のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

[映画]るろうに剣心/2012年日本

2014年08月06日 22時55分01秒 | 映画鑑賞
■るろうに剣心/2012年公開

■監督:大友啓史
■脚本:藤井清美、大友啓史
■原作:和月伸宏『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』
■出演:
佐藤健、武井咲、吉川晃司、蒼井優、青木崇高、綾野剛
須藤元気、田中偉登、奥田瑛二、江口洋介、香川照之

■感想 ☆☆☆☆
中学生の頃、友人に借りて読んでいた漫画「るろうに剣心」が実写化。
たいていの漫画作品の実写化には「えー!?なんで?なんで実写化?」と眉をひそめるのですが、この作品に対してはそこまでのマイナス感情はなく、平かな気持ちで作品を見ることができました。実写版でここまでキャストに違和感がないってある意味すごいのでは?と思うのです。

アクションシーンの秀逸さについての評価を色々と聞いていましたが、そして、もちろん、私もアクションシーンのスピーディな動き、リズミカルな店舗すら感じる美しい動き、そしてその迫力には目を見張ったのですが、それでもこの作品で最も胸を打ったのは、剣心と恵が抱える痛み、哀しみでした。
国のため、自分の信じる人たちのために汚れ役をかって出て、人斬りをしていた剣心。すべてはよりよい明日のため、と信じて行っていたことなのに、自分が斬った人間にも愛する人がいて、愛してくれる人がいることに気付いてしまう。亡くなった彼のために嘆き続ける奥さんの姿を見て、自分がしたことは「国のため」ではあったけれど、結局はただの人殺しだったと気付いてしまう。信じて行った人斬り稼業を「間違っていた」と思って、自分のその行動を「人殺し」だと認識してしまった上で生き続ける彼のその後を思うと、胸がつぶれそうでした。
そして、生きていくためには、心を殺すしかなかった恵の哀しみ。自分が作った大麻で多くの人が心と身体を狂わせていく。その現実を知りながら、それでも自分が生きていくためには、大麻を作るしかなかったし、目の前で壊れていく人たちを認識するわけにはいかなかった。人を人と思ってしまったら生きていけない。そういった中で生きてきた壮絶さを蒼井さんはセリフではなく、表情で伝えてくれていました。
日本は、明治、大正、昭和と、そのときどきでこういった逡巡を抱える人たちをたくさん生み、その人たちの逡巡や後悔、哀しみに支えられて、今の(束の間かもしれないけれど)平和を手に入れたのだということを改めて突き付けられた映画でした。

なんだろうな。タイミングが良かったのか、悪かったのか。
「自分の信じる未来のため、国のためならば、人殺しなんて悪いと思わない。そういう人たちもいる。
 そもそも人殺しが悪いことだなんて教えられていない人たちもいる。」
という意見を聞いて、大きな衝撃を受けたその日に見ただけに、より一層、胸を打ったのかもしれません。

大義のためだからこそ、時間をかけて世直しなどしていくことはできない。力で世の中を制圧し、上に行き、この国を変えていくしかない。そのためには力が必要なのだ、と信じる齋藤一たち。
大麻を売りさばき、私服をこやそうとしていた武田観柳と異なり、彼らは国のため、みんなのために尽力しています。目指すところは剣心と同じなのに相容れられない。どちらが間違っているわけでもないからこそ、どちらも折り合うことができない。同じ思いを抱えているはずなのに、共に未来を目指せないこの構図が私にはとても悲しく思えました。

それにしても、香川さん!はまり役過ぎました。香川さんがいつもすごく楽しそうに悪役を演じてくれるので、そして「演じる」というよりは乗り移っているかのような怪演ぶりなので、最近はどの作品で香川さんを見ても悪い人にしか見えません・・・。吉川さん演じるニセモノの人斬り抜刀斎もめちゃ怖かった。すんごい迫力でした。そして、セリフがほとんどないだけに、そして彼の殺気がすごいだけに、最後に放ったセリフの重みもすごかった。
「人斬りは所詮、死ぬまで人斬り。他の者には決してなれない。
 おまえがいつまでるろうになどと云っていられるか、地獄の淵で見ていてやるよ。」
そう。人を殺してしまったことは取り返しがつかない。どれだけ大義があろうと、おそらく自分の行為を「人殺し」だと認識してしまった剣心は今後もずっと苦しみながら、後悔し続けながら生きていくんだろうと思うのです。
だからこそ、人を活かす活心流という流派の跡継ぎ娘、薫について剣心が述べた言葉「(剣で人を活かすなんて)自分で手を汚したことのない甘っちょろい意見かもしれない。それでも私は、そちらを選びたい。」は、私にとっては大きな救いでした。

そうそう!武井咲ちゃん。ヒロインなのに、ちょっぴり影が薄かったけれど、すっごくかわいかった。
私、今まで武井さんのかわいらしさをきちんと認識できずにいたのですが、この作品を見て、「武井さんってこんなにかわいいんだ・・・。」とようやく認識できました。演技をするには少し不利な特徴ある声ですが、その声も含めて、すっごくかわいかった!守ってあげたい!守ってあげなきゃ!という気持ちになりました。

でもって、綾野さん。ずっと仮面をかぶって、顔を出し惜しみしていた綾野さんですが、顔を出してからの綾野さんの動きはすごかったなー。なんであんなに細かく早く体を動かせるんだろう。と感嘆しながら見ていました。すんごい迫力。蒼井さんとの場面、もう少しじっくり見たかったな。憂いのある役が似合うふたりなので、彼らの抱えてきた苦しみ、共有してきた過去をもっと彼らの言葉で聞きたかったです。

最後に蒼井さん。私は彼女の演技が大好きなんだな、ということをしみじみと実感しました。あんなに童顔なのに、蓮っ葉な役を演じてもまったく違和感がない。普段は色気とは無縁のナチュラルなイメージなのに、ふとした瞬間ににおい立つような色気を醸し出してくれる気がします。彼女の言葉ではなく、表情と目と間で想いを伝える演技が大好きです。