瀬戸の住職

瀬戸内のちいさな島。そこに暮らす住職の日常。

年頭所感

2017-01-11 | Weblog
新年おめでとうございます。

かつて日本人は元旦を迎えると一斉にひとつ歳を重ねました。
数え年の話です。
例えば、昨年大晦日に生まれた赤ん坊は、翌日元旦には2歳になります。
平成28年で1歳、平成29年で2歳です。

幾度か経験したお葬式の打ち合せでの話。
その年の誕生日を迎えずに亡くなった方の享年は、満年齢に2歳プラスされます。
「お母さまの享年は80ですね」
と申し上げると、
「わざわざ歳を増やさないでください。満年齢の78でやってください」
と、故人の娘さんから言われることがあります。
女性にとって、歳を重ねることは喜ばしいばかりではないようです。

私ごと、昨年あたりより老眼の症状が急に表れました。
小さい文字が読みにくく、財布の小銭入れの中など、暗く細かいところが見えにくい、といった具合です。
不便はありますが、多少の不具合は意識のおごり(この肉体は俺もの、健康順調あたりまえ)を諫めてくれ、老いへの心づもりを促してくれるとして、頂こうと思っています。
思うに、若く万全な肉体とともにあった我が意識は、不遜で傲慢だったものです。

意識は活動していくうえに不可欠で、世間でも“意識高い系”など言われ、高い意識、よくはたらく意識があるのは良い状態と捉えられます。
ところが、仏教は過ぎた意識は慢心過信を生むとして諫められます。
禅の教えでは、心意識の運転を止める坐禅が修行の柱とされます。
宗祖道元禅師は、ココロとカラダを説く際、“身心”と、カラダを先にココロを後に記しています。
ココロは非常に不安定なので、坐禅によりよくカラダを調える。そこに調ったココロが備わると考えます。
武道や茶道、書道といった、道が付くものも同様で、まず形を大事にします。

道元禅師は坐禅の用心を記した普勧坐禅儀の中で、

「諸縁を放捨し、万事を休息して、善悪を思わず、是非を 管することなかれ。心意識の運転をやめ、念想観の測量を止めて、作仏を図ることなかれ」

と仰っています。
坐禅する際は、世事をなげうち、善も悪も、是も非も、あらゆる判断をわすれ、かしずかず、心意識や念想観といったはたらきを全て停止させることを勧められます。
お悟りを開こうという想いさえも戒められるのです。

歳を重ね老いるごと、足元を確かめつつ歩んでまいりたい。
日々を丁寧に、真心込めて勤めてまいりたいと思います。
本年もよろしくお願いいたします。

釈尊成道の日

2016-12-08 | Weblog
2500年ほどむかしの今日、釈尊は我執我見を離れ得て、覚者として歩き始められた。
12/8は釈尊がお悟りを開いた日とされています。
釈尊のお悟りにより、仏教が説かれ始めた不可欠な出来事ですので、世界各地の寺院でお祝いをされます。
我々曹洞宗の修行道場では、釈尊の菩提樹下の坐禅による成道をお慕いし、臘月=12月の8日に向け、臘八摂心(ろうはつせっしん)の坐禅修行が12/1から1週間勤められます。

釈尊はお悟りを開かれたおり、
「我と大地有情、同時成道。山川草木、悉皆成仏」
とのお言葉を発せられたという。

この釈尊のお言葉を、8年前108歳で亡くなられた前の永平寺貫首、宮崎奕保禅師がこんな表現をされていた。
「自分が悟ってみたら、この世はすでに悟りのすがただった」
と。

7日が8日に変わったといえども、世界がガラリと変わるわけもなく、己の、世界を見る見方がガラリと変わったのでしょう。

いま寺の周りの落葉の木々は、葉々の色を紅黄に変え、その葉々を頻りに落として装いを解いている。
立ち枯れした木が葉を落とさないことから判るように、木は生き生きとした生命力でもって古い葉を落とし、来春の若葉を迎える準備をしている。
葉の命は確かに木の命に繋がっているし、木の命は山の命に繋がっている。
以前TVで漁師さんが山で植樹する番組を観た。
山が元気になると、海も元気になり、良い魚が捕れるそうだ。
山の命は海の命と繋がっている。

我々人間の肉体は60兆もの細胞から成り、細胞は眼にも停まらない速さで生死(新陳代謝)を繰り返しているという。
その細胞のひとつひとつには、悠久の昔からの生命の歴史が組み込まれているというから、不思議で仕方ない。

釈尊の記念日の主な日は3つあり、4/8お誕生、12/8成道、2/15お涅槃です。

第十東予丸沈没事故71年

2016-11-05 | Weblog
第二次世界大戦敗戦の昭和20年、11/6に沈没した第十東予丸の事故発生より71年めを迎えました。
昨年は70周忌の節目にあたり慰霊祭を企画したところ、60余名のお参りをいただきました。

愛媛新聞の高橋記者さんには熱心な取材により、国立公文書館つくば分館(茨城県)に保存されていた資料を発見していただきました。
これにより、諸説あった犠牲者数は415名、また、沈没地点も特定されました。
この取材の成果は、昨年12/3愛媛新聞朝刊に見開き2ページの特集記事として掲載されました。
早速印刷をして、有縁の方々へお送りしました。
禅興寺本堂にも掲示してあり、自由に持ち帰れますので、多くの方々に一読いただければ幸いです。
また、毎日新聞にも全国版で掲載をいただき、県外在住のご遺族のお参りやお問い合わせも増えています。
事故と犠牲者、ひいては戦時下に失われた多くの命に、70年の時を超えて現在の人々の視線が向いたのであれば、泉下の御霊の慰めになったでしょうか。

今年は11/3文化の日の午前11時より、近隣のお寺さんにお手伝いいただいて、本堂にて読経、遭難者名簿にあるお名前をお一人ずつ読み上げました。
過去の慰霊祭のようなご案内をしていなかったにもかかわらず、ご遺族と島の方々合せて20名ほどの皆さまにお参りをいただきました。


村上海賊 三家の至宝展

2016-09-12 | Weblog
本年4月、村上海賊は日本遺産に認定されました。
禅興寺は能島村上家の祖、村上雅房公により開創された寺です。
いま脚光を浴びる村上海賊の三家の至宝展が、尾道・大島宮窪・尾道因島の3カ所にて開催されます。
詳細は下のチラシでご確認下さい。




10/23(日)日本遺産シンポジウム~村上海賊の魅力を世界へ~

2016-09-11 | Weblog
本年4月、村上海賊は日本遺産に認定されました。
禅興寺は能島村上家の祖、村上雅房公により開創された寺です。
いま脚光を浴びる村上海賊のシンポジウムが、10/23(日)大三島にて開催されます。
入場無料/申し込み不要とのことです。
詳細は下のチラシでご確認下さい。




9/23(金)永井HOTOKE隆 + KOTEZ + Miss Lee ~Blues Trio Live at 禅興寺~

2016-07-18 | Weblog
日本を代表するブルーズバンド、ブルーズ・ザ・ブッチャー。
今年もフジ・ロック・フェスティバルをはじめ多くのフェス、イベント参加の傍ら、新譜のリリースツアーで全国を巡回し、益々勢いを増している。
同バンドでフロントを張る永井ホトケ隆とKOTEZが7年ぶりに禅興寺にやってきます。
ブルーズ・ザ・ブッチャーの録音やライブにもゲスト参加する新進気鋭の女性ピアニストMiss Leeを加えたトリオ編成は、全国的にもかなりレアで、四国は初。
この機会をお見逃しなく!
※会場にて、ドリンク(アルコールも)、フードの販売もあります。

永井HOTOKE隆 + KOTEZ + Miss Lee ~Blues Trio Live at 禅興寺~
日時:’16/09/23 (金) , 開場18:00/開演19:00
会場:しまなみ海道伯方島・禅興寺(今治市伯方町木浦甲3645)
http://zenkou.net/main.html
料金:¥3,000-
問合:tel / 0897-72-0126 , mail / zenkou.abe@gmail.com




バングラディシュのテロ

2016-07-07 | Weblog
バングラデシュで7名の法人がテロリストに殺害された。
被害者は同国の建設業や交通渋滞緩和事業等、インフラ事業に携わっていた方々という。
国の発展のために尽力していた方々が、無慈悲なテロにより客死させられるとは何ともやりきれない。

昨年ISに邦人ジャーナリストが拘束、殺害された際に安倍首相が発した「その罪を償わせる」、その言葉にはひどく違和感を抱いた。
今回のテロはどうだろう。
報道を見聞すると、テロリストたちの多くは、バングラディシュの裕福な家庭で生まれ育ち学歴もあり、ある父親に言わせれば心優しい息子だったという。
ISにシンパシーを抱く自国産のテロリストが世界中あちこちに育っている現状では、テロを防ぐのは甚だ難しく、罪を償わせようにもIS以外に叩くべきところが見つからない。
テロリスト(テロリストになる人)たちの不満は、社会(特に欧米主導による社会)に対するものだろう。
自国の富(石油)は欧米に搾取され、欧米の都合の良いように政権を操作され、気まぐれのように武器を与えて隣国どうし戦わせもした。
欧米に害をなすと見ると悪のレッテルを張り攻撃を仕掛け、テロを仕掛けられるとさらに多くの人々を殺しに行った。
このような仕打ちに怒り、しかし大国に対抗するために、テロという手段をとるしか術はなかったのではないか。

武力による制裁は、新たなテロリストを生む。
テロ被害の国々では、過激派ではないムスリムへの差別が増えているというから、敬虔なムスリムが過激派へ傾倒していくことも考えられる。
理解と寛容さを失った世界で、憎しみのスパイラルを止める術はあるのだろうか。

例えば先進国で金を出し合って土地を買う。
そこへ戦争を望まないイスラム社会の人々を移し、衣食住を与える。
少年に銃を持たせるテロリスト教育ではなく、教科書や文房具、学を与える。
テロリストは破綻を狙って攻撃してくるだろうが、それをガードする。
これをまず最低100年は続ける。
夢のような話かもしれないが、それほどのことをする気構えがなければ、テロはなくならないと思う。

日本は一昨年、武器輸出を解禁した。
政府が提唱する新たな安全保障関連法制は、自衛隊の活動を世界規模に拡大させるもので、欧米を敵視するテロリストたちにすれば、もはや日本も欧米と同じく敵と映っているだろう。
日本が歩むべき道は。

オバマさんの広島訪問に思う

2016-06-06 | Weblog
先日実現した米国大統領オバマさんの広島訪問は良かった。
政治的な思惑もあるのかもしれないが、歴史的な訪問を、国民の多くが素心より歓迎したのではなかろうか。

今回の訪問は、大統領がオバマさんだからこそ、と思う。
仮にトランプさんが大統領になったとして、ヒロシマやナガサキと言われても「そんなん知るか」と言いそう(偏見ですが・・・)。
米国のアフリカ系黒人は、奴隷として連れてこられ、綿花栽培等の労働力として、白人から牛や馬のように扱われた。
人種差別が根強く残る米国において、黒人は今なお被差別の対象のままだ。
オバマさん自身はハワイ系の出身とのことだが、数々人種差別を受けた経験を語っている。
黒と黄の違いはあれど、有色人種として、原爆を投下された日本に同情の念を持つのかもしれない。
オバマさんが提唱する“核兵器なき世界”の実現は困難な道程だが、確かな一歩めになるといい。

禅興寺には、当地区木浦の戦没者名簿(軍人のみ)が保管されている。※画像のもの
私の祖父で17代住職が筆を執り浄書したもので、340名のお名前が記されている。
この小さな島の一部地域だけでも、340名もの若者が露の命を戦地に散らした。

先日、太平洋戦争当時軍人だったという90歳代の方、Мさんが訪ねて来られた。
新聞記事に、禅興寺で開催している第十東予丸慰霊祭のものを見つけ、戦地で一緒だった仲間の名前が遭難死者名簿にあるのではと考えたそうだ。
お調べしたら、8名の方々のお名前があった。
Мさんは本堂の遭難死者位牌の前で、90歳代と思えぬ長く通る声でしばし読経された。
その後お茶を差し上げながら、軍隊での事や済州島からの帰還の事など、色々お話し下さった。
8月終戦なのに済州島からの帰還が11月上旬になった事情、済州島から長崎へ渡り故郷までの帰路の様子など、私が持っていた疑問について伺えた。

悲しい出来事としては忘れられれば良いかもしれないが、未来の過ちに繋がる出来事は語り継いでいかなければならないと、改めて思う。


僧侶派遣サービスに思うこと

2016-04-23 | Weblog
インターネット通販大手会社が開始した【僧侶手配サービス】が物議を呼んでいます。
全日本仏教会は抗議文を送り、サービスの停止を求めました。
http://www.jbf.ne.jp/news/newsrelease/2408.html

先日、TV番組ぶっちゃけ寺でもこの問題が取り上げられ、お坊さんの間でも賛否が分かれていました。

問題の根底は、檀信徒とお寺の付き合いが希薄になったことと、お坊さんの資質への懐疑。
大きくはこの2点に集約されるでしょうか。
都会ほど問題の度合いが高いようです。

日常に菩提寺との付き合いが無く、いざ葬儀となっても、お寺にはお布施の金額など訊ねにくい。
お寺としては、訊ねられてもないのにこちらから金額を伝えるのはちょっと・・・。
という具合で、双方困惑しているように思います。

禅興寺では基準額を総代会で決めていますので、遠慮なくお訊ねください。
多くのお寺さんは訊ねれば基準額を教えてくれますし、「お気持ちで」と応じられた場合でも、同じ地域の葬儀社に訊ねればおよそ基準額は知れますので、ネット等で批判される“お布施の金額の判りにくさ”はさほど問題ではないと考えます。

お坊さんの資質、こちらが実に重要な問題です。
都会では、マンション住まいをして、葬儀社に雇われて電話一本で葬儀法事に赴くお坊さん、資格すら取得していないお坊さん(とは呼べませんが・・・)が存在するようです。
冒頭の手配サービスで示された“定額”の高い安いは、手配されたお坊さん次第でしょう。
浄財をお寺や布教のために使いたいという志を持ったお坊さんに対してなら“安い”と言えますが、遊興のために稼ぎたいという人に対しては“高い”と思います。
手配サービスではお坊さんの資質までは選びにくいことが問題です。

仏教界サイドから僧侶手配サービスへの批判の理由の多くは、“金額の明示により仏事を商品化”していることのようですが、私の意見としては、上記の如く、ランダムに手配されるお坊さんの資質の方が問題と考えます。
各宗派で資格証を発行して、信者さんはその提示を求められる、という方法もありましょう。

同じ宗派であれば、大学や修行道場でのネットワークからお寺さんの紹介も可能です。
曹洞宗のHPでは、各地のお寺の検索も可能です。http://www.sotozen-net.or.jp/
また、曹洞宗には教化センターという機関が各地にありますので、メールで問い合わせるのも手です。
http://shikoku-kanku.main.jp/(曹洞宗四国管区教化センター)

ご供養で後悔しないよう、調べておいてはいかがでしょうか。

5/21(土)鈴木トオル音楽会 於、禅興寺

2016-03-24 | Weblog


昨年に続き、今年も鈴木トオルさんが禅興寺に歌いにやってきます。
奇跡の歌声をぜひ体感してください。

※お寺に隣接の駐車場(30台程度可能)が新設されました。
遠方の方もご心配なくお越し下さい。

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『Love in City 2016 愛媛 / 鈴木トオル ひとりぼっちの音楽会』
5月21日(土)@愛媛今治・禅興寺
今治市伯方町木浦甲3645
http://zenkou.net/
 
開場 18:00 / 開演 18:30
予約 3,000円

[ご予約&お問合わせ]
zenkou.abe@gmail.com
0897-72-0126(禅興寺)

※ご予約の際、件名に[鈴木トオル愛媛公演]と明記の上、
お名前・お電話番号・チケット枚数をご記入いただき、
上記メールアドレスにお申し込み下さい。確認後、折り返しご返信致します。

鈴木トオル Toru Suzuki
1985年、LOOKのリード・シンガーとしてデビュー曲『シャイニン・オン~君が哀しい~』が大ヒットとなる。
LOOK脱退後もソロ・シンガーとして身近に感じる「愛」をテーマにした多くの作品を世に送り出している。ノエビア化粧品や欧州車アウディなどのコマーシャルでも洋邦の代表曲をカバーした楽曲が使用され好評を得た。
一方、『Love in City ~』と題したライヴは今や年間に130本を超える程に浸透し、同タイトルのライヴで現在も全国を巡る旅を続けている。そんなライヴを重ねてながらファンの声やリクエストにも応えたアルバム制作も意欲的に行い、ニューアルバム「RECORD」が絶賛発売中。
http://www.the-musix.com/tohru/