コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

大統領が明らかにする

2009-05-09 | Weblog
「明日、バグボ大統領が明らかにする」と、大見出しで出たのが昨日。そして今日の朝刊には、「今夕、バグボ大統領が明らかにする」と、大見出しが出ている。だから、今晩(4月30日)はテレビを見なければならない。バグボ大統領が、テレビに登場して、自ら国民に説明するというのだ。

一昨日(4月28日)、ニューヨークの国連で、コートジボワール情勢についての安全保障理事会の討議が開かれた。その場で、ジェジェ国連大使が、次のように述べた。
「大統領選挙の日程について、バグボ大統領が近々明らかにします。選挙の日程表について、すでに大統領に送付されています。早ければ、10月11日、それから12月6日までの間の期間に選挙を行うことが、検討されています。」

そうか、選挙日程を公布するための大統領令の素案は、バグボ大統領の机の上にあるのだ。そして、いよいよバグボ大統領が、新しい選挙日程を宣言するのか。期待感が高まっている。それで今晩午後8時からの、国営放送の番組というわけだ。私もテレビの前に座った。

2人の司会者が、真中に座ったバグボ大統領に質問をする。
――大統領、現時点でのお気持ちはいかがですか。
「2002年9月に危機が始まって以来、ようやくトンネルの出口が見えてきました。それに、今年のうちに選挙を行うという見通しです。だから、私の気持ちは平静です。誰もが皆、地元ではもう選挙運動を始めているようです。皆、知っているわけですよ。2009年中に、大統領選挙が行われるということを。」

やはり、大統領選挙の日程の話だ。それからバグボ大統領は、選挙管理委員会や首相府とともに自分も一生懸命選挙のために取り組んで来たというような話、身分認定作業が進んだけれども、まだ7割程度なので、完全ではないというような話、そういう話が延々と続く。大統領は、なかなか日程の核心に触れない。ついに司会者は、より率直に質問することにしたようだ。

――大統領、2009年中に大統領選挙が行われる見通し、というのは分かります。ではその日にちはいつなのですか。
「選挙日程は、大統領令で公布されることになっており、つまり私が署名するわけです。すでにソロ首相や選挙管理委員会と、日程をどうするかについて話し合っていますが、もう少し時間が要ります。身分認定作業が終わっていないからです。選挙管理委員会のマンベ委員長が、今から6週間以内に、状況を良く検討したうえで決めるでしょう。10月かもしれないし、11月かもしれない。とにかく年内です。」

なんだ、バグボ大統領は、今日選挙日程を発表するということではなさそうだ。大統領の発言は、相変わらず、見通しというところに留まっている。司会者も、すこしがっかりした様子ながら、けっこう執拗に大統領に食い下がる。

――どうして、日程を決めるのに時間がかかるというのですか。
「それは、何もかもが、がたがたになっているからです。危機が起こらなければ、それは憲法というものがあるのですから、大統領就任後5年目の10月に大統領選挙を行う、そう決まっているわけです。でも、紛争が起こって、憲法の規定(38条)に従って大統領はその職に留まりながらも、選挙については一から、つまり身分認定から始めなければならなくなった。選挙をやっても、大失敗の選挙にしてしまっては、危機が続いてしまう。だから、慎重になるのです。」

バグボ大統領は、滔々と説き続ける。
「日程を決めるなんてのは、格好だけなら簡単な話だ。2005年に、私は大統領令に署名して、その年の10月に選挙を行うと公布したけれど、国内が戦争になっていて選挙が出来なかったのです。昨年(2008年)には、11月30日に選挙を行うとの大統領令を出しましたよ。それも駄目になった。こんどこそ、3度目の大統領令こそ、ほんとうに選挙が実施できるものでなければならない。だから、慎重になるのですが、大統領令は出します。そうですね、5月か6月中には、大統領令を出します。」

――もし、一番スムーズに進むとして、いつになるのでしょうか。
「私は、大統領ですからね、予測をすることが仕事ではないのです。私の役割は、仕事をする人々を励まして、こんどこそ確実に選挙が出来る日程ができたと分かれば、大統領令に署名をするということです。お客さんの言ったとおりのことを文書にして、署名するという、公証人の仕事とは違うのです。私の責任は重大だ。首相と、選挙管理委員長と、十分に話をしてから、必ず大丈夫な日程を発表します。5月か6月には。」

番組は、1時間半に及び、話題は危機脱出の様々な側面に及んだ。「大統領が明らかにする」といって、大統領選挙については、何が明らかになったのだろう。まだ明らかにできない、ということが明らかになったということのようである。翌日の新聞には、もちろん「バグボ大統領が明らかにした」とは書いていない。まったく違う見出しが出ていて、あれだけ期待を煽ったのをすっかり忘れたかのようだ。

とはいえ、6月までには大統領令を出すということだから、今年中に選挙を実施するということは、十分ありうるということになる。その点には希望を持たせる、バグボ大統領のテレビインタビューであった。

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1 コメント

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大統領選挙 (afofraw)
2009-05-12 07:31:52
貴重な情報ありがとうございます。
去年(2008年)5月にアビジャンに行った時、現地の人との間で選挙の話題がよく出ていて、関心の高さを実感しました。選挙を機に国が“変わる”“変わらない”と見方は人それぞれ。
その後11月になっても選挙の情報が全然流れて来なかったので、一体どうなったのだろうと思っていました。
選挙すら簡単には実現しない、という国の状況が伝わってきます。
希望を持ちながら、私も選挙が実施されるのを待つことにします。
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