今を生きるためのBlog

東京在住、現在28歳のBlog。仕事で関係する中国、米国公認会計士の話題をはじめ、日々の思いを綴っています。

中国の経済統計の信憑性

2005年08月18日 | 中国
中国のGDPがかさ上げされているという事実は最近随分と報道されている。今年上半期のGDPを国家統計局(中央政府)は前年同期比9.5%増の6兆7422億元と発表した。しかし、各地方政府が出すGDPを単純に合計すると8兆3979億元。中央政府が発表したGDPより25%高い水準になる。地方のGDPで中央政府が出した9.5%増という成長率を上回ったのは雲南省と吉林省の2省だけというから驚きだ。

地方政府のトップにとって、自分の実績を評価してもらうためにも、少しでも経済成長率を高く出したいという思惑がある。それがこの数字の背景にある。中央政府もその点を認識しており、独自ルートでGDPを算出している。

地方政府だけでなく、中央政府の発表値も怪しい。毎年最新の統計年鑑でチェックしておかないと、いつの間にかGDP成長率が変わっていることがある。

中央政府の発表に更に疑惑を持つことが最近あった。それは、受け入れ投資額も操作していることが分かったからだ。商務部(中央政府)は2005年上半期の投資受入額(実行ベース)を前年同期比3.2%減の285億6,000万ドルと発表した。しかし、昨年発表した2004年上半期の金額は338億8,300万ドル。単純に数字だけ比べると、16%減少していることになる。政府は公式に発表していないが、恐らく昨年の数字をかさ下げしたのだろう。そうでないと3.2%減になった根拠がつかめない。なぜかさ下げしたか?理由は簡単。中国への投資が急減しているという印象を対外的に出したくないため。体外的に出すと共産党政権に危機をもたらすことになる。政府としてはこういったリスクを出来るだけ排除したいと苦慮していることが分かる。

中国企業の海外進出

2005年07月28日 | 中国
中国政府は中国企業による「走出去」を奨励している。「走出去」とは海外進出をと指す中国語である。

ここ数年中国企業が日本企業を買収する事例が出てきた。一例を挙げると、上海電気集団によるアキヤマ印刷、池貝の買収。池貝は工作機械メーカーであり、1889年の操業で日本で初めて旋盤を製造した企業として知られる。2001年に民事再生法の適用を申請していた。上海電気集団はこの企業を買収し、翌年から黒字化してしまった。まさに中国企業が救世主となったわけだ。

中国企業が海外進出を求める理由は幾つかある。1つは上の例にあるように技術の獲得。買収するのが外資の技術を得る上で最も手っ取り早い。2つは資源の獲得。中国は世界で第2位のエネルギー消費国。中国の買いあさりで石油が高騰していることはよく知られている。中国は既に石油の純輸入国となっており、海外での権益確保を急いでいる。
資源獲得については、中国海洋石油による米ユノカル買収の話がまだもめているようだ。シェブロンとの争いがどう落ち着くのか、必ずしも経済的な話でなく政治が絡んでいるので注目される。

人民元切り上げは中国の対外進出を促すきっかけにもなる。考えてみれば、日本がASEAN進出を始めたのはプラザ合意により円高になったのが1つの契機となった。結果から見れば日本の海外進出は日本企業の競争力を強めることになった。一部の中国企業は台頭してきたが、世界水準から見ればまだまだ脆弱。中国企業の財務諸表は信頼性に欠けることは未だに言われている。今回の2%ほどの切り上げで中国企業の対外投資が加速するとは思えないが、ただ今後の海外進出が上手く進めば、日本と同じように企業競争力を高めることになるのではないか。

人民元、2.1%切り上げ!

2005年07月22日 | 中国
突然のニュースだった。21日夜8時、中国人民銀行(中央銀行)は人民元レートの制度改革に関する声明を発表した。3月に温家宝首相がコメントしていたまさに「意表を突く形で」とはこのことだ。なぜ意表かと言うと、7月は英国同時テロが起きてサミットでも人民元切り上げの関心が薄れ、圧力がやや弱まっていたからだ。

発表によると、新たな人民元の対ドルレートを1ドル=8.11元とする。従来の8.28元から2.1%切り上げることになる。そしてこれを中央値として上下0.3%の範囲内で変動させる。変動幅0.3%は以前と同じ内容。それでも中国当局が介入して事実上固定相場制となっていた。今後は通貨バスケットを参考にするようだが、相場がどう動くのかが注目される。

なぜ今だったのか?1つは、20日に4~6月のGDP成長率が発表され、それが9.5%増と好調だったこと。もう1つは、9月に胡錦濤国家主席が訪米する前に中国が自主的に為替制度を変革したという姿勢を取りたかったことがあるだろう。

とはいえ、2.1%は従来の予測よりも低い。日系企業に与える影響は少なく、経済的には軽微と言えよう。ただ、中国が今回の切り上げに踏み切った政治的な意義は大きい。このままでは、今年秋にも米国で為替操縦国としてのレッテルを貼られるところだったのでひとまず大きな圧力を回避出来るだろう。欧米もひとまず今回の措置が歓迎しているようだ。

気になるのが為替相場への影響。同じアジア通貨ということもあり、「人民元高=円高」という認識が市場では定着している。現に21日は、1ドル=112円半ばから一気に110円前半に円高に振れた。ただこの流れは長続きしないだろう。そもそもに円ドルレートは、日米の貿易収支や金利差をベースに動くものであり、今は米国の利上げが継続している。一時的に円高になっても円安基調に変わりはないだろう。

講演するということ

2005年07月18日 | 中国
実は最近、外部で講演をするようになった。先日は某大学で初講演を行い、今月末には某企業のセミナーで60名ほどを相手に話しをすることになった。若干28歳の青年が中国ビジネスについて人前で意見を言うのはおこがましいことだが、うちの会社の特性上どんどん人前で話せ、外に出て行けということになっている。

30分なり1時間なり話をするのは何とかなる。自分の話は万全な準備さえすれば出来てしまうものだから。昔から人見知りするタイプで、人前で目立つのは好きじゃなかったが、この辺は割り切っている。つまり、自分にはプレゼン力がないこと、人前で上がることは仕方ないものとして、そこは十分な資料を用意して賄うことにしている。

何が嫌だかって、それは質疑応答。聞くのはほとんどが中国ビジネス関係者(当たり前だが)。彼らのほうが実際のビジネスに携わっているだけあって質問が実務的で意味が分からなかったりする。外部の中国セミナーに参加することも多いが、講演者の質疑応答での上手い対応を見ると本当に自分はまだまだ甘いなと実感する。もちろん彼らは知識も合わせもっているから出来ることだが。

自分の場合、大卒で調査に関係する仕事をすぐやってしまったから、民間でのビジネス経験がない。その上、企業のビジネス相談に下手に乗ったりするものだから、頭だけは何となく分かったつもりでいる。中国各地の経済状況はこんなんですよ、労務管理はこういった点に気をつけると良いですよとか。いざ、自分が民間企業の中国子会社の総経理として赴任させられたら何も出来ないのではないかとか考えてしまう。

ビジネス経験がなく、経営の研究ばかりする教授って世の中に沢山いると思うが、彼らってどこまで現実のビジネスが分かるのだろう?机上の学問ばかり身につけても現実にそぐわない考え方をしてしまうだけの気がする。自分は今の会社で学生のOB訪問をよく受けるが、大学院進学か就職かを迷っている学生には就職を勧めるようにしている。理由は、①大学院にいって研究するのはビジネスを知ってからでも遅くないこと、②ビジネスを知ってから研究を再開すると視野が広がること。もっともこれはよくOB訪問を受ける母校の経済学部・商学部の学生に言うことにしている。理系や文学部などだったら話は別でしょう。長くなってしまったけど、自分のキャリアを広げる上で重要なのは実務経験ではないかと言うこと。そこを経験せずに講演までしてしまう最近の自分が恐ろしいんです、はい。

急速に高まる中国の移転価格リスク(その2)

2005年07月05日 | 中国
タイトルとは全く無関係ですが、本日「実録!会計初心者CPA合格への道」のKTさんとリンクを張らせてもらいました。同じ会計初心者として勉強を始めた私が拝読してお世話になっていたサイトです。

日が開いてしまったが、中国の移転価格リスクについて第2弾を。(真面目な話題だと、「ですます調」が良いのか、「である調」が良いのかいつも迷ってしまうが、いつも通りの「である調」に)

では、(その1)で述べた条件にあてはまる日系企業はどのような準備をしておくべきか。大きく2つが挙げられる。

①資料の準備:
当局が調査の重点を置くのは、当然のことながら関連企業間取引が独立企業間取引に基づいて行われているか否かである。関連企業取引の価格をどう決定したか、その合理性を裏付ける資料を用意しておくことが望まれる。何が独立企業間取引になるかは、OECDが決めており、中国もこのOECDガイドラインに沿っている。独立企業間取引として認可される価格決定法は、①独立価格比準法(comparable uncontrolled price method)、②再販売価格基準法(resale price method)、③原価基準法(cost plus method)、④その他。具体的な説明は長くなってしまうので省略。

ここで注意されたいのは、中国に複数の拠点を持つ企業は1社が調査対象となると全拠点に対象が拡大する可能性があること。そのため、本社を絡ませた対応策を取ることが望まれる。ただ、企業が単独で作成するのは難しいため、専門家の協力が必要となるだろう。

②事前確認(APA)の締結:
APAとは関連企業間取引の価格決定の妥当性について当局と協議して承認を得る制度。中国当局のみと結ぶユニラテラルAPA、日中両国の当局と結ぶバイラテラルAPAなどがある。国家税務総局は2004年9月にAPAに関する実施細則を公布。細則に基づいて申請して協議を行い、了承を得れば最大5年間は移転価格調査を受けることがなくなる。
日中バイラテラルAPAについては先月初の事例が出たことで報道された。広東省にある某日系企業が締結したという(企業名は非公表)。

日本企業にとって、中国での移転価格は馴染みが薄いかもしれない。しかし中国各地には専門調査員が配置されており、外資系企業が調査対象となるケースが相次いでいるという。私の友人が勤める某大手メーカーも中国で移転価格調査を受け、対応するのが大変だったと言っていた。中国の税務リスクというと、輸出増値税の不還付、将来的な優遇税制の撤廃などに目が行ってしまいがちだが、移転価格リスクにも目を向ける必要があるだろう。

人民元は切り上がるのか?(その3)

2005年06月21日 | 中国
人民元の切り上げ観測も4~5月にかけて随分高まったが、最近はやや落ち着いた気がする。結局、米国の圧力がかかればメディアも騒ぎ立てて「近いうちに切り上がる」と書いたが、その圧力がやや弱まると全体のトーンも落ちるという相関性があるようだ。

実のところ中国の国内動向を見ると、為替改革を実施する必要性は乏しい。インフレは昨年は一時5%台で推移していたが、今年は落ち着きを見せており、1%台後半だ。為替改革よりも国有企業改革の方が重要課題であり、今人民元を切り上げると多くの国有企業が悲鳴を上げることになる。結果、不良債権が増加する。国有銀行の体力を高めるため、株式市場への上場を予定しているが、国内の株式市場は下落を続けており、香港や米国が有力な上場先となっているようだ。中国にとっては現状維持が一番であり、出来るだけ切り上げをしたくない思惑がある。

とはいえ、国外はそれを許すことはない。中国の近年の輸出伸び率は凄まじい。2004年には輸出が5934億ドル(前年比35%増)、輸入が5614億ドル(同36%増)となり、日本を抜いて世界第3位の貿易国となった。この伸びは人民元が不当に安いためだというのが米国の主張。日本も米国の圧力を受け入れてプラザ合意に至り、円高になった経緯がある。中国の場合、日本とは異なり外圧に屈した形は取らないだろうが、近いうちに改革を断行するのは間違いないだろう。

問題はいつどのような方法で改革の第一歩を踏み出すか。有力と言われているのは5%ほどのバンドの拡大。しかしこれはあくまで第一歩。第二弾、第三弾が打ち出され、変動相場制に近づいていくことになろう。中国側も為替改革の必要性を明言している。米国の一部の議員は40%の切り上げが必要と言うが、これは中国には受け入れがたい内容。影響を最小限にとどめるため、時間をかけて改革を進めていくことになるだろう。

急速に高まる中国の移転価格リスク(その1)

2005年06月15日 | 中国
ここ数年、中国での移転価格リスクが急速に高まっている。
移転価格税とは、海外の関連企業と通常とは異なる価格で取引をすることで他国へ利益を移転させ、当該国での課税所得を低減させた分に課せられる税金である。

中国では91年に施行された「外商投資企業及び外国企業所得税法」により移転価格税制が初めて規定され、98年には「関連企業間取引の税務管理規定」で調査対象となる企業の基準や当局の調査方法など具体的な事項が盛り込まれた。

外資系企業を対象にした中国政府の移転価格調査はここ数年頻繁に実施されている。調査が入ると、膨大な資料を提出して取引価格の合理性を証明する必要がある。さらに、移転価格課税が生じると、日中両国での二重課税を排除するために両国政府間で協議が行われるが、合意に至らないと日本での控除を受けられない。

中国国家統計局の発表によると、2005年1~4月の外資系企業の利益は前年同期比3.5%減の1,075億元になった。国有企業や私営企業の利益が増加したにもかかわらず、外資系企業の利益が減少した背景には、まさしく外資系企業の利益移転があると当局は見ている。今後も移転価格調査が強化されるのは必至と言える。

移転価格調査は突発的に行われるが、調査対象となる可能性が高いのは以下の企業である。
①生産・経営管理の意思決定につき関連企業の支配を受けている企業
②関連企業との取引金額が大きい企業
③長期的に赤字の企業(連続2年以上)
④利益の変動幅が大きい企業
⑤タックスヘイブンにある関連企業との取引関係を持つ企業
⑥同業他社より利益水準が低い企業、⑦関連企業に不合理な費用を支払っている企業

こうしたものに該当する企業はどうすべきか。
(その2)ではこうした点について書いてみたい。

トヨタ自動車・プラド事件から見えるもの

2005年06月03日 | 中国
ちょっと古い話になるが、トヨタ自動車は2003年11月下旬、中国で販売する新車・プラドの広告を掲載した。獅子がプラドに敬礼し、プラドがトラックを牽引している絵柄である。そしてキャッチコピーは「プラドに尊敬せざるをえない」。獅子は中国の伝統文化を象徴することから、「獅子に敬礼させるのは如何なものか!」とか、プラドが牽引しているトラックは東風汽車のものに類似していることから、「トヨタは中国企業を侮辱している!」といった批判が最初はインターネットを通して盛り上がった。

トヨタはインターネットをきっかけに盛り上がった中国世論を重く受け止め、12月4日には日本企業としては異例とも言える迅速な対応をとって公式に謝罪。トヨタの広告を作成したのは中国企業だったこともあり、致命的なダメージを受けることなく問題に終止符が打たれた。

この問題から見えるもの。1つは、反日感情の高まりから日本企業は中国で叩かれやすい対象になっていること。反日感情の高まりは4月のデモを見れば明らか。日本企業の製品が少しでも不具合を起こせばインターネットを通して議論に火がつき、即座に広がる可能性がある。
2つには、中国のメディア事情。日本とは異なり、中国には無数の新聞紙がある。中国の新聞は少しでも面白い記事を書いて読者を喜ばせなければ生き残れない世界なため、記者は日本バッシングを頻繁に取り上げる。日本通の中国人研究者は「中国人記者の資質の低さは問題である」と発言していた。
3つには、日本企業の危機管理体制を整えること。今回のトヨタ事件では初期の対応が早かったため、大きなバッシングにはならなかった。しかし、2000年頃から立て続けに起こったJAL、東芝、三菱自動車の事件では企業の対応が遅れ、結果的に「誠意ある行動が見られない」と一層批判されることとなった。いざ問題が起こった際の対応を練っておく必要がある。欧米企業には広報担当者を置く企業も多い。
4つには、中国のメディアを上手く利用すること。中国で植林を行うといった慈善活動を積極的に行い、それをメディアに報道してもらうことは企業のイメージアップを図る上で効果的だ。中国のために行動していることをPRすることができる。この辺で上手いのが欧米企業。何か慈善活動をした際には必ず新聞に取り上げられるよう体制を整えている。

こうした点を中国で内販を手掛ける企業は重視する必要があるのだと思う。

呉儀副首相の緊急帰国

2005年05月24日 | 中国
日本を訪問していた中国の呉儀副首相が23日、小泉首相との会談をドタキャンして緊急帰国した。

中国サイドは「緊急の公務のため」としている。が、そんなこと信じられるわけがない。日本の報道では靖国問題が原因と決め付けられているが、他に要因はないだろうか?

①人民元切り上げ問題
先日のブログにも書いたが、米国からの切り上げ圧力は増すばかり。この切り上げ問題を国内で緊急協議する可能性もある。が、今のところそんな会議が開催されたという情報はなし。もっとも、米国の圧力がある中、今すぐ切り上げることはないでしょう。

②鳥インフルエンザの発生
最近、青海省で鳥インフルエンザが発生した。呉儀副首相は中国衛生部の管轄をしているため、この対応のために緊急帰国した可能性は考えられる。しかし、戻った先は大連。ここに戻る必要性はあったのか?やはりこれも怪しい。

この2つが決定的要因とならない以上、やはり靖国問題が根底にあると考えるのが正しいのだろう。

<以下、読売新聞の引用>
中国は、いま呉副首相が小泉首相に会えば、小泉首相が「参拝継続」を言明したままでも、首脳級の相互訪問が可能との「誤ったシグナル」を日本側に送る恐れがあると見ている模様だ。それ以上に、自国民に「弱腰」の印象を与えかねない。党内外の対日強硬派から指導部の責任を追及する声も上がりかねない。

十分あり得る話だ。。古典的なドタキャンを使ってまで胡錦濤指導部の面目を保つ必要性があったのだろう。考えて見れば、中国で自民党の武部幹事長が胡錦濤に会ったのも格から言えば異例の事態と考えるべきかもしれない。そこで胡主席が靖国参拝しないよう要請したのに、返答は理解を求める声だけ。この状況で首脳レベルの会談を行い、その後結果的に参拝してしまえば現指導部の面目丸つぶれ。

日中関係はどこへ向かうか?「政冷経熱」が「政冷経冷」へ。政治と経済は異なるという見方もあるが、中国との関係を考える場合、政治の悪影響は経済に及びやすい。

人民元は切り上がるのか?(その2)

2005年05月20日 | 中国
では、人民元が切り上がると日本の企業にどんな影響があるのか?これは一概には言えない。理由は対中ビジネスは多様化しているであり、必ずしもマイナスではなく、プラス要因になるケースさえある。以下では、ビジネス形態を類型化して見てみることにする。

1.輸出型企業
人民元が切り上がると、中国からの輸出は割高になる。そのため、中国に生産拠点を設けて輸出する企業に対しては大きな悪影響が出る。しかし、原材料を中国外から調達している場合は、その原材料の輸入は割安となる(輸出では割高、輸入では割安でその比重により良し悪しが分かれる)。しかし、原材料を中国現地で調達する場合、輸出のデメリットのみを被ることになる。

2.内販型企業
ここ数年、中国の富裕層の台頭やWTO加盟による規制緩和により、中国内でモノ・サービスを販売する企業が増えている。こうした企業にとってはデメリットを被ることはない。中国外から輸入したモノを中国で販売する場合、メリットのみを享受できる。

つまり、輸出型企業にとっては一定のダメージがあるが、内販型企業にとってはプラスに働くことがあることに留意する必要があるだろう。ある経済誌に掲載されていたが、日本の某大手家電メーカーは人民元の影響を総合的に調べたところ、プラスに働くことが判明したとのこと。

変動幅がどれ位になるのか不透明な部分は多いが、近い将来人民元が切り上がることは確実である。中国には先物市場が存在しないので為替リスクをヘッジすることは難しい。輸出型企業は内販を同時に進めて人民元を確保すればある程度のリスクヘッジになることを考慮すると良いかと思う。