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中国艦船の領海侵入事案

2016年06月18日 17時55分00秒 | 保管記事


 

  記事の紹介です。

 

中国艦船の領海侵入事案

 緒方 林太郎 2016年06月18日 17:15

  まず、お断りしておきますが、このエントリーには日本政府にとって都合の悪いことも書いてありますが、現状を正しく把握するためのものであり、私は本エントリーについてのみ言えば現政権批判の意図はありません。それを前提に読んでください。

  長くて、ところどころ難しいのですけど、予めお詫びしておきます。

 ● 中国艦船は何処を通ったのか。

  概ね、この地図にある屋久島と口之島(中之島の北北東くらいにある小さな島)との間を通ったようです。

 ● この海域はどういう領土によって構成されているのか。

  「屋久島と口之島がベースだろ?」と思われるでしょう。しかしですね、この両島の距離は57キロくらいあります。口之島と口永良部島でも53キロくらいはあります。そうすると、いずれの島との間でも24マイル(44キロくらい)を上回り、両島から領海12カイリを設定したとしても、公海部分が出来てしまうはずです。

  しかし、大隅海峡を説明する海上保安庁のサイトを見ていると、こういう図が出て来ます(濃い青の部分が領海です。)。どうも、屋久島と口之島の間には何らかの「領土」がある事が前提とならない限り、こういう図が書けません。ただ、それが何なのか、グーグル・アースで見てみてもさっぱり分かりません。

  そのような中、Wikipediaで見ていると こんな図 が出て来ました。両島の間に「平瀬」と書いてある場所があります。恐らく満潮時でも海面に沈まない浅瀬であり、領土として存在し得る場所があるのではないかと思われます。それを領海基線とする限りにおいて、上記の海保の図は成り立ち得ます。

 ● では、日中両国はどういう主張をしているのか。

  ここら辺から少し雲行きが怪しくなります。日本は領海だと主張している一方で、中国は「国際海峡」だと主張しています。国連海洋法条約上、領海内の通航は「無害通航権」が認められています。「無害(innocent)」である限り、他国の船舶の通行を妨げてはならないということです。一方で、同条約上、国際海峡だと見なされれば「通過通航権」が認められます。「通過通航」とは「無害通航」よりも制約が少なく、かなり自由な通航を認められます。

 ● 何故、中国は「国際海峡」を主張したのか。

  軍艦であろうとも、通過通航権は認められるためであろうと思いますが、もう一つ挙げると、中国は自国の領海では軍艦の無害通航を否定しているので、日本に対して無害通航の主張をしにくいという事情もあるのではないかと、私は見ています。この件に関しては、5年前に私が書いたブログがあります。ここに詳しいのでそちらを読んでください。

 ● 中国の主張はどう見るべきか。

  国連海洋法条約を見ていると、国際海峡の要件は以下のようになっています。

 【国連海洋法条約(抜粋)】

 

第2節 通過通航

第37条 この節の規定の適用範囲

この節の規定は、公海又は排他的経済水域の一部分と公海又は排他的経済水域の他の部分との間にある国際航行に使用されている海峡について適用する。

 

 通過通航権が認められる条件は3つです。「公海又は排他的経済水域の一部分と公海又は排他的経済水域の他の部分との間にある」と「国際航行に使用されている」と「海峡」です。

  まず、第一の要件は満たしています。第三の要件は、私的には「浅瀬が間に挟まっているとはいえ、有人島間で57キロも幅があるのに海峡と呼ぶかな?」と微妙な所がありますが、「トカラ海峡」と呼んでいる以上、現時点で海峡であることを否定することは難しいでしょう。となると、「国際航行に使用されている」という第二の要件が残ります。

  そして、日本が「国際海峡ではない」と言うのであれば、日本側に「国際航行に使用されていない」事の立証責任があります。国際法上は中国が国連海洋法条約の規定を持ち出して国際海峡の通過通航である事を主張している以上、立証責任が日本側に来ています。防衛大臣が「中国の独自の主張」と口にするだけではダメです。

 ● そもそも、日本は「国際海峡」についてどう臨んできたのか。

  私が強く主張したいのは、この点です。日本は、国連海洋法条約上の国際海峡、そして通過通航という考え方について立場を明確にしてきませんでした。

  私は一期目の海賊テロ特(事実上の委員会初質問でした)で、国際海峡について聞いています。私の質問に対する外務省国際法局長答弁です。

 【平成23年08月10日衆議院海賊テロ特議事録抜粋】

○長嶺政府参考人 (略) この制度(注:国際海峡における通過通航制度)を導入するかどうかという点でございますけれども、そもそもこの制度が、いかなる場合に、いかなる範囲で適用され、また具体的にいかなる形態の通航が許容されるのかにつきましては、私どもも各国の国家実行をいろいろと調べております。既にこの通過通航制度を導入している海峡もございますし、またそうでない海峡もございます。また、導入されている場合の実行もさまざまでございます。
それから、この制度を導入するに際しましては、まさに我が国の安全保障の観点からもいろいろな慎重な対処が必要であるというふうに考えてきておるところでございまして、こういう本件をめぐる基本的な状況には、これまでのところ、大きな変化があるとは考えておりません。

 
  つまり、日本自体が国際海峡、そして通過通航制度について立場を決めかねているのです。だから、その間隙を縫って、今回の中国のような主張をされると困るのです。

 ● 何故、日本は国際海峡について態度を決めかねているのか。

  これは深遠な議論があります。実は、日本の領海の中には12カイリを主張せずに、3カイリに留めている場所が5か所あります。宗谷海峡、津軽海峡、対馬東水道、西水道、大隅海峡です。これを特定海域と言います。海保のサイトを見ていただくと、如何にこれらの海峡で領海主張を制限して、海峡の中に公海部分を開けているかということがよく分かります。

  何故、こんな事にしているかというと、理由は「核搭載艦の通過と非核三原則の『持ち込ませず』との関係の整理を付けるため」です。これら5海峡で領海12カイリを主張すると、海峡が領海で埋まってしまいます。そうすると、そこで適用されるのが無害通航なのか、通過通航なのかはともかくとして、日本の国是である非核三原則の「持ち込ませない」との関係で、核搭載艦の領海内通行を認めない日本は、日本海に米核搭載艦が入ることを拒否せざるを得なくなります。

  なので、非核三原則との折り合いを付けるために公海部分を開けざるを得ず、この特定海域を作り、その効果として、日本の領海における国際海峡の議論をしないようにしたのです。思いとしては、今回の海域については「大隅海峡を通って。公海部分を開けてあるから。」というのが思いなのでしょうが、そういうナイーブな願いは中国には通じないという事です。

 

● では、どうすべきか。

  国際海峡制度にもう少し真正面から向き合うべきです。色々な考え方があり得るでしょう。3パターンくらいあると思います。

 ① そもそも、あのエリアを海峡とは認めない。

  若干、キツいかなとは思いますが、しかし有人島間で57キロも離れているのに海峡と呼ぶのもどうかなと思います。国際海峡の議論の更に前で、海峡であること自体を否定するという事です。

 ② 「国際航行に使用されていない」ことをきちんと証明する。

  これは実際に航行の実績がどうなっているかが分からないので何とも言えませんが、直感的に(中国以前の問題として)アメリカが良い顔をしないような気がします。アメリカは「航行の自由」に対する主張の強い国です。あのエリアを単なる領海の集合体に過ぎず、通過通航は認めないという主張を受け入れるかなと疑問符が付きます。

 ③ 国際海峡と認めた上で、国連海洋法条約上認められる「分離通行帯」を設定する。

  通過通航が認められるといっても、沿岸国に何もできないというわけでもありません。「通航してもいいけど、ここを通りなさい」という分離通行帯を設定することは出来ます。これによって、特に軍艦については厳格にやればいいと思います。

 ● 合わせ検討すべき事項

  上記で引用したブログにも書きましたが、中国はその領海内で他国の軍艦に無害通航を認めていません。であれば、日本も中国の軍艦に認める必要はありません。そこは「相互主義」でやればいいと思います。軍艦に無害通航を認めてない国には、こちらも認めない。認めている国には、こちらも認める。これでいいと思います。

  このアイデアは、航行の自由を主張し、軍艦であろうとも無害通航は当然認められるとするアメリカやロシアとぶつからず、中国や韓国のように領海内の軍艦による無害通航を否定する国にのみ掛かってくるので、非常に良いと思っています。

 ● まとめ

  国際海峡の制度から距離を置いていた事のツケが回り、遂にこういう事が起きたか、というのが率直な感想です。これはどの政党が悪い、良いという話ではありません。海洋政策を再度、見直す機会にすべきだと思います。
http://blogos.com/article/180031/

  記事の紹介終わりです。

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