処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

警官の血

2010-08-25 16:54:15 | 
佐々木 譲 著、  新潮文庫




なるほど面白い。2007年日本冒険小説協会大賞。2008年 ”このミステリーがすごい” 第1位。

終戦直後から半世紀にわたる警察官親子の三代記。

警察小説によくあるドロドロの権力争いや救いようのない腐敗の暴露、酷薄のバイオレンス物とは一線を画しているところが、広く愛読された所以か。それは、一般市民の接点である ”駐在さん” を主人公にしたからに他ならない。

警察機構がカネをだして国立大学に行かせるほどのエリートでありながら、駐在勤務に励み、地域住民の生活を守る日常を描いているところが人気のひとつではないか。

どうだろう? 今の平均的日本人はどれだけ警察に正義と信頼と親近感を抱いているだろうか? 
その観点に立つと、この書は警察官とはこれほど正義感に燃え、市民に愛情を持ち、悪の根絶のために戦う集団であることを、改めて啓蒙あるいは宣伝している書であると言えなくもない。あるいは、あるべき姿を説いた叱声の書とも言える。

昨年のテレビ朝日の開局記念番組として放送された作品は、残念ながら、見損なった。キャストを眺めてみると、もう少し熟考してもよかったように思える。

放送局が、カネや太鼓で大宣伝したいのなら、その作品のキャス起用のトのアンケートから、視聴者に問いかけをしたらどうだろう。1年くらいかけて。キャスティングのプロが選ぶよりも、嵌る結果が出るかもしれない。開局半世紀のテレビ、視聴者の目は肥えているのだから。