真山 仁 著、 講談社文庫 全2巻
NHKの番組宣伝に刺激を受けて読んでみた。
かなり分厚い分量だが、面白く一気に読めた。
現実のニュースにおけるこうした経済・金融報道は、実にわかりにくい。とりわけ、新聞は、果たして書いてる記者は、自身が本当に判っているのか、と思わざるを得ない記事が多い。
ところが、この本は、実によく判る。それだけ著者の力量が群を抜いている。こう断定すると記者らは、「長い文章なら、俺だって判り易く書ける」と反論するか知らん。「だったら、あなたが小説書いてみて」と言おう。出来ッこないのだ。
例えば、預金保険法102条の適用の一号措置と三号措置の違い。「再生」と「破綻」、規模とケースと影響などが素人でもスッと理解できる。
登場人物一人ひとりの造形と配置が巧み。彼らの心では、明と暗、善と悪が交錯する。その人間臭さが、最後まで飽きさせない要素でもあろう。
私のキャステイング。鷲津は田宮二郎をおいて他に無し。飯島は中村伸朗、松平は十朱幸代、芝野は加藤剛。ちょっと昔過ぎるか。まあいいや。