処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

円満退社

2018-06-05 21:47:52 | 

著者 江上 剛

出版 幻冬舎文庫

 

 

        

友人に内館牧子『終わった人』を薦めた。その友人から「面白かった」の読後感のコメントとともに、これを逆に薦められた。で一挙に読む。

大過なく銀行勤務を終えて定年を迎えた支店長の最終日の一日が、時間を追って進行する。

登場人物は、デフォルメされて、もうドタバタ。コミックの展開は、もう殆ど三谷幸喜の世界。ひょっとしたらもう映画になっているのかしら。

しかし一方では、経済小説としても面白い。市井の庶民の生活感や銀行への反感、行員群像などを描く中で、金融の仕組みに理解が及んでくる。とはいえ、それは自営業者などには日常そのものであり、私のような勤め人世界の方が異次元なのかも知れない。

著者が、多作の作家であることを知らずにいた。銀行時代、会社経営、テレビ・コメンテイター、と多彩な経歴が、現在の文筆活動に生かされている。

高齢化の日本、気力体力の充実にも拘わらず働く場のない同世代に比べ、著者は何と幸せなことか。羨やんでも詮なきこととは判っているのだが。