今日は。
早いもので2019年も残すところあと僅かとなりました。
年内最後のブログ更新ですが敢えて暗い話題です。
皆様はphrynops williamsi ことウィリアムズカエルガメをご存知でしょうか?
非常にマイナーなカメですが10年前まではポツポツと入荷していました。
https://allabout.co.jp/gm/gc/69908/
こんな感じの不人気種の代表選手みたいなカメです。
そしてこれが今から10年前のREP JAPAN ニュースです。
https://repjapan.exblog.jp/11789120/
このニュース、真実でした。
これ以来ウィリアムズカエルガメは日本に入荷していません。
今年の秋に先輩方がウルグアイのブリーダーの元を訪れた際も、ブリーダーがウィリアムズは政府の輸出許可が下りないからCBは沢山いるが出荷は不可能だと言われたそうです。
では何故ウルグアイ政府はこの種を輸出禁止にしたのでしょうか?
少しこのカメについて語らせて下さい。
ウィリアムズカエルガメは分布域は相応に広いのですが、ヒラリーのような面分布ではなく点在しているのです。
例えばオオサンショウウオは日本に分布していますが、生息地は限定されているのと同じことです。
ウィリアムズカエルガメの分布図です。
帯状の部分がウルグアイ国内の生息地です。
さらに分布地を絞りこみます。
このようにウィリアムズカエルガメは局所的に分布しており、なんらかの事情で採集圧がかかればそれこそ根こそぎに採り尽くされる恐れがあります。
このへんはオーストラリアの爬虫類のように移入獣による食害及び開発による生息地の減少とロードキルによる個体数の減少とは一線を隔する現状だと思います。
従ってウィリアムズカエルガメについては野生個体の採集を禁止することは合理的・妥当な判断だとは思いますが継続して繁殖技術が確立されたCBまでが輸出禁止になったことには疑義を感じます。
私はここに大いに危機感を覚えるのです。
資本主義対社会主義という分かり易いイデオロギー対決の時代が終わり、世界は事実上資本主義の頂上決戦の時代へと変遷し、その結果として富める者はさらに富み、貧しい者はより貧しくなるという富の二極化へと進んでいます。
富の分配機能を持つ税制も富裕層優遇に変わりこの流れを加速させています。
この世界の潮流は1920年代から第二次大戦までの時代と似ています。
少数の富める資本家と大多数の貧困層を結びつける分かりやすい大義名分が国家であり他国を貶めることなのです。
リュウキュウヤマガメの海外への流出、ニホンイシガメの中国への輸出と聞けば感情的になる今の時代を戦前のナショナリズム隆盛期と被って見える私は非常に危険な時代になったと危惧しています。
そして実はウルグアイ政府もまたこのナショナリズムの高まりによりウィリアムズカエルガメを禁輸にしたと私は考えています。
何故ならこの禁輸措置はウルグアイの自然保護団体からの提言であり、彼らの主張に基づけばウィリアムズカエルガメはウルグアイ特産であり、保護すべきカメであるからだそうです。
しかしながらCBまで禁輸措置は行き過ぎだと個人的には思いますが南米の曲頸種は全てこの「ウルグアイ ハペトロジー研究所」で飼育下繁殖されたものしか輸出できません。
悩ましいことにここは政府の資本が入った施設なのです。
Twitterで爬虫類界隈自体がやがて消滅すると示唆された方がいらっしゃいました。
まさに慧眼だと思います。
モンドセレクションのごとくエントリーすれば承認されるCITESしかり。
野生動物を巡っても戦前のナショナリズムの息吹を感じてなりません。
世界の大多数はこの趣味を悪と断罪しています。
そして我々から動物を取り上げようとしています。
我々爬虫類飼育者にはなんの刺激もないことが多くの市井の人々には過激であるのに配慮のないSNSは止む気配はありません。
これでは敵に塩を送っているようなものです。
何故に貴重で大切なカメにマイクロチップを挿れなければならないのか?
あまりに傲慢で強引な(一方で開発にはノーブレーキ)世界のトレンドには憤懣やる方ない思いです。
私はロックフェラーのいう「自由貿易こそが世界平和」というこの部分は支持しています。
あらゆる自由な貿易こそが人々の感性をより豊かにし、自国と他国の文化をより深く理解することに 貢献する手段だと考えています。
誤解を恐れずにいえば、CITESすら人とものの自由な行き来を規制し、富と知識の発展を阻害する因子に過ぎないとすら考えています。
カメに関しても先々の入荷は絶望的でしょう…
ウルグアイのデビッド氏、ドイツのルドルフ氏等、著名な曲頸ブリーダーは既にご高齢ですし、この世界のトレンドを理由に引退を決める方もいると聞きます。
現在はイベント全盛時代であり、ややもするとバブル期の如きイケイケドンドンの空気を感じることもあります。
しかし皆さん、バブル経済が宴の最中に崩壊が忍び寄っていた事実を忘れてはなりません。
今、爬虫類界隈には危機が迫っているのではないか?と私は恐れています…