のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

熊の場所/舞城王太郎

2009年03月04日 22時48分00秒 | 読書歴
14.熊の場所/舞城王太郎
■ストーリ
 「熊の場所」「バット男」「ピコーン!」収録。
 僕がまー君の猫殺しに気がついたのは僕とまー君がふたりとも
 11歳の時、つまり同じ保育所に通っていた僕たちが一緒に
 西暁小学校に上がり、同じ教室で勉強し始めて5年目の頃だった。

■感想 ☆☆*
 舞城さんの作品にどっぷりはまっているが、はまっている割には、
 「あー!もう!大好き!!」という感じではない。
 「これ、面白いの?どうなの?私、この世界についていっているの?
  で、結局、どういう物語なの?」
 と舞城作品に翻弄され続けている。舞城さんの作品は文章に勢いと
 リズムがあって読みやすい。ただ、その文章自体に癖があり、
 なおかつ、世界観がぶっとんでいて、読みにくい。実にアンバランス。
 もうだめだ、この世界にはついていけそうにもない、と思っていると、
 突然、思いっきり共感できる文章が飛び込んでくる。
 自分の心に思いっきり訴えかけてくる文章に出会えてしまう。
 そして、その文章の持つ力に圧倒され、そのポジティブなメッセージに
 嬉しくなる。もう少し読み続けてみようと思い、また作品世界に翻弄される。
 そういった循環を繰り返している。

 そういった意味で「熊の場所」と「バット男」はメッセージ性に
 あふれていて、今までの作品よりも読みやすい世界観だ。
 ただ、舞城作品特有のグロテスクさは健在で、私は今回、その描写に
 どうしても慣れることができなかった。特に「熊の場所」に出てくる
 猫殺しのまーくんの行動には嫌悪感がぬぐえなかった。
 作者はその描写を決して肯定的に描いてはいないが、
 そこから舞城さんの作り出す世界に入り込めないまま読了。

 「バット男」では、弱者に対する振る舞いや心を病んでしまった
 人たちが分かりあえないまますれ違って行く様子がリアルなだけに
 痛々しく、どうあってもハッピーエンドが待っていないであろう
 結末にたどりつくのが若干、苦痛だった。
 「読んで楽しい」だけが読書ではないけれど、ついつい物語に
 ハッピーエンドを求めてしまう私には向いていない物語だったのだと
 思う。弱者に痛みやツケがどんどんたまっていく状況は現状を
 よく表わしていて、だからこそ、現代のそこかしこにある隙間に
 落ちてしまわないためには、何よりも自分の意志、決意が大切なのだ
 という作者のメッセージには共感できた。

 というわけで、最も楽しめたのは下ネタ満載の「ピコーン!」。
 やや下品で騒々しい作品だけれど、そこに流れる恋人への想いや
 愛情の普遍性、そして愛情が人に与える力や影響の大きさが
 とてもいとおしい作品。そして、どんなに愛していても、
 人間の愛情に「永遠」は存在しないし、愛情を失ってしまっても
 また新しい一日を始めることができてしまう、新たな毎日を
 楽しめてしまう人間のたくましさがいとおしい作品でもあった。
 語られる言葉や設定はまったく異なるけれど、読み終わった後に、
 吉本ばななさんの「ハチ公の最後の恋人」を思い出しました。

結果的に、年齢詐称

2009年03月04日 22時23分39秒 | 日常生活
皆さんからご指摘を受けて
おのれの年齢がまだ31ではなかったことを思い出したワタクシ。

そーなんですよ!
すっかり忘れていましたが、ワタクシ、まだ30でした。
3年前から数え年で生き始めていたために
おのれの誕生日がまだまだ先で
現時点ではまだ30だということをすっかり失念しておりました。

そーいえば、去年の誕生日。
めでたく誕生日を迎えて30になった際、妹からは
「え?!まだ30じゃなかったんだっけ?
 もうずっと30って言ってなかった?
 なんか今更っていう感じやねぇ。」
と言われ、母親からも
「今日から31?え?今日からが30?!」
と驚かれたっけ。
数え年制度のおかげで、家族も自分も巻き込んで大混乱。

・・・つまり、周囲の方々のほうが
きちんとワタクシの年齢を正しく把握してくださっていたわけで
大変ありがたい限りです。

ちなみに、皆様からの指摘を受けて
自分の年齢の間違いに気付いたワタクシ。
早速、飛行機の予約をしてくださった会社の先輩に
自分の年齢が間違っていたこと
本当の年齢は30だということを大急ぎでお伝えしたところ
周囲にいた先輩方に
「そんな1歳の間違いを必死になって訂正しちゃって・・・。」
「のりぞうちゃんもオンナなのねぇ。」
と感心されました。

・・・いやいやいや。
感心するところではないはず。
ワタクシが必死なのは、
飛行機乗るには正しい情報が必要だと思えばこそ、ですからーっ!!

花の命は結構長い

2009年03月04日 21時49分28秒 | 日常生活
起業して以来、
「うん」「うんや」以外の日本語レパートリー増加が目覚ましい父上。
本日も
「今日はミーティングで遅くなる」
と母上に連絡して出掛けていった父上。

・・・ミーティング?
父上ひとりの会社でミーティング?
ミーティングって会議でしょーが。
ひとりきりのカイシャで、誰と会議するってのさ?!

と、思わず見当違いに母上に詰め寄るワタクシ。

「不思議やろ?私も同じこと聞いたわよ。
 でも、ミーティングなんだって。
 業界のオトモダチと飲みに行って情報交換するんだって。
 それが「ミーティング」なんだって。
 本当に、最近はすっかり日本語がうまくなって。」

退職以来、父上との会話は飛躍的に増加しています。
倍増どころか三倍、四倍ぐらいの勢いで増加中。
言葉を覚えたてのちびっことの会話が楽しくてたまらないように
父上との会話も面白くてたまりません。
・・・こんなに増えているのに、
依然として、会社の上司との会話のほうが多いわけですが。

そんなこんなで、緊急ミーティングに参加していた父上。
23時過ぎに「ミーティング相手を家まで送るから、車で迎えにこい」
と電話をしてきました。
すっかり熟睡モードの母上はそのままにして、
素直にスナックへ迎えに行くワタクシ。
スナックのドアを開けた途端、歓声で迎えられました。
「いぇーい!エッミちゃーん♪♪」

いえ。エミちゃんではありません。
と、アルカイックスマイルを浮かべて中へ入って行ったところ
あからさまにがっかりされました。

「・・・・なんだ。ノリちゃんやん。」

・・・・スミマセンね。
ノリちゃんですヨ。
50ウン歳のエミちゃんに30歳ノリちゃん完敗。
しかも、がっかりした相手は
エミちゃんと同年代の殿方ではなく、
ノリちゃんと同年代の殿方ですヨ。

・・・・ちくしょうめい。

「打倒、エミちゃん。」
今年のワタクシのスローガンです。

桜子は帰ったか/麗羅

2009年03月04日 21時48分29秒 | 読書歴
13.桜子は帰ったか/麗羅
■ストーリ
 ソ連軍の侵攻で混乱を極める満州。恩人・安東真琴の遺言を果たすべく、
 朝鮮人青年クレは,安東の妻・桜子とともに日本を目指した。
 36年後、安東夫婦の遺児・久能真人の前に現れたクレ。
 「桜子さんは帰ってきましたか?」
 両親は満州で死んだと信じていた真人は、クレの問いに愕然とする。
 そして折から来日していた中国残留孤児のひとりが毒殺され、
 クレはその重要参考人として手配されることになる。

■感想 ☆☆
 展開は非常にオーソドックス。ひねりが全くないため、早い段階で
 結末までの道筋が見えてしまった。推理小説としては、あっけない
 終わり方のような気がする。
 ただ、面白くないのか、と言うと、そういうわけではなくて、
 最初から「人間ドラマ」として読み始めていれば、
 そこそこ楽しめたのではないかと思う。
 だが、シンプルなつくりなので、ヒロインや主人公の苦悩が
 重厚には迫ってこない。どことなく2時間ドラマの匂いがする作品。
 と思っていたら、土曜ワイド劇場でドラマ化されていた模様。
 第1回サントリーミステリー大賞の読者部門で第一位だったようです。
 主演は名取裕子さん。うん。雰囲気ぴったりです。
 確実にドラマのほうが面白いのではないかと確信しています。
 (見てないのに。)

舞田ひとみ11歳、ダンス時々探偵/歌野昌午

2009年03月04日 21時48分04秒 | 読書歴
12.舞田ひとみ11歳、ダンス時々探偵/歌野昌午
■ストーリ
 舞田歳三は浜倉中央署の刑事。仕事帰りに兄・理一の家によって、
 小学五年生になる姪のひとみの相手をし、ビールを飲むのを楽しみに
 している。難事件の捜査の合間を縫ってひとみをかわいがる歳三だが、
 彼女のふとした言動が事件解決のヒントになることも多いのだ。

■感想 ☆*
 ありふれた推理小説。
 タイトルになっているひとみちゃんは、個性的でこまっしゃくれていて、
 かわいらしいけれど、タイトルを飾るほどのインパクトはない。
 あくまでも脇役のひとり。ダンス時々探偵、とあるが、彼女が探偵を
 するわけでもない。ただ、彼女の無防備な言動が探偵に解決に導くヒントを
 与えてくれる。そういった存在であり、彼女自身は事件に対する
 興味もないし、事件の結末も見えていない。
 彼女がもう少し活躍するのでは、と期待しながら読んでいたため、
 読み終わった後に少し拍子抜けしてしまいました。
 歌野作品とはどうも相性があまりよろしくないのです。

オテルモル/栗田有起

2009年03月04日 21時47分15秒 | 読書歴
11.オテルモル/栗田有起
■ストーリ
 「悪夢は悪魔、どうかよい夢に恵まれますように」
 チェックインは日没後、チェックアウトは日の出。
 最高の眠りを提供するホテル、オテル・ド・モル・ドルモン・ビアン。
 毎夜、オテルモルには眠りを求めて人が集う。しあわせな眠りを
 提供する不思議なホテル。そのホテルのフロントに職を得た
 「誘眠顔」の希里。オテルモルは希里の閉鎖された家族関係にも
 変化をもたらす。

■感想 ☆☆☆☆
 読んでいるうちに、どっぷりとその世界に入り込んでしまう物語と、
 客観的に物語の筋を楽しめる物語がある。この作品は、私にとって
 前者でもあり、後者でもあった。
 文章が映像となって入り込んでくるような感覚。
 まるで、経験したことがあるかのように、具体的な部屋の様子や
 ほの暗さ、静かな空気が細かく伝わってくる。
 その心地よさがすぐそこまで迫ってきているのに、
 実際には宿泊できないと分かっているが故のもどかしさ。
 このホテルに泊まりたい。この人たちと同じように上質の睡眠を
 心行くまで楽しみたい。読みながら、何度も本気でそう思った。
 そう思わせてくれるオテルモルの舞台設定はまるでファンタジーのようだ。
 しかし、そのホテルのフロントに採用されたヒロイン、希里を
 取り巻く環境はファンタジーとは無縁で、とてもシビアだ。
 薬物中毒の双子の妹、入院している妹の代わりに送る妹の夫や娘との
 同居生活、かつての自分の恋人であり、現在は妹の夫、という存在。
 シビアな現実を淡々と受け入れ、過去にも自分の痛みにも執着せず、
 自分のこれからについて考えるヒロイン。

 同じストーリ内で語られているが全くテイストの異なるふたつの世界。
 そのふたつの世界が見事にオテルモルで溶け合う。希里と季里の双子の
 妹にオテルモルが授けてくれる上質の睡眠は、ふたりに穏やかで
 新しい一日をも与えてくれる。オテルモルで一晩を過ごしたふたりが
 翌朝に抱く幸福感がすがすがしい。

 結局のところ、幸せになるために必要なものはごくごくシンプルで、
 本来ならば手に入れるのが難しいものではないのかもしれない。
 ただ、忙しい現代では、上質な睡眠を手に入れるのが難しいように、
 ごくごくシンプルなものこそ、手に入れるのに、何かちょっとした
 仕掛けが必要となってくるのかもしれない、と思った。
 現実とファンタジーの溶け合い方が優しくて暖かくて、
 少しへんてこで、とてもユーモラス。これこそ栗田作品の空気だな、
 と思わせてくれる作品だった。