14.熊の場所/舞城王太郎
■ストーリ
「熊の場所」「バット男」「ピコーン!」収録。
僕がまー君の猫殺しに気がついたのは僕とまー君がふたりとも
11歳の時、つまり同じ保育所に通っていた僕たちが一緒に
西暁小学校に上がり、同じ教室で勉強し始めて5年目の頃だった。
■感想 ☆☆*
舞城さんの作品にどっぷりはまっているが、はまっている割には、
「あー!もう!大好き!!」という感じではない。
「これ、面白いの?どうなの?私、この世界についていっているの?
で、結局、どういう物語なの?」
と舞城作品に翻弄され続けている。舞城さんの作品は文章に勢いと
リズムがあって読みやすい。ただ、その文章自体に癖があり、
なおかつ、世界観がぶっとんでいて、読みにくい。実にアンバランス。
もうだめだ、この世界にはついていけそうにもない、と思っていると、
突然、思いっきり共感できる文章が飛び込んでくる。
自分の心に思いっきり訴えかけてくる文章に出会えてしまう。
そして、その文章の持つ力に圧倒され、そのポジティブなメッセージに
嬉しくなる。もう少し読み続けてみようと思い、また作品世界に翻弄される。
そういった循環を繰り返している。
そういった意味で「熊の場所」と「バット男」はメッセージ性に
あふれていて、今までの作品よりも読みやすい世界観だ。
ただ、舞城作品特有のグロテスクさは健在で、私は今回、その描写に
どうしても慣れることができなかった。特に「熊の場所」に出てくる
猫殺しのまーくんの行動には嫌悪感がぬぐえなかった。
作者はその描写を決して肯定的に描いてはいないが、
そこから舞城さんの作り出す世界に入り込めないまま読了。
「バット男」では、弱者に対する振る舞いや心を病んでしまった
人たちが分かりあえないまますれ違って行く様子がリアルなだけに
痛々しく、どうあってもハッピーエンドが待っていないであろう
結末にたどりつくのが若干、苦痛だった。
「読んで楽しい」だけが読書ではないけれど、ついつい物語に
ハッピーエンドを求めてしまう私には向いていない物語だったのだと
思う。弱者に痛みやツケがどんどんたまっていく状況は現状を
よく表わしていて、だからこそ、現代のそこかしこにある隙間に
落ちてしまわないためには、何よりも自分の意志、決意が大切なのだ
という作者のメッセージには共感できた。
というわけで、最も楽しめたのは下ネタ満載の「ピコーン!」。
やや下品で騒々しい作品だけれど、そこに流れる恋人への想いや
愛情の普遍性、そして愛情が人に与える力や影響の大きさが
とてもいとおしい作品。そして、どんなに愛していても、
人間の愛情に「永遠」は存在しないし、愛情を失ってしまっても
また新しい一日を始めることができてしまう、新たな毎日を
楽しめてしまう人間のたくましさがいとおしい作品でもあった。
語られる言葉や設定はまったく異なるけれど、読み終わった後に、
吉本ばななさんの「ハチ公の最後の恋人」を思い出しました。
■ストーリ
「熊の場所」「バット男」「ピコーン!」収録。
僕がまー君の猫殺しに気がついたのは僕とまー君がふたりとも
11歳の時、つまり同じ保育所に通っていた僕たちが一緒に
西暁小学校に上がり、同じ教室で勉強し始めて5年目の頃だった。
■感想 ☆☆*
舞城さんの作品にどっぷりはまっているが、はまっている割には、
「あー!もう!大好き!!」という感じではない。
「これ、面白いの?どうなの?私、この世界についていっているの?
で、結局、どういう物語なの?」
と舞城作品に翻弄され続けている。舞城さんの作品は文章に勢いと
リズムがあって読みやすい。ただ、その文章自体に癖があり、
なおかつ、世界観がぶっとんでいて、読みにくい。実にアンバランス。
もうだめだ、この世界にはついていけそうにもない、と思っていると、
突然、思いっきり共感できる文章が飛び込んでくる。
自分の心に思いっきり訴えかけてくる文章に出会えてしまう。
そして、その文章の持つ力に圧倒され、そのポジティブなメッセージに
嬉しくなる。もう少し読み続けてみようと思い、また作品世界に翻弄される。
そういった循環を繰り返している。
そういった意味で「熊の場所」と「バット男」はメッセージ性に
あふれていて、今までの作品よりも読みやすい世界観だ。
ただ、舞城作品特有のグロテスクさは健在で、私は今回、その描写に
どうしても慣れることができなかった。特に「熊の場所」に出てくる
猫殺しのまーくんの行動には嫌悪感がぬぐえなかった。
作者はその描写を決して肯定的に描いてはいないが、
そこから舞城さんの作り出す世界に入り込めないまま読了。
「バット男」では、弱者に対する振る舞いや心を病んでしまった
人たちが分かりあえないまますれ違って行く様子がリアルなだけに
痛々しく、どうあってもハッピーエンドが待っていないであろう
結末にたどりつくのが若干、苦痛だった。
「読んで楽しい」だけが読書ではないけれど、ついつい物語に
ハッピーエンドを求めてしまう私には向いていない物語だったのだと
思う。弱者に痛みやツケがどんどんたまっていく状況は現状を
よく表わしていて、だからこそ、現代のそこかしこにある隙間に
落ちてしまわないためには、何よりも自分の意志、決意が大切なのだ
という作者のメッセージには共感できた。
というわけで、最も楽しめたのは下ネタ満載の「ピコーン!」。
やや下品で騒々しい作品だけれど、そこに流れる恋人への想いや
愛情の普遍性、そして愛情が人に与える力や影響の大きさが
とてもいとおしい作品。そして、どんなに愛していても、
人間の愛情に「永遠」は存在しないし、愛情を失ってしまっても
また新しい一日を始めることができてしまう、新たな毎日を
楽しめてしまう人間のたくましさがいとおしい作品でもあった。
語られる言葉や設定はまったく異なるけれど、読み終わった後に、
吉本ばななさんの「ハチ公の最後の恋人」を思い出しました。