旅する心-やまぼうし

やまぼうし(ヤマボウシ)→山法師→行雲流水。そんなことからの由無し語りです。

薄田泣菫「猿の腰かけ」

2015-09-14 01:39:49 | 日々雑感
前日に引き続き薄田泣菫の詩の中からの紹介。
こちらはついでのこと。

山でしばしば目にするブナの巨木の高い位置に生えている固いキノコ“サルノコシカケ”。
古来、癌に効くとか言われてきた代物。
置き物などにも加工されたりしている。

これの一種であるチャーガ(ロシア名。白樺の木に寄生する。別名「カバノアナタケ」「白樺霊芝」「シラカバタケ」「チャガ」「カバノ癌腫病菌」)は、ノーベル賞作家ソルジェニーツィンが小説「ガン病棟」の中で腫瘍に効くキノコとして取り上げている。

このサルノコシカケの名前の由来の面白い詩。
薄田泣菫は花虫草木など数々の詩を残しているが、この詩は読む人をニヤッとさせてしまう。

   猿の腰かけ

山の朽木(くちき)に焦色(こげいろ)の
菌(きのこ)が一つ生(は)えたのを、
兎はゆうべここに来た
鬼が落とした角といひ、
狸(まみ)はお山の山姥(やまうば)が
魔法使の手だといふ。
そこで二人が連れだって、
お山の猿を訪ねたら、
知つたかぶりの猿公(えてこう)は、
それは角でも手でもない、
お慈悲の深い神様が
お猿に呉れた床几(しやうぎ)ぢやと
言ひまぎらした口まめに、
狸(まみ)も兎も合點(がてん)して、
山の菌はその日から
ずるいお猿の腰かけと
いつの代までもなつたとさ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 薄田泣菫「三びき猿」 | トップ | 鳥海山・湯ノ台コース(山形県) »

コメントを投稿

日々雑感」カテゴリの最新記事