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悪人

2011-04-10 | 邦画(あ・か)
 
 


  あらすじ 
土木作業員の清水祐一は、長崎の外れのさびれた漁村で
生まれ育ち、恋人も友人もなく、祖父母の面倒をみながら
暮らしていた。佐賀の紳士服量販店に勤める馬込光代は、
妹と二人で暮らすアパートと職場の往復だけの退屈な毎日。
そんな孤独な魂を抱えた二人が偶然出会い、刹那的な愛に
その身を焦がす。
だが祐一にはたったひとつ光代に話していない秘密があった。
彼は、殺人事件の犯人だったのだ…。
数日前、福岡と佐賀の県境、三瀬峠で福岡の保険会社の
OL・石橋佳乃の絞殺死体が発見された。事件当日の晩に
佳乃と会っていた地元の裕福な大学生・増尾圭吾に容疑
がかかり、警察は彼の行方を追う。
久留米で理容店を営む佳乃の父・石橋佳男は一人娘の死に
直面し、絶望に打ちひしがれる中、佳乃が出会い系サイト
に頻繁にアクセスし、複数の男相手に売春まがいの行為を
していたという事実を知らされる。
そんな折、増尾が警察に拘束されるが、DNA鑑定から犯人
ではないことが判明、やがて新たな容疑者として金髪の男、
清水祐一が浮上する。

【出演】
妻夫木聡、深津絵里
樹木希林、柄本明
岡田将生、満島ひかり



  感想  ※ネタバレ注意

吉田修一の同名小説を「フラガール」の李相日監督が映画化。
ある殺人事件の犯人と彼を愛する女の逃避行、引き裂かれていく
家族の姿を描く。音楽を「おくりびと」の久石譲が担当。
原作者の吉田修一は李相日と共同で脚本も手掛ける。




いったい、悪人とは何か?

この映画を観ると、悪人とは何かわからなくなる。
結果的には殺人を犯した祐一になるのかもしれないが、自分
勝手な被害者の女性・佳乃や、山に放り出した大学生の圭吾
殺人を犯した祐一を引き留め一緒に逃避行する光代。
どれも悪人と呼んでもいいのでは?と思ってしまいます。


冒頭の祐一の生活や、状況を映像で観ただけで、彼のおかれる
状況がすんなり入ってきてうまい。

高齢化が進み、閉鎖された漁村で、祖父母の面倒に自分を
犠牲にしている祐一。それが悪いわけではなく結果的に
彼のやさしさに甘えることしか出来ない家族。
彼を捨てた母親。
誰かに出会いたくて、出会い系サイトにアクセスする青年。
そして、別では欲にまみれた軽い人間関係から生まれる出会い。
日常に絶望しながらも、誰かとの出会いを渇望する女性。

この事件の影に見える現代社会の紙一重な人のつながりが
生んだ何とも言えない切ない映画でした。



そして、やはり加害者や被害者だけでなく、巻き込まれる
その家族たち。
殺された娘を思い、容疑者でもあった大学生の圭吾の前に
現れ、彼を殺そうとする父親。
しかし、目の前にしながらそれをしない。
いったい殺してしまった祐一と何が違うのか?

今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎるというセリフ
からのくだりが、作品のすべてを語っているように思えた。

確かに、大切な人がいない人間は、どこか冷めたような
失うものがある怖さもなく、欲しいものもない。
ボクも含め現代人って、あまり一喜一憂したり、夢というか
欲というか、それに敏感であったりしないのもリアルな現実
で、そのくせ、プライドだけは高い。
比較的、何でも手に入りやすい現代では、すでに欲が満た
されていることが多いからなのか。

善人がいるから悪人がいて、光があると影が出来るように
善悪というものは悪ばかり表に見られがちだけど、実の
ところ現代において本当の善人という人間自体が、もう
存在しないのかもしれない。
光があると影が出来るのが当たり前なのに、光がなく闇
だけが混在する矛盾した現代社会では、人間の心は行き先
を失ってしまっているのかもしれません。

などと考えてしまったり観終わった後も、無常感たっぷり
で、地震のことや色んな事を考えているうちに、久々に
落ちてしまいました(苦笑)。

映画の賞をたくさん獲った映画だけに、役者さんたちの演技は
みんな素晴らしかったです。



この妻夫木くんの泣いてるような笑顔が切なくて、彼の
もっと早く光代に出会っていたらという言葉や何でこんな
人間に生まれてきたんやろという言葉が辛い。

愛する人、好きな人が出来た時、日常のつまらないものも
素晴らしいものに思えるものです。
この時見た、景色は2人には素晴らしいものに映ったはず。


【評価】
 (4.5点/5点満点中)

 悪人 HP


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