのか<整理中、参考までに>

   環境基本法が改正され、大気汚染防止法や水質汚濁防止法など4法の放射性物質適用除外規定も、削除になりました。しかし、公害規制法としての実質を有する法律にはなっていません。又、他の放射性物質適用除外規定は削除されていません。基本法と個別法が矛盾したまま放置されています。このような法律の未整備の中で,我々は具体的にどのような状態に置かれているのか、書き出しておきます。すべてを網羅しているわけではありません。

  ① 今後、電気事業者が、福島第一原発事故のような事故を起こして、環境を汚染まみれにし、人を被爆させても責任を負わせる法律(公害法)はない。現行法上テロ以外は、人間環境を放射能まみれにしても罪にならない。

  ② 活断層や津波、原子炉の構造的欠陥などについて、警告を無視したり軽視して運転し、事故を起こし、環境を放射能汚染しても罪に問われないので、危険な情報を、無視したり軽視する傾向になっている。(まともな準備もなく安全審査を申請するなど)。

  ③ 次の大事故が発生した後の汚染対策は何もない。

    他の原発で大事故が発生した場合、福島と同じように広範囲・大量の放射能汚染を引き起こしますが、汚染に対する対策法は何もありません。現在の「汚染対処特措法」は、福島第一原発事故対策に限定した法律なのです。次の事故のことは考えないで、起きたときは、起きたときに考えればよいという、極端な無責任体制になっています。

  ④ 公衆被ばく線量限度は1ミリシーベルトであるが、環境基本法の要請する公害の規制基準として取り入れられていない。これを超えて被爆させても罪にならない。

  ⑤ 今後新たな事故が発生し、放射能で汚染したごみを捨てても、廃棄物処理法による不法投棄にはならない。放射能で汚染していないゴミは、廃棄物処理法の適用により不法投棄になるが、放射能で汚染されると、廃棄物処理法の適用除外になるので、不法投棄にはならななくなる。

  ⑥ 放射性物質に対する公害規制法が整備されていないので、原発のコストが具体的に算定できない。実際には安く算定される。

  ⑦ 陸上の原子力施設から、海洋への放射性物質の放出を禁止し罰する法律がない。

     海洋汚染防止法は、放射性物質を適用除外にしている(52条)。またロンドン条約について、政府は、陸上施設からの海洋投棄は適用対象外という見解で一貫している。(177国会参議院環境委員会議事録)。

     原子炉等規制法の保安規定は、原子炉について濃度規制はあるが、規制違反に罰則はなく、再処理については濃度規制もない。

  ⑧ 今後あり得る、汚染事故の場合の、農産物、海産物、林産物に対する被害、鉄道や道路の遮断被害などについて、国も都道府県も、被害予測とその対策を故意に回避している。又、これらの被害に対する賠償基準も具体的に法制化されていない。

  ⑨被爆と発症との間にタイムラグがあることや、ガンなどの場合、他の原因との区別ができないため、立証困難、時効の壁などのため、加害者は責任を免れ、被害者は救済されない恐れがある。(人に被爆させたり、環境を汚染した段階で、責任を厳しく問う法律ができない限り救済されない恐れ。>

 

 4 再稼働への動きの中で関係機関へのアプローチ例文集<参考>

 

 (1) 政府、経産省、環境省、法務省、原子力委員会、原子力委員会など国の機関に対するアプローチ

    *主な国の機関のホームページには、次のような受付欄があります。他の省庁にも類似の欄があります。

    ・原力委員会  ご意見の募集・ご質問の受付   郵送・ファックス受付有

    ・原子力規制委員会  原子力委員利シーベルトに会へのご質問・ご意見

    ・法務省   法務行政に対するご意見・ご提案  ファックス受付有

 

例文① 要求形式(内閣総理大臣、環境大臣、衆参両院議長など、議員に対しても)

      放射性物質による大気汚染、水質汚濁、土壌汚染について、環境基準、規制基準を定め、排出口規制、濃度規制を行う法律を整備せよ。

      環境基準は、年50マイクロシーベルト(0.05ミリシーベルト)、規制基準は年1ミリシーベルトにせよ。(・・・を超えないようにせよ。)

例文② 要求形式 (総理大臣、環境大臣、原子力委員会、原子力規制庁など)

      環境基本法の改正により、公害原因物質である放射性物質について、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染に関する環境基準や規制基準を定めるなど、公害防止法制度を整備しなければならないことになった(環境基本法16条1項、22条1項など)。このような法制度が未整備であるにもかかわらず、公害原因物質である放射性物質を排出する原子力発電所を稼働させることは、環境基本法違反である。稼働させてはならない。

 <質問形式にも使えます。…環境基本法違反である。それでも稼働させて公害物質を生成したり、大気中や水中に放射性物質を放出できる根拠は何か・・・など)

 注:行政などとのやりとりで、聞いたこともないようなむつかしい法律用語を並べ立てて、法律が制定されていないからと言って法律違反とは言えない、などの反論や応答があったときは、環境基本法が定めることになっていることを、定めていないのは法律違反でなくて何なんだ、と自信をもって対抗していきましょう。

 

例文③ 質問形式(総理大臣、環境大臣、経産大臣、原子力委員会、原子力規制委員会など) 

     環境基本法の改正により、放射性物質は同法上の公害規制の対象となった。しかし、個別の公害規制法は、その大多数が、放射性物質を適用除外としたままであり、改正された大気汚染防止法、水質汚濁防止法には、環境基準も規制基準もない。土壌汚染に至っては、関係法律の適用除外規定を放置したままになっている。環境基本法と矛盾した法制度の下で原発再稼働が可能な根拠は何か。{要求形式…再稼働してはならない)。

例文④ 質問形式(環境大臣、原子力委員会、原子力規制委員会、など)

      以下は関係機関を課題に直面させ、責任回避を許さないためのものです。

* 〇〇原発で、3・11福島第一原発事故と同様の事故が発生した場合の、放射能で汚染したがれきの処理に関する法律はあるか。あるとすればその法律はなんという法律か。

*〇〇原発で、3・11福島第一原発事故と同様の事故が発生した場合の、放射性物質の海洋放出を禁止する法律、及び海洋放出に対する罰則を定めた法律はあるか。あるとすればその法律はなんという法律か。

*現在原子力規制委員会で、原子力発電所の新規制基準による「規制審査」(「安全審査」とも言われてきた)が行われている。規制審査は、原子炉を運転してもよいという法律上の許可なのか。許可でないとすれば、別に許可の手続きがあるのか。あるとすれば、その許可は、なんという法律のどの条文に定められているのか。規制審査が許可でなく、他に許可がないとすれば、原発再稼働について責任を担当する国の機関はないことになるが、そのように理解してよいのか。

*〇〇原発で、3・11福島第一原発事故と同様の事故が発生した場合、

 ・1年以上耕作できなくなる農地の範囲について、どのように予測しているか。

 ・廃棄しなければならなくなる<作物名>は、どの程度で、その損害はいくらと予測しているか。

 ・利用不能ないし処分を要する家畜<酪農・養豚など>は、どの程度と予測しているか。

 ・漁業の操業について制限される漁場の範囲、期間はどの程度と予測しているか。

 ・漁業の制限による損害についてどのように予測しているか。

 ・r林業に対する被害規模と損害をどのように予測しているか。

 ・1年以上居住地を離れなければならない{地域別など>人口はどの程度と予測されるか。その対策はどのように立てられているか。

 ・放射能汚染がれきの発生量はどの程度と予測されるか。その対策内容はどのようになっているか。

 ・1年以上<〇〇月以上>閉校しなければならない小中学校、高校の範囲はどのように予測しているか、その対策はどのように立てられているか。

 注① 「対策はあるか。あるとすればその文書名は何か。ないとすれば、対策は必用ないということか」などを適宜加える。

 注② 公的機関に対する質問は、課題をやり過ごそうとする官庁などに、課題に向き合わせ、責任を持たせる効果があります。基本的なこと、簡単なことほど、効果が大きいといえます。

 

(2)知事に対するアプローチ

 

例文① 要望・要求形式

      国に対して、放射性物質に対する、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染の、環境基準、規制基準、総量規制、排出口規制、濃度規制などの法整備を求め、公害規制法の整備を求めてください。

 

例文② 要望・要求形式

      環境基本法の改正により、放射性物質の適用除外規定は削除されました。国に対して、環境基本法に従い、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染などについて、環境基本法の定めに従って、放射能公害から国民(県民)を守る法整備を要求し、県民を守る法整備がない状態での再稼働には同意しないでください。<反対してください。>

 

例文③ 質問形式

 * 〇〇原発で、福島第一原発と同様の事故が発生した場合について、

  ・放射能で汚染されたがれきの処理をする法律はあると承知しているか。あるとすればどの法律か。

  ・放射能汚染した廃液を海洋に放出することを禁じた法律はあると承知しているか、あるとすればどの法律で、違反に対して行政上、刑事上いかなる責任がともなうことになっているか。

  ・〇〇鉄道、〇〇国道が放射能汚染により不通といなった場合の対策は立てているか、立てているとすればその文書名をお知らせください。

  ・予想される農産物、海産物、林産物の被害はどの程度と予測しているか

   <・・・・など、前期国の機関に対する質問などの例を参照してください。>

 

(3) 重視したい法務省に対するアプローチ 

 

例文① 要望・意見形式

     刑法に放射性物質の漏えい罪を設け、厳しく処罰できるようにしてください。

 

例文② 要望・意見形式

     「人の健康人かかる公害犯罪の処罰に関する法律」を改正して、原子力施設からの放射性物質漏えいを厳罰に処してください。地域の生活を破壊するような被害には無期懲役程度の重い責任を負わせる法律にしてください。

        

   <上記例文①②に説明文を付加する場合の例文>

    *福島第一原発事故で、<被害実態を具体的に・・・15万人の人が住処を追われた、役場機能さえ移転を余儀なくされた、母乳からセシウムが検出された、常磐線は分断されている・・・など>  危険だと指摘されてきたし、素人でもわかる幼稚な電源確保の方法の欠陥など・・・・通常なら直ちに大がかりな捜査が入り、関係者が逮捕され、刑事責任が問われるはずなのに、なぜ、責任が問われないのか、原発を特別扱いしているのか、次の原発事故が起きても同じく、誰も責任を問われないのか。 電力会社は、責任を問われないので、まともな安全対策もできていないのに、安全審査を申請し、運転しようとしている。老朽化していく原発が、次の事故を引き起こす危険性は、これまで以上に大きい。・・・このような無法状態には納得がいかない。>

  注記:これまでの、市民学習会で、多くの方が、どう常識的に考えてもおかしいというのが、上記の点です。ただ法務省や、検察庁に対して意見を述べるという発想がなく、不満だけで終わっているようです。福島第一原発事故は、その被害規模の大きさ、安全性無視の悪質さ、被害の反人道性など、検察当局が、関係者の責任をほとんど追及できていない状況は、大変不名誉なことであり、検察当局自身も自覚していることは、間違いありません。国民から、まともな声が上がれば、法の欠陥を正す必要を認め、検討に取り掛かる可能性は大です。法務省ホームページへの書き込み、文書による申し入れや質問など、アプローチしましょう。

 

(4) 国会、国会議員へのアプローチ

   国の機関に対する要望例、関係運動団体の例などを参考にしてください。

   立法機関として、あまりにも怠慢です。「国会は怠けるな」と抗議を受けても当然の情況です。

   議員さんへのアプローチは、要望などのほか、質問主意書の活用などによる協力関係を得られる議員さんを確保することも効果的だと思います。

  <加筆予定:この欄が簡単に終わっているのは軽視しているからではありません。より実践的なものにまとめる予定です。> 

 

4 再処理・高レベル放射性廃棄物などについての要望要求  

  環境基本法の改正により、これまでの政策は、放射性物質を最悪の公害原因物質として捉えなおし、これまでの政策や法制度を検証し直す必要があります。詳しくは別の機会に譲ります。

  

 

 

 

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