僕の細道

石黒耀氏の講演

名古屋大学にて催された「死都日本」「震災列島」の著者である石黒耀氏の講演に出かけてきました。会場は満席で、折りたたみ椅子を追加しての盛況でした。

冒頭は、石黒耀氏の「耀」の字の解説から始まりました。
黒曜石の曜(耀)から、引用しているそうです。

次に火山との関わりに移り、著者である「死都日本」に出てくる火山の説明。そして、火山と、その被害の話に進み、日本は火山国であり、私たちはそこに住む民であることを自覚するよう言われていました。

火山災害は千年、万年単位の話となり、現実味が薄いので、もっと身近に感じられるであろう「東海地震」をテーマにして書かれたのが、「震災列島」だそうです。「死都日本」「震災列島」とも、日本の歴史において、自然科学が軽視された上で語られることが多く、事象の関連性に目を向けるべきと語られていました。

日本の国土は、火山により成り立ち、平野は沖積層によって形成され、その沖積層は地震に弱いことを忘れ、その上に都市文明を発展させてきた経緯を江戸時代の資料を基に説明され、時間単位の長い災害には、未対応の生活が現代であり、今をこれからを生きる私たちに問題提言されていました。

1816年のタンボラ火山の噴火により、世界は「火山の冬」を迎え、その年は夏の無い年だったそうです。それにより作物は生育不良になり、大国は植民地から食料をかき集めて自国民の生活を賄ったそうです。一方、略奪された植民地では無残な光景が繰り広げられたそうです。その時、インドからコレラが欧州に運び込まれ、コレラが大流行したそうです。日本でも中国経由で「安政のコレラ」と記録は残されています。

日本でも関東大震災により国は50億円を投入しました。それにより、財政悪化が始まり、一般生活も不景気になり、国家の政策は外へ目を向けられ、太平洋戦争へ発展していったそうです。近年では、1991年のピナツボ火山噴火により、2年後に日本でも冷夏となり、作物が大凶作になりました。

今回の講演は、自然災害と国家の関わりを、様々な事象を用いて説明され、面白かったです。丁度、私は「オスマン・トルコ帝国」の歴史小説を読み終えたばかりだったので、それにも、同様な事が書かれていました。トルコは地震国であり、当時の領土拡大も、自然災害をきっかけに進めていったようです。イタリアのポンペイ、ギリシャの都市文明など栄華盛衰のように、どの国も災害に被害を受けたり、逆に利用したりして、帝国を広げていったようです。

防災を違った観点から見られて、興味深い話が聞けました。

次回の名古屋大学防災セミナーは、
【日時】6月28日(火)17:30~
【場所】名古屋大学環境総合館レクチャーホールにて
【入場】無料(先着順)
【題名】「間違いだらけの地震防災」
     学ぶべき本当の教訓と今やらなくていけないこと
     講師:目黒公郎(東京大学教授)
【問い合わせ先】名古屋大学災害対策室 052-788-6038

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