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「福岡ESEグルメ」のえしぇ蔵による書評サイトです。
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芝木好子 「青磁砧」

2007年05月29日 | Weblog
女流作家の中で芝木好子はかなりお気に入りです。美しく優しい文章の中に、非常に強い情熱が隠されている、そういう印象を受けます。ストーリー的にも主人公がただ男を頼ってふらふら・・・ではなくて、しっかり自分を持っていて、男以外に打ち込める何か、仕事とか趣味とかがあるというパターンが多いです。この作品の主人公は”青磁”に魅せられます。陶芸作品に執着するコレクターと、陶芸作家の間の感情のやりとりがあるわけですが、女性はこういう”自分の魅せられた物”に詳しい男性、その道を究めた男性に魅力を感じるみたいですね。(イングリッド・バーグマンは「無防備都市」を見て監督のロベルト・ロッセリーニが好きになってイタリアに行っちゃいましたからね。)この作品は第47回女流文学賞に輝いた名作です。ストーリーもさることながら、非常に情緒ある文章も是非楽しんで頂きたいです。こういう細やかな優しい文章は女流作家でも本当に実力派でないと書けないと思います。実に素晴らしいです。何度でも読み返して楽しんで下さい。できれば読む前に青磁を少し見ておくとイメージがわきやすいでしょうね。この作品をきっかけに陶芸が好きになるかも?