勇足中学校だより ( Yutari Junior High School News )

日々の学校生活をご紹介しながら開かれた学校づくりをめざします

先生方のエッセイ 「拓道」7月号より

2011年08月26日 | 学校だより
        「 地 上 の 星 」

 「地上の星」というと、中島みゆきの代表曲の一つとして耳にしたことがあるのではないでしょうか?「風の中の昴 砂の中の銀河 みんなどこへ行った 見送られることもなく」という出だしの歌詞だったと思います。NHKの番組「プロジェクトX」の主題歌だったと言った方がわかるかもしれません。この番組は、名も無き人々の努力や苦悩による発明によって、世に出た製品を紹介した番組でした。名も無き努力者のことを、「地上の星」として讃えたのだとわたしは思いました。
 話は変わり、4年前の夏の全国高校野球十勝地区予選、代表決定戦。アナウンスが流れました。「S高校2回表の攻撃、7番センターN君、背番号8。」私はその日、彼を見に来ました。いや、確かめに来たと言った方がいいかもしれません。
 その日から3年前の中体連西部大会の一回戦、わたしはチームを指揮する立場にありました。N君は3年生、3番でショートを守っていました。そのチームのほとんどが中学から野球を始めた連中で、キャッチボールもまともにできないくらいでした。そして彼もその一人でした。試合相手は強豪校、コールドゲームも覚悟していました。試合結果は5対0で負け。しかし、彼らにとっては、コールドゲームになりそうな試合を最後まで踏ん張り通した結果でした。試合後のミーティングで、彼らは泣きました。3年間のいろいろな思いが心をよぎったのでしょう。そして、負けた悔しさもあったでしょう。「野球のルールもよく知らない君たちが、よくここまでできるようになった。さあこれからどうする?俺は君たちが高校に行っても、野球とは違う舞台で、たとえば勉強で、違う部活で頑張るならそれでいいと思う。野球で鍛えた精神力と体力を無駄にしないならそれも一つの生き方だ。しかし、どうしても野球をあきらめきれない、悔いが残っているのなら、高校野球でもう一度拾えなかったものを、拾ってみるのも生き方だ。」と、試合を終えたばかりの3年生たちに私は言いました。
 その後、N君は、野球の名門であるS高校の野球部に入り、3年生になってやっとレギュラーの座を勝ち取りました。中学時代は無名の選手、非力で、悪いがお世辞にも野球センスがあるとは言えなかった彼が、見違える姿でグランドに立っています。きっと君も「名も無き努力者」であったのだろう。「地上の星」となった君の姿と、中学3年の夏の忘れ物を拾いに来た君に拍手。そして、感動をありがとう。



最新の画像もっと見る