処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

吉原手引草

2007-07-20 23:22:59 | 
松井今朝子作 幻冬舎刊。今期直木賞受賞作。
京都祇園の料亭に生まれ、大学院で演劇を学んだあと、歌舞伎の企画・制作に携わってきたという著者の経歴が見事に生きた作品。歌舞伎というより落語の廓噺の世界。消えた花魁について番頭や女衒が語る回顧談。「吉原五丁町」「花魁道中」「初会」「裏を返す」「紋日」「仕舞いをつける」「牛台」「新造」「水揚げ」などこの世界独特の語句や用法・謂われがさりげなく解説されていて、感心することしきり。江戸庶民が活写され、彼らの粋と人情としたたかさと諦めとがそのまま伝わってくる。小説としての構成や表現の上からも一級の作品。