>>>冒頭の語り
桜が咲いております。懐かしい葛飾の桜が今年も咲いております・・・・・・。思い起こせば二十年前、つまらねぇことで親爺と大喧嘩、頭を血の出るほどブン殴られて、そのまんまプイッと家をおん出て、もう一生帰らねえ覚悟でおりましたものの、花の咲く頃になると、きまって思い出すのは故郷のこと。・・・・・ガキの時分、鼻たれ仲間を相手に暴れまわった水元公園や、江戸川の土手や、帝釈様の境内のことでございました。風の便りに両親(ふたおや)も、秀才の兄貴も死んじまって、今はたった一人の妹だけが生きていることは知っておりましたが、どうしても帰る気になれず、今日の今日まで、こうしてご無沙汰に打ち過ぎてしまいましたが、今こうして江戸川の土手の上に立って、生まれ故郷を眺めておりますと、何やらこの胸の奥がポッポッと火照ってくるような気がいたします。そうです、私の故郷と申しますのは、東京葛飾の柴又でございます。
>>> おまえ頭が悪いな、俺とお前は別の人間だぞ、早え話が俺がイモ食えばテメエの尻からプッと屁が出るか?
>>> ハチの頭だとかアリのキンタマだとかゴタク並べやがって、おいテメエ、要するにさくらのことを嫁に貰いてえんだろう?
>>> 博からさくらへの愛の告白
「僕の部屋から、さくらさんの部屋の窓が見えるんだ。朝、目を覚まして見てるとね、あなたがカーテンを開けてあくびをしたり、布団を片づけたり、日曜日なんか楽しそうに歌をうたったり、冬の夜、本を読みながら泣いていたり。あの工場に来てから三年間、毎朝あなたに会えるのが楽しみで、考えてみれば、それだけが楽しみでこの三年間を・・・。
僕は出て行きますけど、さくらさん、幸せになってください、さようなら」
◆第2作「続 男はつらいよ」から
>>>
散歩先生 「俺が我慢ならんことは、お前なんかより少しばかり頭がよいばかりに、お前なんかの何倍もの悪いことをしている奴がウジャウジャいることだ・・・・・・。こいつは許せん、実に許せん馬鹿どもだ、寅」
寅次郎 「私より馬鹿がおりますか」
>>>
寅次郎 「バカヤロ、あのお嬢さんがラーメンなんか作るかい、手前の考えは貧しいからいけねえよ」
源 公 「そいじゃ、何作るんだよ」
寅次郎 「決まってるじゃねえか、スパゲッチーよ」
◆第3作「フーテンの寅」から
>>> インテリというのは自分で考えすぎますから、そのうち俺は何を考えていたんだろうなんて分かんなくなってくるわけです。つまりテレビでいえば、裏の配線がガチャガチャに込み入っているわけなんですよね。ええ、その点私なんか線が1本だけですから、まあ、言ってみりゃ空っぽといいましょうか、叩けばコーンと澄んだ音がしますよ、殴ってみましょうか?
>>> 女にはね、たしなみが必要なんだよな。亭主の前でもってさ、よくバタバタあたしオシッコに行こう、なんて、おばちゃんよくやってるじゃない。あ、漏っちゃうなんて。そら、行っちゃいけねえとは言わねえよ。行ってもいいんだよ。ただ、男の気がつかねえように、すーっと用を済まして帰ってくるっていう、そうしたたしなみがほしいって言っているわけだ。
◆第5作「望郷篇」から
>>> 上等上等、あったかい味噌汁さえありゃ充分よ。あとはおしんこと海苔と鱈子(たらこ)一腹ね、辛子のきいた納豆、これにはね、生ネギを細かく刻んでたっぷり入れてくれよ。あとは塩こんぶに生玉子でもそえてくれりゃ、もう何もいらねえよ、おばちゃん。
↑ 上へ
◆第7作「奮闘篇」から
>>> 夏になったら、鳴きながら、必ず帰ってくるあの燕(つばくろ)さえも、何かを境にぱったり姿を見せなくなることもあるんだぜ。
◆第8作「寅次郎恋歌」から
>>> 例えば、日暮れ時、農家のあぜ道を一人で歩いていると考えてごらん。庭先にりんどうの花がこぼれるばかりに咲き乱れている農家の茶の間、灯りがあかあかとついて、父親と母親がいて、子供達がいて賑やかに夕飯を食べている。これが・・・・・・これが本当の人間の生活というものじゃないかね、君。
>>> はぁー、いやだやだ。俺は横になるよ。オイまくら、さくら取ってくれ、いや違うな、さくら、枕取ってくれ。(おいちゃんの言葉)
◆第9作「柴又慕情」から
>>> 風呂なんざなくたっていいんだ、俺は銭湯が好きだからな。「ひとっ風呂浴びてらっしゃいな、その間に晩ご飯の支度しておくからさ」 タオル、洗面器とシャボン、「どうせあんた細かいお金なんか持たないんだろ」 40円ぽんと貰って、「じゃ行ってくらあ」「行ってらっしゃい」、やがて俺は風呂へ行く。帰ってくるとご飯になる。何、別におかずなんて大したものはいらねえ、どうせ家賃は大したことないんだから。おつまみに刺身一皿、あとは煮しめと吸い物、それに卵焼きにおひたしか何か・・・・・・お銚子を3本ぐらいすっと飲む、昼間の疲れでウトウトする、おかみがすっとそれを見て、「さくら、枕を持ってきておあげ。ついでに腰のあたりでも揉んであげなよ」 さくらっていうのはその下宿の娘だけどね。・・・・・・何だ、その面は?
◆第10作「寅次郎夢枕」から
寅次郎 「おばちゃん、今夜のおかずは何だい?」
つ ね 「お前の好きなお芋の煮っころがし」
寅次郎 「貧しいねぇ うちのメニューは。もうちょっと何かこう 心の糧になるおかずはないかい、例えば厚揚げとか筍とかよ」
>>> いいか、恋ってのはそんな生易しいもんじゃないんだぞ。
飯食うときだってウンコする時だって、いつもその人のことで頭がいっぱいよ。何かこう、胸の中が柔らかぁくなるような気持ちでさ。ちょっとした音でも、例えば、千里先で針がポトンと落ちても、アーッとなるような、そんな優しい気持ちになって、もう、その人のためなら何でもしてやろう、命だって惜しくない、「ねぇ寅ちゃん、私のために死んでくれない?」って言われたら、ありがとう、と言ってすぐにも死ねる、それが恋というものじゃないだろうか・・・・・・。どうかね、社長?
>>> 寅次郎に縁談が来て、おいちゃんが相手の家族に電話で説明する場面
えーと、本人の勤務先は……つまり何といいますか、セ、セールスマンでございます。え・・・・・・え・・・・・・。柴又尋常小学校を卒業致しまして、それから葛飾商業を、ま、こちらのほうは少し早めに卒業しまして。は、それから後? も、もちろん東大なんかじゃございません。ええ、早稲田大学でも慶応でもございません。つまり何といいますか、つまり私どもの教育方針と申しますのは、その・・・・・・じ、実力主義でございまして・・・・・・え、そうですが、・・・・・・はい・・・・・・、くだらない大学なんぞ出るよりも、その方がよっぽど・・・・・・早めに社会に出しまして、みっちり鍛えましたわけで・・・・・・。え、趣味? 趣味は・・・・・・ああ、趣味は旅行でございます。当人何よりも旅行が好きです。年がら年中旅行しております、ハイ・・・・・・。あ、身体は? それだけは頑丈そのものでして、病気一つしたことがございません。
↑ 上へ
◆第11作「寅次郎忘れな草」から
>>> 言ってみりや、リリーも俺と同じ旅人よ。見知らぬ土地を旅する間にゃ、それは人には言えねえ苦労があるのよ・・・・・・。例えば、夜汽車の中、いくらも乗っちゃいねえその客もみんな寝ちまって、なぜか俺一人いつまでたっても眠れねえ・・・・・・。真っ暗な窓ガラスにホッベタくっつけてじっと外を眺めているとよ、遠くに灯りがポツンポツン・・・・・・。あ-、あんな所にも人が暮らしているんだなあ・・・・・・。汽笛がポーツ、ポーツ・・・・・・、ピーツ。そんな時よ、そんな時、なんだかわけもなく悲しくなって、涙がポロポロと出たりするのよ。そういうことってあるだろう、おいちゃん。
リリー 「あたし達みたいな生活ってさ、普通の人達とは違うんだよね。それもいい方に違うんじゃなくて、何て言うのかなぁ、あってもなくてもどうでもいいみたいな、つまりさ、アブクみたいなもんだね」
寅次郎 「うん、アブクだよ。それも上等なアブクじゃねぇや。風呂の中でこいた屁じゃねぇけども、背中の方に回ってパチンだ」
>>> なぁ~に言ってんだい。四角いカバンしか持ってねぇじゃないか、何が入ってるか知らないけど。(おいちゃんの言葉)
◆第13作「寅次郎恋やつれ」から
>>> 俺あ、昔からあれ不思議なんだけどさ、どうして風もねえのに波は立つのかな。沖のほうで誰かがこんな大きな洗濯板で、わいわいこうやって波を立てているんじゃないかな。
>>> おい、さくら、歌子ちゃんがもう今すぐ来るってよ! おい、おじちゃん、なにボヤッとしているんだよ。さくら、さくら、そのなんだ。あ、そう、そう、お茶いれて、おばちゃん、ぼやっとしてないで、料理を作る、料理を。おじちゃん、そんな所で、バカみたいに口あいてるんじゃないよ、歌子ちゃんがこれから長旅で疲れて帰ってくるんだから、二階へ、スーッと行って、ふとんをサーッと敷いてやる、いいね。え、博、お前、風呂わかせ、風呂、熱くわかしてね。よーし、あ、大切なことを忘れてた。ちょっとみなさん、ちょっと集まってください。みなさんも先刻ご承知のとおり、歌子さんは、ごく最近、夫を亡くされました。だからまかり間違っても夫とか、彼とか、ダーリンとか、旦那とか、その他のことは一切口走らないでください。わかったね。ことに、お前は女だから、そうだ、さくら、お前の亭主は死んだことにしろ、博、お前は即刻死ね。
歌子 「お父さん」
父 「うん?」
歌子 「長い間、心配かけてごめんなさい」
父 「いや、なにも、君が謝ることはない。謝るのは多分私のほうだろう。私は口がへただからなんというか、誤解されることが多くてな。私は君が自分の道を、自分の信ずる道を選んで、その道をまっすぐに進んでいったことがうれしく、私は、ほんとうにうれしく・・・」
◆第15作「寅次郎相合傘」から
リリー「幸せにしてやる? 大きなお世話だ。女が幸せになるには男の力を借りなきゃいけないとでも思ってんのかい、笑わせないでよ」
寅 「でも、女の幸せは男次第じゃねえのか」
リリー「へーえ、初耳だねえ。私、今まで一度だってそんなふうに思ったことはないね。もしあんた方がそう思ってんだとしたら、それは男の思いあがりってなもんだよ」
寅 「お前も可愛げがない女だな」
リリー「女がどうして可愛くなくっちゃいけないんだい。寅さん、あんたそんなふうだから年がら年じゅう女に振られてばかりいるんだよ」
>>> そうそう、俺なんか定年ありゃしねえ。あれはどうやったらいいんだ、区役所に申請すんのか?
◆第16作「葛飾立志篇」から
>>> いいかい? あーいい女だなあと思う。その次には話してみたいと思う。その人のそばにいるだけで、何かこう気持ちがやわらかくなって、あーこの人を幸せにしてあげたいなーと思う。この人の幸せのためなら俺はどうなってもいい、死んだっていい、とそんなふうに思うようになる。それが愛よ、違うかい?
◆第17作「寅次郎夕焼け小焼け」から
>>> 私、近頃よくこう思うの、人生に後悔はつきものじゃないかしらって。
ああすればよかったなあという後悔と、もう一つは、どうしてあんなことをしてしまったんだろうという後悔・・・・・・。(志乃の言葉)
>>> もしも警察が来て俺のことを聞かれても、縁を切ったというんだぞ。さもないと満男が犯罪人の甥になってしまう。
>>> あんな男の人の気持ち初めてや。もう200万円なんてどうでもいい、寅さんの気持ちだけでウチは幸せや。(ぼたんが泣きじゃくりながら)
◆第18作「寅次郎純情詩集」から
寅次郎 「・・・悪かった。何しろ、あの時は俺も、若かったから・・・」
おいちゃん 「何が若かっただ、バカ。あれは先月のことだ!」
>>> まぁ、こう人間がいつまでも生きていると、陸(おか)の上がね、人間ばっかりになっちゃう。で、うじゃうじゃ、うじゃうじゃ。面積が決まっているから。で、みんなでもって、こうやって満員になって押しくらまんじゅうしているうちに、ほら、足の置く場所がなくなっちゃって、で、隅っこにいるやつが、お前どけよと言われて、あーっなんて海の中へ、バシャンと落っこって、アップアップして、助けてくれー、なんてね死んじゃうんです。結局、そういうことになるんじゃないんですか。
(綾に「人はなぜ死ぬんでしょうね?」と聞かれて)
>>> 最後の床についたときもね、寅さんに逢える日が来ることを楽しみにしていたのよ。意識がなくなりかける時にね、私が耳もとで「お母様、早くよくなって寅さんに逢いにいきましょうね」、そう言ったらお母様は、うれしそうな顔してコックリうなずいたわ。誰にも愛されたことのない悲しい生涯だったけど、でも最後に、たとえひと月でも寅さんていう人が傍にいてくれたことで、お母様はどんなに幸せだったか、私にはよく分かるの。
◆第19作「寅次郎と殿様」から
>>> 人間の運命なんて分からないもんな。たとえばの話、この敷居をまたいだ時に、いい女にバッタリ会って、その女と所帯持っちゃうかもしれねえもんな。
◆第20作「寅次郎頑張れ!」から
>>> そりや好きな女と添いとげられれば、こんな幸せはないけどさ。しかしそうはいかないのが世の中なんだよ。みんな我慢して暮らしてるんだから、男だって、女だって。
>>> やっぱり食事はレストランがいいな。けちけちしないでデザートも取ってやれよ。今の若い娘はよく食うからねえ。あのガラスの器に入ったあれ、何て言うんだ、アイスクリームをこう、ねじりウンコのように山盛りにしたヤツ、あれなんか一口でペロッと食べちゃってさ。そこで二人は人影の少ない公園に行く。じっと娘の目を見る。お前が好きなんだよという思いを込めて娘の目を見る。そうすれば必ずお前の気持ちは通じるんだ。そこだよ、それで最後のセリフを言う。アイ・ラブ・ユー。できるか、青年。
↑ 上へ
◆第25作「寅次郎ハイビスカスの花」から
寅次郎「おや、どこかでお目にかかったお顔ですが。姉さん、何処のどなたです?」
リリー「以前、お兄さんにお世話になった女ですよ」
寅次郎「はて?こんないい女をお世話した覚えはございませんが」
リリー「ございませんか!この薄情者!」
寅次郎「何してるんだよお前、こんなところで」
リリー「商売だよ。お兄さんこそ何してんのさ、こんなところで」
寅次郎「俺は、リリーの夢を見てたのよ」
>>> 生きている間は夢だというのは、確かセックスピアの言葉でしたな。(御前様の言葉)
>>> 男に食わしてもらうなんてまっぴら。でも、あんたと私が夫婦だったら別よ。(リリーの言葉)
さくら「どうしたの、そんなこと言われて」
寅 「そら、オレ照れくさいからよ、冗談じゃねえよ、お互い所帯なんか持つ柄じゃねえだろう、エヘヘって笑ったのさ。そうだよ、そしたら、そしたらリリーのやつ・・・」
さくら「リリーさんが、どうかしたの?」
寅 「悲しそうな声してな、『あんたには女の気持ちなんて分かんないのね』。そう言って涙こぼしてたなあ」
さくら「リリーさんの愛の告白ね」
寅 「おい、バカなこと言うなよお前、まじめな顔して。満男が聞いているよ、エヘヘ」
博 「兄さん、笑い事じゃないんだ。リリーさんがその時どんな気持ちでいたか、分からないんですか?」
つね 「そうだよ、女にそこまで言わせてさ」
◆第26作「寅次郎かもめ歌」から
>>> こういうことはな、ゆとりを持たせなきゃいけないんだ。早めに行ってお茶の一杯も飲んで気を落ちつけて。あ、そうだ。縁起を担ぐようだけど、今日一日、落ちるとか、すべるとか転ぶとか、その手の言葉を口にするな、いいか。
願書はバッグにしまっておけ、落とすといけないから。あ、いけねえ、落とすなんて言っちゃった、つい口がすべっちゃって、あ、また言っちゃった。
◆第27作「浪花の恋の寅次郎」から
>>> そりゃ今は悲しいだろうけどさ。月日がたてばどんどん忘れて行くものなんだよ。忘れるってことは本当にいい事だよ。
◆第28作{寅次郎紙風船」から
>>> 御前様にお尋ねします。
亭主に死に別れた女房が他の男と再婚する場合に、やはり一周忌までは待つべきでしょうか。それとも三回忌まではがまんしなきゃならないもんでしょうか。そのへんのところは、お経には何と書いてありますか。
>>> 寅の小学校時代の同級生が、酒に酔った寅に「ケチなクリーニング屋」とくさされて――
いいか寅、俺にだってお得意がいるんだよ、お得意が。俺が洗ったシーツじゃなきゃ困る、俺がアイロンかけたワイシャツじゃなきゃ嫌だ、そう言ってくれる人が何人もいるんだよ。商売っていうのはそういうものなんだ。
>>> いい女が泣くと笛の音に聞こえるなあ。おばちゃんが泣くと夜鳴きそばのチャルメラに聞こえるんだよ。
◆第29作「寅次郎あじさいの恋」から
寅次郎「よう、いろいろ世話になったな、ねえちゃん」
かがり「もうお帰りどすか」
寅次郎「ああ」
かがり「今、朝御飯の支度できますけど」
寅次郎「ああ、それで豆腐買いに行ってくれたのかい、ああ、それは悪かったなあ。いやね、ちょっと夕べやりすぎちゃって、へっへ、具合が、また今度来たとき御馳走になるよ、うん、あばよ」
寅次郎「あっ、ええと、お、おれ、今どこに居るんだっけ?」
かがり「ここは五条坂いうとこですけど」
寅次郎「五条、あっ、じゃ、こっちが四条でこっちが七条ということになるわけか。はは、京都は道が分かりやすくていいやな、じゃ」
寅次郎「じゃあ、かがりさん、世話になったな」
かがり「寅さん」
寅次郎「えっ」
かがり「もう会えないのね」
寅次郎「・・・・・・いやあ、ほら、風がな、風がまた丹後の方に吹いてくることもあらあな。元気でなあ!」
>>> 寅さん、この間は、ごめんなさい。
私は、とても恥ずかしいことをしてしまいましたけど、
寅さんならきっと許してくださると思います。
今は、夏休みで私も機織りの合間に、民宿の手伝いに借り出され忙しい毎日です。
母も娘も元気で手伝ってくれています。
寅さんは、今どこかしら?相変わらず旅の空かしら?
風はどっちに向かって吹いてますか?丹後のほうには向いてませんか?
今度、寅さんが来たら、この間のような間に合わせでなく、
美味しい魚の料理を腕を振るってお腹一杯食べさせてあげたいと思います。
寅さんの楽しい話を聞きながら・・・・・・。(かがりからの手紙)
◆第30作「花も嵐も寅次郎」から
>>> あいつがしゃべれねえーてのは、あんたに惚れてるからなんだよ。今度あの娘(こ)に会ったら、こんな話しよう、あんな話もしよう、そう思ってウチを出るんだよ。いざその子の前に座ると、ぜーんぶ忘れちゃうんだね。で、馬鹿みてーに黙りこくってんだよ。そんなてめえの姿が情けなくって、こー、涙がこぼれそうになるんだよ。な、女に惚れてる男の気持ちって、そういうもんなんだぞ。
>>> 俺から恋をとってしまったら、何が残るんだ。三度三度メシを食って、屁をこいて、クソをたれる機械、つまりは、造フン機だよ。
寅次郎「さくら」
さくら「なあに?」
寅次郎「やっぱり、二枚目はいいなあ、ちょっぴり焼けるぜ」
↑ 上へ
◆第31作「旅と女と寅次郎」から
>>> そんな人生もあるのねぇ。明日何するかは明日になんなきゃ決まらないなんて、いいだろうなぁ。(流行歌手はるみの言葉)
◆第32作「口笛を吹く寅次郎」から
>>> でも、だけどね。レントゲンだってね、ニッコリ笑って映したほうがいいの。だって明るく撮れるもの、そのほうが。
◆第34作「寅次郎真実一路」から
ふじ子「奥様にどうぞよろしく」
寅次郎「そういう面倒なものは、持ち合わせちゃおりません」
ふじ子「あら、ごめんなさい」
寅次郎「いいえ、へへ、それじゃ、ごめんなすって」
>>> 自分の醜さに苦しむ人間は、もう醜くはありません。(博の発言)
◆第35作「寅次郎恋愛塾」から
あけみ「寅さん、かわいそう。あたし、今のつまんない亭主と別れて一緒になってあげようか。本当よ、あたし、人妻になって初めて寅さんの魅力わかったんだもん」
寅次郎「あけみ、お前のその優しい気持ちは本当に嬉しいよ。だけどな、俺は、お前、出来ない相談だよ」
あけみ「どうして?」
寅次郎「だってさ、お前と俺が一緒になったら、このタコのこと、お父さんといわなきゃいけないだろ、俺それイヤ、俺死んでもイヤ、それ」
若 菜 「秀才よ、法律の勉強してるの」
寅次郎 「へーえ、悪いことでもしようっていうのか?」
>>> お前、遠山の金四郎を知らないの? ほう、驚いた、裁判官になるっていう男が、あんな偉い男を。
◆第36作「柴又より愛をこめて」から
>>> オレ、分かるよ、あけみさんの気持ち・・・。おじさんのやることは、どんくさくて、常識外れだけど、世間体なんて全然気にしないもんな。人におべっか使ったり、お世辞言ったり、おじさん絶対にそんなことしないもんな。(満男の言葉)
真知子「首すじのあたりがどこか寂しげなの。生活の垢がついていないというのかしら」
寅次郎「それは、ネクタイをしていないせいじゃないですか。ダボシャツだから」
◆第38作「知床慕情」から
>>> 昔から早メシ早クソ、芸のうちといって、私など座ったと思ったらもうケツを拭いております。この間などはクソをする前にケツを拭いてしまって、親せき中で大笑い。
>>> 行っちゃいかん。・・・・・・俺が行っちゃいかんと言うわけは、俺が・・・、俺が、惚れているからだ。
(順吉が悦子に)
◆第39作「寅次郎物語」から
>>> 働くってのはな、博みたいに女房のため子供のために額に汗して、真黒な手して働く人達のことをいうんだよ。
満 男「人間は何のために生きてるのかな」
寅次郎「何て言うかな、ほら、あ-生まれて来てよかったなって思うことが何べんかあるだろう、そのために人間生きてんじゃねえのか」
◆第40作「寅次郎サラダ記念日」から
>>> 寅さんが早稲田の杜に現れて やさしくなった午後の教室
>>> 愛ひとつ 受け止めかねて帰る道 長針短針重なる時刻
>>> 寅さんが この味いいねと言ったから 師走六日はサラダ記念日
◆第42作「ぼくの伯父さん」から
>>> まず片手にさかずきを持つ。酒の香りを嗅ぐ。
酒のにおいが鼻の芯にジーンとしみとおった頃、おもむろに一口飲む。
さあ、お酒が入っていきますよということを五臓六腑に知らせてやる。
そこで、ここに出ているこのツキダシ、これを舌の上にちょこっと乗せる。
これで、酒の味がぐーんとよくなる。
それから、ちびりちびり、だんだん酒の酔いが体にしみとおってゆく。
(満男に酒の飲み方を教える場面)
満男 「不潔なんだよ。だって俺、ふと気づくとあの子の唇とか胸とか、そんなことばっかり考えているんだよ。俺に女の人を愛する資格なんかないよ」
寅 「お前は正直だな、えらい」
◆第44作「寅次郎の告白」から
>>> おじさん、世の中でいちばん美しいものが恋なのに、どうして恋をする人間はこんなに無様なんだろう。今度の旅でぼくが分かったことは、ぼくにはもうおじさんのみっともない恋愛を笑う資格なんかないということなんだ。いや、それどころか、おじさんの無様な姿がまるで自分のことのように哀しく思えてならないんだ。
だから、もうこれからはおじさんを笑わないことに決めた。だって、おじさんを笑うことは、ぼく自身を笑うことなんだからな。(満男の言葉)
>>> あのおじさんはね、高い崖の上に咲いている花のように、手の届かない女の人には夢中になるんだけど、その人がおじさんを好きになると、あわてて逃げ出すんだよ。今まで何べんもそんなことがあって、そのたびに俺のお袋泣いてたよ、バカねお兄ちゃんは、なんて。・・・・・・つまりさ、きれいな花が咲いているとするだろう、その花をそっとしておきたいなあという気持ちと、奪い取ってしまいたいという気持ちが、男にはあるんだよ。おじさんはどっちかというと、そっとしておきたい気持ちのほうが強いんじゃないか。 (満男の言葉)
◆第45作「寅次郎の青春」から
寅次郎「何だ、それじゃお前泉ちゃんを愛していないのか」
満男 「今の僕の気持ちを、愛してるなんてそんな簡単な言葉で言えるもんか」
泉 「あの鐘がチャリンと鳴って、ドアが開いて、いつかすてきな男の人が現れるのを待ってるんだって、あのおばさん」
満男「へーえ、ロマンチックだなあ」
泉 「満男さんは、女の人にそんなふうに待っていてほしい?」
満男「え?」
泉 「私、そうは思わない。幸せが来るのを待つなんて嫌。第一、幸せが男の人だなんて考え方も嫌い。幸せは自分で掴むの。それがどんなものかわからないけど、ああこれが幸せだというものを、私の手で掴むの。待つなんて嫌」
◆第48作「寅次郎紅の花」から
>>> 格好なんて悪くったっていいから、男の気持ちをちゃん伝えてほしいんだよ、女は。
だいたい男と女の間っていうのは、どこかみっともないもんなんだ。後で考えてみると、顔から火が出るようなはずかしいことだってたくさんあるさ。でも愛するってことはそういうことなんだろ、きれいごとなんかじゃないんだろ。(リリーの言葉)
寅さん口上
櫻って字はね。二階(貝)の女が気(木)にかかる・・・
結構毛だらけ、猫灰だらけ。尻(シリ/ケツ)のまわりはクソだらけ。
出物、腫れ物、所嫌わず・・・
あたしゃ早いんだよ。早飯早ぐそ芸の内ってね。見せたいくらいだな。座ったと思ったらペロッとケツ拭いちゃうから。
わたくし、生まれも育ちも東京葛飾柴又です。姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します。 皆様ともども冥利ジャンズ高鳴る大東京に仮の住まいまかりあります。 不思議な縁持ちまして、たった一人の妹のために、粉骨砕身、バイ(商売)に励もうと思っております。 西に行きましても東に行きましても、とかく土地土地のお兄貴(あにぃ)さんお姐(あねぇ)さんにご厄介かけがちな若僧でござんす。 以後見苦しき面体、お見知りおかれまして、恐惶(きょうこう)万端ひきたって、宜しくお頼み申します。
ヤケのヤンパチ、日焼けのナスビ、色は黒くて食いつきたいが、あたしゃ入れ歯で歯が立たないよ。
カドは一流デパート、赤木屋黒木屋白木屋さんで、紅白粉(おしろい)つけたおねえちゃんから、くださいちょうだいでいただきますと、五百が六百くだらない品物ですが、今日はそれだけくださいとはいいません。 なぜかと言いますと、神田は六法堂という書店がわずか三十万円の税金で、泣きの涙で投げ出した品物です。 四百、三百、二百、どうだ百両だぁ。どうだぁ。これでも買わない?畜生!よし、もうこうなったら浅野匠の上じゃないけど、腹切ったつもりだ。 どうだい、よし、こうまけて、こうまけて、まかった、お前らこれ持ってけ、だめ?帰れババァ。 よし、こうなったらもうおら死んだつもりだよ、火つけちゃうぞ。おじさん持ってけ!
あれぇ、この野郎、てめえ、さくらに惚れてやがんな。この野郎、女だとか愛だとかハチの頭だとかアリのキンタマだとかごたく並べやがってぇ。おい、てめえ、要するに、さくらのこと女房にもらいてえんだろう。
大したもんだ、カエルのしょうべんだね。
四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水臭いときた。どうだ、おい、よーし、まけちゃおう。 まかったつむじが3つ、七つ長野の善光寺、八つ谷中の奥寺で、竹の柱に萱の屋根、手鍋下げてもわしゃいとやせぬ。 信州信濃の新そばよりも、あたしゃあなたのそばがよい。 あなた百までわしゃ九十九まで、ともにシラミのたかるまで、ときやがった。どうだ畜生! さあこれで買い手がなかったら、あたしゃ稼業3年の患いと思って諦めます。
何ていう寅さんも最後の作品では癌で蝕まれた体で「カット」の連続
見ていて痛々しい
渥美さん曰く「人間何してきたんだかわかんないほうがいい 寅さんは特にね」
「舞台はもうできない アップがないからね 寅さんだけで精一杯」
そんな寅さんの中で心に残った面白いことは
「おい!トラ トラ そんなところでクソしてるんじゃない!」と博
すると寅さんは「おい 博 いくら親戚と言ってもな呼び捨てにするのか!」
「いや兄さんの事を呼び捨てなんてしませんよ」と博
「じゃなにかい? おれは犬なのかえー博!」
もう一つ寅さんに贈られてきたメロンをとらやの人たちが寅さんの分を勘定に入れずそこへ帰ってきた
寅さんが「じゃ、おれもご相伴にあずかるか!」と
そうしたらとらや一同がお膳の下にメロンを隠した
寅さん「今メロン隠しやがったな!このメロンはな俺に送ってくれたメロンなんだよ」
「本当だったらな じゃあお兄ちゃんがいただいたメロンみんなであがりましょうか!お兄ちゃん有難う」と
博は「スイマセンね兄さん」というのが当たり前なのにお前お膳の下に今隠しやがったろ
このやろー 「おまえらの汚いツバキのついたのを食べなきゃならねーんだ!」
「俺はなメロンのことを言ってんじゃないんだよ この家の人の心の在り方についていってんだよ
いいやいいや寅になんか茄子の二本もあてがってとけばいい」そうしたらリリーが寅さんに反撃
寅さんは「いいよ!外言ってパーっとやるからよ」と出ていってしまいました
そんな寅さんみんなもこの時代「心の在り方を寅さんのようにしたら」アベノミクスなんてありませんよね
桜が咲いております。懐かしい葛飾の桜が今年も咲いております・・・・・・。思い起こせば二十年前、つまらねぇことで親爺と大喧嘩、頭を血の出るほどブン殴られて、そのまんまプイッと家をおん出て、もう一生帰らねえ覚悟でおりましたものの、花の咲く頃になると、きまって思い出すのは故郷のこと。・・・・・ガキの時分、鼻たれ仲間を相手に暴れまわった水元公園や、江戸川の土手や、帝釈様の境内のことでございました。風の便りに両親(ふたおや)も、秀才の兄貴も死んじまって、今はたった一人の妹だけが生きていることは知っておりましたが、どうしても帰る気になれず、今日の今日まで、こうしてご無沙汰に打ち過ぎてしまいましたが、今こうして江戸川の土手の上に立って、生まれ故郷を眺めておりますと、何やらこの胸の奥がポッポッと火照ってくるような気がいたします。そうです、私の故郷と申しますのは、東京葛飾の柴又でございます。
>>> おまえ頭が悪いな、俺とお前は別の人間だぞ、早え話が俺がイモ食えばテメエの尻からプッと屁が出るか?
>>> ハチの頭だとかアリのキンタマだとかゴタク並べやがって、おいテメエ、要するにさくらのことを嫁に貰いてえんだろう?
>>> 博からさくらへの愛の告白
「僕の部屋から、さくらさんの部屋の窓が見えるんだ。朝、目を覚まして見てるとね、あなたがカーテンを開けてあくびをしたり、布団を片づけたり、日曜日なんか楽しそうに歌をうたったり、冬の夜、本を読みながら泣いていたり。あの工場に来てから三年間、毎朝あなたに会えるのが楽しみで、考えてみれば、それだけが楽しみでこの三年間を・・・。
僕は出て行きますけど、さくらさん、幸せになってください、さようなら」
◆第2作「続 男はつらいよ」から
>>>
散歩先生 「俺が我慢ならんことは、お前なんかより少しばかり頭がよいばかりに、お前なんかの何倍もの悪いことをしている奴がウジャウジャいることだ・・・・・・。こいつは許せん、実に許せん馬鹿どもだ、寅」
寅次郎 「私より馬鹿がおりますか」
>>>
寅次郎 「バカヤロ、あのお嬢さんがラーメンなんか作るかい、手前の考えは貧しいからいけねえよ」
源 公 「そいじゃ、何作るんだよ」
寅次郎 「決まってるじゃねえか、スパゲッチーよ」
◆第3作「フーテンの寅」から
>>> インテリというのは自分で考えすぎますから、そのうち俺は何を考えていたんだろうなんて分かんなくなってくるわけです。つまりテレビでいえば、裏の配線がガチャガチャに込み入っているわけなんですよね。ええ、その点私なんか線が1本だけですから、まあ、言ってみりゃ空っぽといいましょうか、叩けばコーンと澄んだ音がしますよ、殴ってみましょうか?
>>> 女にはね、たしなみが必要なんだよな。亭主の前でもってさ、よくバタバタあたしオシッコに行こう、なんて、おばちゃんよくやってるじゃない。あ、漏っちゃうなんて。そら、行っちゃいけねえとは言わねえよ。行ってもいいんだよ。ただ、男の気がつかねえように、すーっと用を済まして帰ってくるっていう、そうしたたしなみがほしいって言っているわけだ。
◆第5作「望郷篇」から
>>> 上等上等、あったかい味噌汁さえありゃ充分よ。あとはおしんこと海苔と鱈子(たらこ)一腹ね、辛子のきいた納豆、これにはね、生ネギを細かく刻んでたっぷり入れてくれよ。あとは塩こんぶに生玉子でもそえてくれりゃ、もう何もいらねえよ、おばちゃん。
↑ 上へ
◆第7作「奮闘篇」から
>>> 夏になったら、鳴きながら、必ず帰ってくるあの燕(つばくろ)さえも、何かを境にぱったり姿を見せなくなることもあるんだぜ。
◆第8作「寅次郎恋歌」から
>>> 例えば、日暮れ時、農家のあぜ道を一人で歩いていると考えてごらん。庭先にりんどうの花がこぼれるばかりに咲き乱れている農家の茶の間、灯りがあかあかとついて、父親と母親がいて、子供達がいて賑やかに夕飯を食べている。これが・・・・・・これが本当の人間の生活というものじゃないかね、君。
>>> はぁー、いやだやだ。俺は横になるよ。オイまくら、さくら取ってくれ、いや違うな、さくら、枕取ってくれ。(おいちゃんの言葉)
◆第9作「柴又慕情」から
>>> 風呂なんざなくたっていいんだ、俺は銭湯が好きだからな。「ひとっ風呂浴びてらっしゃいな、その間に晩ご飯の支度しておくからさ」 タオル、洗面器とシャボン、「どうせあんた細かいお金なんか持たないんだろ」 40円ぽんと貰って、「じゃ行ってくらあ」「行ってらっしゃい」、やがて俺は風呂へ行く。帰ってくるとご飯になる。何、別におかずなんて大したものはいらねえ、どうせ家賃は大したことないんだから。おつまみに刺身一皿、あとは煮しめと吸い物、それに卵焼きにおひたしか何か・・・・・・お銚子を3本ぐらいすっと飲む、昼間の疲れでウトウトする、おかみがすっとそれを見て、「さくら、枕を持ってきておあげ。ついでに腰のあたりでも揉んであげなよ」 さくらっていうのはその下宿の娘だけどね。・・・・・・何だ、その面は?
◆第10作「寅次郎夢枕」から
寅次郎 「おばちゃん、今夜のおかずは何だい?」
つ ね 「お前の好きなお芋の煮っころがし」
寅次郎 「貧しいねぇ うちのメニューは。もうちょっと何かこう 心の糧になるおかずはないかい、例えば厚揚げとか筍とかよ」
>>> いいか、恋ってのはそんな生易しいもんじゃないんだぞ。
飯食うときだってウンコする時だって、いつもその人のことで頭がいっぱいよ。何かこう、胸の中が柔らかぁくなるような気持ちでさ。ちょっとした音でも、例えば、千里先で針がポトンと落ちても、アーッとなるような、そんな優しい気持ちになって、もう、その人のためなら何でもしてやろう、命だって惜しくない、「ねぇ寅ちゃん、私のために死んでくれない?」って言われたら、ありがとう、と言ってすぐにも死ねる、それが恋というものじゃないだろうか・・・・・・。どうかね、社長?
>>> 寅次郎に縁談が来て、おいちゃんが相手の家族に電話で説明する場面
えーと、本人の勤務先は……つまり何といいますか、セ、セールスマンでございます。え・・・・・・え・・・・・・。柴又尋常小学校を卒業致しまして、それから葛飾商業を、ま、こちらのほうは少し早めに卒業しまして。は、それから後? も、もちろん東大なんかじゃございません。ええ、早稲田大学でも慶応でもございません。つまり何といいますか、つまり私どもの教育方針と申しますのは、その・・・・・・じ、実力主義でございまして・・・・・・え、そうですが、・・・・・・はい・・・・・・、くだらない大学なんぞ出るよりも、その方がよっぽど・・・・・・早めに社会に出しまして、みっちり鍛えましたわけで・・・・・・。え、趣味? 趣味は・・・・・・ああ、趣味は旅行でございます。当人何よりも旅行が好きです。年がら年中旅行しております、ハイ・・・・・・。あ、身体は? それだけは頑丈そのものでして、病気一つしたことがございません。
↑ 上へ
◆第11作「寅次郎忘れな草」から
>>> 言ってみりや、リリーも俺と同じ旅人よ。見知らぬ土地を旅する間にゃ、それは人には言えねえ苦労があるのよ・・・・・・。例えば、夜汽車の中、いくらも乗っちゃいねえその客もみんな寝ちまって、なぜか俺一人いつまでたっても眠れねえ・・・・・・。真っ暗な窓ガラスにホッベタくっつけてじっと外を眺めているとよ、遠くに灯りがポツンポツン・・・・・・。あ-、あんな所にも人が暮らしているんだなあ・・・・・・。汽笛がポーツ、ポーツ・・・・・・、ピーツ。そんな時よ、そんな時、なんだかわけもなく悲しくなって、涙がポロポロと出たりするのよ。そういうことってあるだろう、おいちゃん。
リリー 「あたし達みたいな生活ってさ、普通の人達とは違うんだよね。それもいい方に違うんじゃなくて、何て言うのかなぁ、あってもなくてもどうでもいいみたいな、つまりさ、アブクみたいなもんだね」
寅次郎 「うん、アブクだよ。それも上等なアブクじゃねぇや。風呂の中でこいた屁じゃねぇけども、背中の方に回ってパチンだ」
>>> なぁ~に言ってんだい。四角いカバンしか持ってねぇじゃないか、何が入ってるか知らないけど。(おいちゃんの言葉)
◆第13作「寅次郎恋やつれ」から
>>> 俺あ、昔からあれ不思議なんだけどさ、どうして風もねえのに波は立つのかな。沖のほうで誰かがこんな大きな洗濯板で、わいわいこうやって波を立てているんじゃないかな。
>>> おい、さくら、歌子ちゃんがもう今すぐ来るってよ! おい、おじちゃん、なにボヤッとしているんだよ。さくら、さくら、そのなんだ。あ、そう、そう、お茶いれて、おばちゃん、ぼやっとしてないで、料理を作る、料理を。おじちゃん、そんな所で、バカみたいに口あいてるんじゃないよ、歌子ちゃんがこれから長旅で疲れて帰ってくるんだから、二階へ、スーッと行って、ふとんをサーッと敷いてやる、いいね。え、博、お前、風呂わかせ、風呂、熱くわかしてね。よーし、あ、大切なことを忘れてた。ちょっとみなさん、ちょっと集まってください。みなさんも先刻ご承知のとおり、歌子さんは、ごく最近、夫を亡くされました。だからまかり間違っても夫とか、彼とか、ダーリンとか、旦那とか、その他のことは一切口走らないでください。わかったね。ことに、お前は女だから、そうだ、さくら、お前の亭主は死んだことにしろ、博、お前は即刻死ね。
歌子 「お父さん」
父 「うん?」
歌子 「長い間、心配かけてごめんなさい」
父 「いや、なにも、君が謝ることはない。謝るのは多分私のほうだろう。私は口がへただからなんというか、誤解されることが多くてな。私は君が自分の道を、自分の信ずる道を選んで、その道をまっすぐに進んでいったことがうれしく、私は、ほんとうにうれしく・・・」
◆第15作「寅次郎相合傘」から
リリー「幸せにしてやる? 大きなお世話だ。女が幸せになるには男の力を借りなきゃいけないとでも思ってんのかい、笑わせないでよ」
寅 「でも、女の幸せは男次第じゃねえのか」
リリー「へーえ、初耳だねえ。私、今まで一度だってそんなふうに思ったことはないね。もしあんた方がそう思ってんだとしたら、それは男の思いあがりってなもんだよ」
寅 「お前も可愛げがない女だな」
リリー「女がどうして可愛くなくっちゃいけないんだい。寅さん、あんたそんなふうだから年がら年じゅう女に振られてばかりいるんだよ」
>>> そうそう、俺なんか定年ありゃしねえ。あれはどうやったらいいんだ、区役所に申請すんのか?
◆第16作「葛飾立志篇」から
>>> いいかい? あーいい女だなあと思う。その次には話してみたいと思う。その人のそばにいるだけで、何かこう気持ちがやわらかくなって、あーこの人を幸せにしてあげたいなーと思う。この人の幸せのためなら俺はどうなってもいい、死んだっていい、とそんなふうに思うようになる。それが愛よ、違うかい?
◆第17作「寅次郎夕焼け小焼け」から
>>> 私、近頃よくこう思うの、人生に後悔はつきものじゃないかしらって。
ああすればよかったなあという後悔と、もう一つは、どうしてあんなことをしてしまったんだろうという後悔・・・・・・。(志乃の言葉)
>>> もしも警察が来て俺のことを聞かれても、縁を切ったというんだぞ。さもないと満男が犯罪人の甥になってしまう。
>>> あんな男の人の気持ち初めてや。もう200万円なんてどうでもいい、寅さんの気持ちだけでウチは幸せや。(ぼたんが泣きじゃくりながら)
◆第18作「寅次郎純情詩集」から
寅次郎 「・・・悪かった。何しろ、あの時は俺も、若かったから・・・」
おいちゃん 「何が若かっただ、バカ。あれは先月のことだ!」
>>> まぁ、こう人間がいつまでも生きていると、陸(おか)の上がね、人間ばっかりになっちゃう。で、うじゃうじゃ、うじゃうじゃ。面積が決まっているから。で、みんなでもって、こうやって満員になって押しくらまんじゅうしているうちに、ほら、足の置く場所がなくなっちゃって、で、隅っこにいるやつが、お前どけよと言われて、あーっなんて海の中へ、バシャンと落っこって、アップアップして、助けてくれー、なんてね死んじゃうんです。結局、そういうことになるんじゃないんですか。
(綾に「人はなぜ死ぬんでしょうね?」と聞かれて)
>>> 最後の床についたときもね、寅さんに逢える日が来ることを楽しみにしていたのよ。意識がなくなりかける時にね、私が耳もとで「お母様、早くよくなって寅さんに逢いにいきましょうね」、そう言ったらお母様は、うれしそうな顔してコックリうなずいたわ。誰にも愛されたことのない悲しい生涯だったけど、でも最後に、たとえひと月でも寅さんていう人が傍にいてくれたことで、お母様はどんなに幸せだったか、私にはよく分かるの。
◆第19作「寅次郎と殿様」から
>>> 人間の運命なんて分からないもんな。たとえばの話、この敷居をまたいだ時に、いい女にバッタリ会って、その女と所帯持っちゃうかもしれねえもんな。
◆第20作「寅次郎頑張れ!」から
>>> そりや好きな女と添いとげられれば、こんな幸せはないけどさ。しかしそうはいかないのが世の中なんだよ。みんな我慢して暮らしてるんだから、男だって、女だって。
>>> やっぱり食事はレストランがいいな。けちけちしないでデザートも取ってやれよ。今の若い娘はよく食うからねえ。あのガラスの器に入ったあれ、何て言うんだ、アイスクリームをこう、ねじりウンコのように山盛りにしたヤツ、あれなんか一口でペロッと食べちゃってさ。そこで二人は人影の少ない公園に行く。じっと娘の目を見る。お前が好きなんだよという思いを込めて娘の目を見る。そうすれば必ずお前の気持ちは通じるんだ。そこだよ、それで最後のセリフを言う。アイ・ラブ・ユー。できるか、青年。
↑ 上へ
◆第25作「寅次郎ハイビスカスの花」から
寅次郎「おや、どこかでお目にかかったお顔ですが。姉さん、何処のどなたです?」
リリー「以前、お兄さんにお世話になった女ですよ」
寅次郎「はて?こんないい女をお世話した覚えはございませんが」
リリー「ございませんか!この薄情者!」
寅次郎「何してるんだよお前、こんなところで」
リリー「商売だよ。お兄さんこそ何してんのさ、こんなところで」
寅次郎「俺は、リリーの夢を見てたのよ」
>>> 生きている間は夢だというのは、確かセックスピアの言葉でしたな。(御前様の言葉)
>>> 男に食わしてもらうなんてまっぴら。でも、あんたと私が夫婦だったら別よ。(リリーの言葉)
さくら「どうしたの、そんなこと言われて」
寅 「そら、オレ照れくさいからよ、冗談じゃねえよ、お互い所帯なんか持つ柄じゃねえだろう、エヘヘって笑ったのさ。そうだよ、そしたら、そしたらリリーのやつ・・・」
さくら「リリーさんが、どうかしたの?」
寅 「悲しそうな声してな、『あんたには女の気持ちなんて分かんないのね』。そう言って涙こぼしてたなあ」
さくら「リリーさんの愛の告白ね」
寅 「おい、バカなこと言うなよお前、まじめな顔して。満男が聞いているよ、エヘヘ」
博 「兄さん、笑い事じゃないんだ。リリーさんがその時どんな気持ちでいたか、分からないんですか?」
つね 「そうだよ、女にそこまで言わせてさ」
◆第26作「寅次郎かもめ歌」から
>>> こういうことはな、ゆとりを持たせなきゃいけないんだ。早めに行ってお茶の一杯も飲んで気を落ちつけて。あ、そうだ。縁起を担ぐようだけど、今日一日、落ちるとか、すべるとか転ぶとか、その手の言葉を口にするな、いいか。
願書はバッグにしまっておけ、落とすといけないから。あ、いけねえ、落とすなんて言っちゃった、つい口がすべっちゃって、あ、また言っちゃった。
◆第27作「浪花の恋の寅次郎」から
>>> そりゃ今は悲しいだろうけどさ。月日がたてばどんどん忘れて行くものなんだよ。忘れるってことは本当にいい事だよ。
◆第28作{寅次郎紙風船」から
>>> 御前様にお尋ねします。
亭主に死に別れた女房が他の男と再婚する場合に、やはり一周忌までは待つべきでしょうか。それとも三回忌まではがまんしなきゃならないもんでしょうか。そのへんのところは、お経には何と書いてありますか。
>>> 寅の小学校時代の同級生が、酒に酔った寅に「ケチなクリーニング屋」とくさされて――
いいか寅、俺にだってお得意がいるんだよ、お得意が。俺が洗ったシーツじゃなきゃ困る、俺がアイロンかけたワイシャツじゃなきゃ嫌だ、そう言ってくれる人が何人もいるんだよ。商売っていうのはそういうものなんだ。
>>> いい女が泣くと笛の音に聞こえるなあ。おばちゃんが泣くと夜鳴きそばのチャルメラに聞こえるんだよ。
◆第29作「寅次郎あじさいの恋」から
寅次郎「よう、いろいろ世話になったな、ねえちゃん」
かがり「もうお帰りどすか」
寅次郎「ああ」
かがり「今、朝御飯の支度できますけど」
寅次郎「ああ、それで豆腐買いに行ってくれたのかい、ああ、それは悪かったなあ。いやね、ちょっと夕べやりすぎちゃって、へっへ、具合が、また今度来たとき御馳走になるよ、うん、あばよ」
寅次郎「あっ、ええと、お、おれ、今どこに居るんだっけ?」
かがり「ここは五条坂いうとこですけど」
寅次郎「五条、あっ、じゃ、こっちが四条でこっちが七条ということになるわけか。はは、京都は道が分かりやすくていいやな、じゃ」
寅次郎「じゃあ、かがりさん、世話になったな」
かがり「寅さん」
寅次郎「えっ」
かがり「もう会えないのね」
寅次郎「・・・・・・いやあ、ほら、風がな、風がまた丹後の方に吹いてくることもあらあな。元気でなあ!」
>>> 寅さん、この間は、ごめんなさい。
私は、とても恥ずかしいことをしてしまいましたけど、
寅さんならきっと許してくださると思います。
今は、夏休みで私も機織りの合間に、民宿の手伝いに借り出され忙しい毎日です。
母も娘も元気で手伝ってくれています。
寅さんは、今どこかしら?相変わらず旅の空かしら?
風はどっちに向かって吹いてますか?丹後のほうには向いてませんか?
今度、寅さんが来たら、この間のような間に合わせでなく、
美味しい魚の料理を腕を振るってお腹一杯食べさせてあげたいと思います。
寅さんの楽しい話を聞きながら・・・・・・。(かがりからの手紙)
◆第30作「花も嵐も寅次郎」から
>>> あいつがしゃべれねえーてのは、あんたに惚れてるからなんだよ。今度あの娘(こ)に会ったら、こんな話しよう、あんな話もしよう、そう思ってウチを出るんだよ。いざその子の前に座ると、ぜーんぶ忘れちゃうんだね。で、馬鹿みてーに黙りこくってんだよ。そんなてめえの姿が情けなくって、こー、涙がこぼれそうになるんだよ。な、女に惚れてる男の気持ちって、そういうもんなんだぞ。
>>> 俺から恋をとってしまったら、何が残るんだ。三度三度メシを食って、屁をこいて、クソをたれる機械、つまりは、造フン機だよ。
寅次郎「さくら」
さくら「なあに?」
寅次郎「やっぱり、二枚目はいいなあ、ちょっぴり焼けるぜ」
↑ 上へ
◆第31作「旅と女と寅次郎」から
>>> そんな人生もあるのねぇ。明日何するかは明日になんなきゃ決まらないなんて、いいだろうなぁ。(流行歌手はるみの言葉)
◆第32作「口笛を吹く寅次郎」から
>>> でも、だけどね。レントゲンだってね、ニッコリ笑って映したほうがいいの。だって明るく撮れるもの、そのほうが。
◆第34作「寅次郎真実一路」から
ふじ子「奥様にどうぞよろしく」
寅次郎「そういう面倒なものは、持ち合わせちゃおりません」
ふじ子「あら、ごめんなさい」
寅次郎「いいえ、へへ、それじゃ、ごめんなすって」
>>> 自分の醜さに苦しむ人間は、もう醜くはありません。(博の発言)
◆第35作「寅次郎恋愛塾」から
あけみ「寅さん、かわいそう。あたし、今のつまんない亭主と別れて一緒になってあげようか。本当よ、あたし、人妻になって初めて寅さんの魅力わかったんだもん」
寅次郎「あけみ、お前のその優しい気持ちは本当に嬉しいよ。だけどな、俺は、お前、出来ない相談だよ」
あけみ「どうして?」
寅次郎「だってさ、お前と俺が一緒になったら、このタコのこと、お父さんといわなきゃいけないだろ、俺それイヤ、俺死んでもイヤ、それ」
若 菜 「秀才よ、法律の勉強してるの」
寅次郎 「へーえ、悪いことでもしようっていうのか?」
>>> お前、遠山の金四郎を知らないの? ほう、驚いた、裁判官になるっていう男が、あんな偉い男を。
◆第36作「柴又より愛をこめて」から
>>> オレ、分かるよ、あけみさんの気持ち・・・。おじさんのやることは、どんくさくて、常識外れだけど、世間体なんて全然気にしないもんな。人におべっか使ったり、お世辞言ったり、おじさん絶対にそんなことしないもんな。(満男の言葉)
真知子「首すじのあたりがどこか寂しげなの。生活の垢がついていないというのかしら」
寅次郎「それは、ネクタイをしていないせいじゃないですか。ダボシャツだから」
◆第38作「知床慕情」から
>>> 昔から早メシ早クソ、芸のうちといって、私など座ったと思ったらもうケツを拭いております。この間などはクソをする前にケツを拭いてしまって、親せき中で大笑い。
>>> 行っちゃいかん。・・・・・・俺が行っちゃいかんと言うわけは、俺が・・・、俺が、惚れているからだ。
(順吉が悦子に)
◆第39作「寅次郎物語」から
>>> 働くってのはな、博みたいに女房のため子供のために額に汗して、真黒な手して働く人達のことをいうんだよ。
満 男「人間は何のために生きてるのかな」
寅次郎「何て言うかな、ほら、あ-生まれて来てよかったなって思うことが何べんかあるだろう、そのために人間生きてんじゃねえのか」
◆第40作「寅次郎サラダ記念日」から
>>> 寅さんが早稲田の杜に現れて やさしくなった午後の教室
>>> 愛ひとつ 受け止めかねて帰る道 長針短針重なる時刻
>>> 寅さんが この味いいねと言ったから 師走六日はサラダ記念日
◆第42作「ぼくの伯父さん」から
>>> まず片手にさかずきを持つ。酒の香りを嗅ぐ。
酒のにおいが鼻の芯にジーンとしみとおった頃、おもむろに一口飲む。
さあ、お酒が入っていきますよということを五臓六腑に知らせてやる。
そこで、ここに出ているこのツキダシ、これを舌の上にちょこっと乗せる。
これで、酒の味がぐーんとよくなる。
それから、ちびりちびり、だんだん酒の酔いが体にしみとおってゆく。
(満男に酒の飲み方を教える場面)
満男 「不潔なんだよ。だって俺、ふと気づくとあの子の唇とか胸とか、そんなことばっかり考えているんだよ。俺に女の人を愛する資格なんかないよ」
寅 「お前は正直だな、えらい」
◆第44作「寅次郎の告白」から
>>> おじさん、世の中でいちばん美しいものが恋なのに、どうして恋をする人間はこんなに無様なんだろう。今度の旅でぼくが分かったことは、ぼくにはもうおじさんのみっともない恋愛を笑う資格なんかないということなんだ。いや、それどころか、おじさんの無様な姿がまるで自分のことのように哀しく思えてならないんだ。
だから、もうこれからはおじさんを笑わないことに決めた。だって、おじさんを笑うことは、ぼく自身を笑うことなんだからな。(満男の言葉)
>>> あのおじさんはね、高い崖の上に咲いている花のように、手の届かない女の人には夢中になるんだけど、その人がおじさんを好きになると、あわてて逃げ出すんだよ。今まで何べんもそんなことがあって、そのたびに俺のお袋泣いてたよ、バカねお兄ちゃんは、なんて。・・・・・・つまりさ、きれいな花が咲いているとするだろう、その花をそっとしておきたいなあという気持ちと、奪い取ってしまいたいという気持ちが、男にはあるんだよ。おじさんはどっちかというと、そっとしておきたい気持ちのほうが強いんじゃないか。 (満男の言葉)
◆第45作「寅次郎の青春」から
寅次郎「何だ、それじゃお前泉ちゃんを愛していないのか」
満男 「今の僕の気持ちを、愛してるなんてそんな簡単な言葉で言えるもんか」
泉 「あの鐘がチャリンと鳴って、ドアが開いて、いつかすてきな男の人が現れるのを待ってるんだって、あのおばさん」
満男「へーえ、ロマンチックだなあ」
泉 「満男さんは、女の人にそんなふうに待っていてほしい?」
満男「え?」
泉 「私、そうは思わない。幸せが来るのを待つなんて嫌。第一、幸せが男の人だなんて考え方も嫌い。幸せは自分で掴むの。それがどんなものかわからないけど、ああこれが幸せだというものを、私の手で掴むの。待つなんて嫌」
◆第48作「寅次郎紅の花」から
>>> 格好なんて悪くったっていいから、男の気持ちをちゃん伝えてほしいんだよ、女は。
だいたい男と女の間っていうのは、どこかみっともないもんなんだ。後で考えてみると、顔から火が出るようなはずかしいことだってたくさんあるさ。でも愛するってことはそういうことなんだろ、きれいごとなんかじゃないんだろ。(リリーの言葉)
寅さん口上
櫻って字はね。二階(貝)の女が気(木)にかかる・・・
結構毛だらけ、猫灰だらけ。尻(シリ/ケツ)のまわりはクソだらけ。
出物、腫れ物、所嫌わず・・・
あたしゃ早いんだよ。早飯早ぐそ芸の内ってね。見せたいくらいだな。座ったと思ったらペロッとケツ拭いちゃうから。
わたくし、生まれも育ちも東京葛飾柴又です。姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します。 皆様ともども冥利ジャンズ高鳴る大東京に仮の住まいまかりあります。 不思議な縁持ちまして、たった一人の妹のために、粉骨砕身、バイ(商売)に励もうと思っております。 西に行きましても東に行きましても、とかく土地土地のお兄貴(あにぃ)さんお姐(あねぇ)さんにご厄介かけがちな若僧でござんす。 以後見苦しき面体、お見知りおかれまして、恐惶(きょうこう)万端ひきたって、宜しくお頼み申します。
ヤケのヤンパチ、日焼けのナスビ、色は黒くて食いつきたいが、あたしゃ入れ歯で歯が立たないよ。
カドは一流デパート、赤木屋黒木屋白木屋さんで、紅白粉(おしろい)つけたおねえちゃんから、くださいちょうだいでいただきますと、五百が六百くだらない品物ですが、今日はそれだけくださいとはいいません。 なぜかと言いますと、神田は六法堂という書店がわずか三十万円の税金で、泣きの涙で投げ出した品物です。 四百、三百、二百、どうだ百両だぁ。どうだぁ。これでも買わない?畜生!よし、もうこうなったら浅野匠の上じゃないけど、腹切ったつもりだ。 どうだい、よし、こうまけて、こうまけて、まかった、お前らこれ持ってけ、だめ?帰れババァ。 よし、こうなったらもうおら死んだつもりだよ、火つけちゃうぞ。おじさん持ってけ!
あれぇ、この野郎、てめえ、さくらに惚れてやがんな。この野郎、女だとか愛だとかハチの頭だとかアリのキンタマだとかごたく並べやがってぇ。おい、てめえ、要するに、さくらのこと女房にもらいてえんだろう。
大したもんだ、カエルのしょうべんだね。
四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水臭いときた。どうだ、おい、よーし、まけちゃおう。 まかったつむじが3つ、七つ長野の善光寺、八つ谷中の奥寺で、竹の柱に萱の屋根、手鍋下げてもわしゃいとやせぬ。 信州信濃の新そばよりも、あたしゃあなたのそばがよい。 あなた百までわしゃ九十九まで、ともにシラミのたかるまで、ときやがった。どうだ畜生! さあこれで買い手がなかったら、あたしゃ稼業3年の患いと思って諦めます。
何ていう寅さんも最後の作品では癌で蝕まれた体で「カット」の連続
見ていて痛々しい
渥美さん曰く「人間何してきたんだかわかんないほうがいい 寅さんは特にね」
「舞台はもうできない アップがないからね 寅さんだけで精一杯」
そんな寅さんの中で心に残った面白いことは
「おい!トラ トラ そんなところでクソしてるんじゃない!」と博
すると寅さんは「おい 博 いくら親戚と言ってもな呼び捨てにするのか!」
「いや兄さんの事を呼び捨てなんてしませんよ」と博
「じゃなにかい? おれは犬なのかえー博!」
もう一つ寅さんに贈られてきたメロンをとらやの人たちが寅さんの分を勘定に入れずそこへ帰ってきた
寅さんが「じゃ、おれもご相伴にあずかるか!」と
そうしたらとらや一同がお膳の下にメロンを隠した
寅さん「今メロン隠しやがったな!このメロンはな俺に送ってくれたメロンなんだよ」
「本当だったらな じゃあお兄ちゃんがいただいたメロンみんなであがりましょうか!お兄ちゃん有難う」と
博は「スイマセンね兄さん」というのが当たり前なのにお前お膳の下に今隠しやがったろ
このやろー 「おまえらの汚いツバキのついたのを食べなきゃならねーんだ!」
「俺はなメロンのことを言ってんじゃないんだよ この家の人の心の在り方についていってんだよ
いいやいいや寅になんか茄子の二本もあてがってとけばいい」そうしたらリリーが寅さんに反撃
寅さんは「いいよ!外言ってパーっとやるからよ」と出ていってしまいました
そんな寅さんみんなもこの時代「心の在り方を寅さんのようにしたら」アベノミクスなんてありませんよね