遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

李克強来日 対日関係改善は習近平の決断

2018-05-18 23:58:58 | 中国 全般
 李克強首相が8~11日、初来日し「今まさに波風が過ぎ去り、晴天が現れ始めた」と述べ、両国関係が新段階に入ったとの認識を披露し、対日関係の改善へ踏み出した姿勢をアピールしました。
 この動きは、独裁体制を固めた習近平の決断によるものなのだそうです。
 理由は、最重視する米中関係で摩擦が強まっていることや、「一帯一路」政策が、最近各地で警戒感が拡大し、陰りが見えてきていることなどから、日本を引き寄せる必要性が高まっていることだと論じるのは、読売・北京の竹腰記者。
 
米中高まる緊張関係 習氏 日本引き寄せ (5/18 読売朝刊)

 中国の習近平政権が、対日関係の改善に積極的に動いている。最重視する米中関係で摩擦が強まっていることや、経済の安定維持のため、日本を引き寄せる必要性が高まっていることが背景にある。(北京 竹腰雅彦)

「一帯一路」後押し期待
 李克強首相の8~11日の初訪日は、習政権が現在、日中関係の「長期的かつ安定的な発展」に軸足を移したことを示す場となった。
李氏は滞在中、「今まさに波風が過ぎ去り、晴天が現れ始めた」と述べ、両国関係が新段階に入ったとの認識を披露した。共産党関係者は「(今の動きは)習氏が決断している」と話す。2期目政権を本格始動した習氏は、個人で強大な権力を握る「一極体制」を固めており、敏感な対日問題での裁量も強めたとみられている。
 
改善に踏み出した最大の要因は、対米関係に集中する必要性だ。中国は過去、対米関係をうまく処理すれば、日本は後からついてくるとの姿勢だった。だが、安倍政権の日米同盟強化に加え、先を読めない米トランプ政権から通商、台湾問題で揺さぶりをかけられ、米朝首脳会談も含め、関係の主導権を握られる状況が続く。
 外交筋は
「対米関係に注力するには、周辺環境の安定が重要」と指摘。最近のインドとの関係改善も同じ文脈とみる。経済分野では、自由貿易での日中協調で、トランプ政権の保護主義をけん制したい狙いもある。
 更に、習氏肝いりの巨大経済圏構想
「一帯一路」は、最近各地で警戒感が拡大し、陰りも見えている。日本の協力姿勢取り付けは、大きな後押しにつながる。経済の安定的成長を維持し、習氏が提唱する「質の高い経済発展」を進めるためにも、技術面や環境面の課題を克服して成長を遂げた日本の協力がより重要になっている。

日中の懸案そのまま
 一方で、
強引な海洋進出や軍拡、歴史問題など、曰中摩擦の根本的な要因は変わっていない。中国は今回、運用開始で合意した自衛隊と中国軍の偶発的衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」について、「東シナ海の平和と安定につながる」(外務省報道宮)と歓迎した。ただ当初は、その適用範囲を巡り、沖縄県・尖閣諸島の周辺を含めた境界の設定を求めていた。範囲を明示しないことで決着はしたが、日中間の「領土問題」を国際社会にアピールする狙いがあったのは明白だ。
 習政権は、尖閣周辺での中国公船の航行を常態化させ、3月には、国家の機構改革の一環で、公船を管轄する
中国海警局(海上保安庁に相当)を軍系統の武装警察部隊に編入すると発表した。「主権」主張のための、軍の示威行為も活発化させており、より強硬な行動に出る懸念は消えない。
 中国側が状況次第で歴史問題をカードにする姿勢も関係の安定を阻んできた。「互恵」に立脚した建設的な日中関係の構築が求められている。


 中国の程永華(チョンヨンファ)駐日大使が、李克強首相の来日を受け、読売新聞に寄稿した文。
 
中日関係より広大な互恵を 程永華・駐日大使 寄稿 (5/18 読売朝刊)

 中国の程永華(チョンヨンファ)駐日大使は先の李克強首相の来日を受け、読売新聞に「中日関係の新たな航程を開こう━━李克強総理の訪日成功の後に記す」と題する論考を寄稿した。(原文も日本語。*は読売新聞による注)

     ◇
 5月8日の羽田空港は小雨が降り、幾らか肌寒さを感じました。大勢が見守る中、李克強総理はタラップを下りて日程を開始しました。中国の総理の日本公式訪問は8年ぶりです。11日までの訪問は相互信頼を増進し、協力を深め、未来を開く旅で、平和、友好、協力事業を力強く後押しし、中日関係は再び正常な発展軌道に戻りました。
 中日関係は歴史が古く、長期の友好協力、利益の深い融合という基礎的条件を備えています。過去数年間、深刻な困難に遭遇し、紆余曲折を経てきましたが、両国各界の共同の努力のもと、改善プロセスは一歩一歩着実に進んでいます。
 李総理は中日平和友好条約締結40周年にあたり、日本の各界と共に条約締結の初心と条約の精神を改めて思い起こし、関係発展の経験と教訓を振り返り総括しました。それにとどまらず、より重要なのは、平和友好、協力、ウィンウィンに尽力する政治的共通認識を確認し、両国関係の将来の発展の新たな計画と展望を示したことです。
 双方は文化、社会保障、医療衛生、サービス貿易、第三国市場協力、海空連絡メカニズム構築など10項目の2国間協力文書に調印しました。安倍晋三首相は慣例を破り、東京から地方に至るほぼ全ての訪問活動に同行、参加しました。

競争から協調
 李総理は同条約40周年記念・歓迎レセプションで、平和友好協力の船旅を再出航させ、末永く安定的なものとし、共に新たな未来を切り開くことを強調しました。安倍首相は、双方は競争から協調へと転換させる責任があり、この日をもって協調の時代に入ったと表明、李総理に積極的に呼応しました。両国の指導者は共に、両国人民と国際社会に向けて前向きのメッセージを発信しました。
 数日間で、天候も雨後曇り、曇り後晴れへと変わりました。李総理の成功裏の訪問で、中日関係の改善・発展を推し進める民心が再び凝集し、平和、友好、協力が再び両国関係の主旋律となりました。
 重要な隣国として共通利益と相互の需要は日を追って増えています。戦略的互恵関係はそれぞれの発展に資するだけでなく、アジアひいては世界の平和、安定、繁栄にも寄与できます。将来を展望すると、両国は自らに立脚するだけでなく、世界にも目を向け、終始歴史に対する責任感と大局観を堅持し、平和、友好、協力の大方向をしっかり把握しなければなりません。

国際社会の期待
 双方は両国関係改善・発展の良好な勢いを大切に、歴史を直視し、信義を根幹とし、共通認識を守り、長期にわたる健全で安定した発展を図るよう努力すべきです。互いの利益の融合を一段と深め、相互補完性と大きな協力の潜在力を十分に生かし、新しい協力の目玉と成長ポイントを積極的につくり、より広大な空間と分野で互恵ウィンウィンを実現すべきです。
 世界2、3位のエコノミーで重要な影響力を持つ両国はさらに、時代の使命を共に担い、世界的課題に共に対応し、自由貿易と多角的貿易体制を守り、地域の経済統合を後押しし、世界の平和と繁栄を共に守り、促進すべきです。長期の健全で安定した発展を図ることは両国人民の根本的利益に合致し、国際社会の共通の期待でもあります。
 両国の各界が努力し、四つの政治文書(*1)と4項目の原則的共通認識(*2)の精神を引き続き堅持し、李総理の訪日の実り多い成果を全面的に実行に移し、中日関係の良い方向への発展の勢いを守り、打ち固め、絶えず強化し、末永い安定した新たな航程を共に開き、平和、友好、協力事業の新たな一章を記すことを心より期待します。

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 (*1)四つの基本文書(①〔日中共同声明=1972年②日中平和友好条約=78年③日中共同宣言=98年④「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明=2008年)のこと。
 (*2)「日中関係の改善に向けた話し合いについて」(14年)に盛り込まれた4項目(①四つの基本文書の順守と戦略的互恵関係の発展②歴史の直視と未来に向かう精神で政治的困難を克服③異なる見解がある尖閣諸島など東シナ海の緊張状態の悪化を対話と協議で防ぎ、危機管理メカニズムで不測の事態を回避④政治、外交、安保対話の再開で政治的相互信頼関係を構築)のこと。
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 改善に踏み出した最大の要因は、対米関係に集中する必要性だと、竹腰記者。
 先を読めない米トランプ政権から通商、台湾問題で揺さぶりをかけられ、米朝首脳会談も含め、関係の主導権を握られる状況が続く今、対米関係に注力するには、周辺環境の安定が重要で、習近平には、日本を引き寄せる必要性が高まっているのだと。
 加えて、「一帯一路」は、最近各地で警戒感が拡大し、陰りも見えていて、日本の協力姿勢取り付けは、大きな後押しにつながる。
 中国だけでなく、日本にも貿易赤字改善を要求するトランプ大統領の姿勢を観て、日米同盟の隙を突く狙いも考えられます。
 日本にとっても、TPPの離脱を継続し二国間交渉で、TPP以上の譲歩を迫ろうとするトランプ政権へのけん制カードになるので、無下に拒絶する必要もない。

 しかし、忘れてはならないのは、日中間の懸案事項は改善の兆しはなく、尖閣諸島の領海、領空への侵入圧力がエスカレートしていることです。今回も、尖閣諸島を巡り領土問題が存在するとの国際社会への一方的な見解のアピールを狙っていたのだと。

 東シナ海では、EEZの境界線付近でのガス田開発を巡り、胡錦濤主席、温家宝首相時代に共同開発協議が途切れたままとなっています。
 外務省: 東シナ海における日中間の協力について(日中共同プレス発表)

 それが、今では尖閣諸島の領海・領空の侵略にまでエスカレートしてきているのです。

 中国の日米同盟に楔を打ち込みたい対日接近への政策転換。行き詰まった経済打開のための対日接近。
 無下に遠ざける必要はありませんが、肝心な懸案事項は改善されるどころか、領土問題ではむしろ侵略がエスカレートしている現状は忘れてはなりません。
 
 国内市場の低迷打開の為、海外市場の取り込みを目指す習近平の「一帯一路」。少子高齢化で国内経済縮小が迫る日本の「CPTPP (TPP11)」での国内市場と発展する海外市場との自由法益による連結拡大。経済成長を海外市場との連結で維持しようとしている政策方向は、日中類似しています。
 昔よく見かけた「政経分離」での日中接近の経済成長の再来があるのでしょうか。

 今年1月下旬に公表された米国の「国防戦略 2018(NDS-2018)」で、「大国間角逐」こそがアメリカ国防にとって最大の脅威であるとされ、中国への警戒論を強めている米国との連携も欠かせません。
 米国の対中政策がついに決定的な変革を迎えた - 遊爺雑記帳

 今回の、日中接近は、今後どのような形で進むのでしょう。

「モリカケ」で蛸壺の中での政局に没頭する野党のせいで懸念されていたTPPの国会承認。承認が確実となったのは、対米に二国間交渉にも、中国の「一帯一路」にも牽制力が持てる明るい話ですね。
TPP協定承認確実 衆院通過、早期発効へ前進  :日本経済新聞

 

 # 冒頭の画像は、レーダー設置が確認された東シナ海ガス田の海上施設「第12基」




  この花の名前は、シャクチリソバ


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続 中国の海洋戦略
暴かれた中国の極秘戦略―2012年台湾乗っ取り、そして日本は…?
中国人民解放軍の正体―平和ボケ日本人への警告!!





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