9月8日にホームで行われた2024JリーグYBCルヴァンカップ プライムラウンド準々決勝第2戦川崎フロンターレ戦ですが、試合結果は1対1の引き分けに終わりました。ヴァンフォーレの得点は前半に挙げた孫選手のゴールでした。この結果により2試合合計1対2となり、ヴァンフォーレの準々決勝敗退&川崎の準決勝進出が決まりました。
☆第1戦から先発3人入れ替え
4日に行われた第1戦から中3日で開催された8日の準々決勝第2戦。川崎をホームに迎え入れて臨んだこの試合でヴァンフォーレは先発を3人の変更を決断。3バックでは関口選手に代わりヘナト アウグスト選手、ボランチの位置では直前に体調不良を訴えた佐藤選手に代わり急遽中山選手が起用されます。そして三沢選手に代わり三平選手を使い、第1戦ではアダイウトン選手と鳥海選手の2トップ気味になっていたかたちを3-4-2-1の1トップ型に戻して挑みました。対する川崎はマルシーニョ選手や家長選手&大島選手など、第1戦では時間を限定して出場していた主力選手たちを先発で起用する本気ぶりを見せてきました。そしてヴァンフォーレにも馴染みのある三浦選手を先発で&ファンウェルメスケルケン際選手はベンチに入り出番を虎視眈々と窺います。第1戦から中3日で主力選手を続々と使ってきた川崎に対してどう戦っていくのか注目された試合でしたね。
☆立ち上がりから積極的に仕掛けるヴァンフォーレ
平日ナイトゲームであるのにも関わらず1万人を超えるサポーターが訪れたこの試合。川崎サポーターもたくさん来場したなかで迎え撃つホームのサポーターもゴール裏を中心にぎっしりスタンドが埋まる状態でした。熱く応援するそのサポーターたちの後押しを受けてヴァンフォーレの選手たちはスタートから積極的に仕掛けていきます。その圧力にさすがの川崎も後手にまわる機会が多くあり主導権を握ることに成功。トップの三平選手を中心に鳥海選手やボランチの選手たちも果敢に前に出ていくアグレッシブかつ組織的なディフェンススタイルが効果的でしたね。その流れがCKを獲得することに結びつき、その後の先制点へと繋がっていきます。
☆値千金孫選手プロ初ゴール先制弾
前半31分にCKのチャンスを獲得したヴァンフォーレ。左コーナーから左利きの荒木選手がカーブをかけてゴールから離れていくような弾道のキックを放つと、そこに走り込んだのが孫選手でした。体を投げ出しダイビングのような姿勢で強烈なヘディングシュートをゴールネットに突き刺し、ヴァンフォーレが幸先よく先制点を挙げることに成功します。孫選手はこれまで鳥栖と金沢に在籍してきましたが、この得点は嬉しいプロ初ゴールとなりました。このシーンを詳しく見てみると、ヴァンフォーレの選手たちはCKを蹴る前に複数人がニアサイドに固まっており、それに釣られて川崎の選手たちも自身がマークする相手に近いポジショニングをとっていました。荒木選手のキックはそこのエリアを越えるかたちで比較的手薄なファーサイドまで届いており、孫選手もタイミング良くマークを瞬間的に外してキックの落下点に入り込めましたね。ヘディングは完璧と呼べるもので名手のチョン・ソンリョン選手でも一歩も動けませんでした。このゴールでアグリゲートスコアで同点に追いつき、チームもサポーターもこの試合のさらなる士気を高めるきっかけになったと思います。
☆次第に川崎ペースに
1対0のスコアで前半が終了したこの試合。川崎は巻き返しを図るため、三浦選手に代わりヴァンフォーレの下部組織出身選手であるファンウェルメスケルケン際選手(以後際選手)を後半始めから起用。そして後半26分には第1戦でゴールを決めている遠野選手とVARの判定でハンドとなり幻の得点となったエリソン選手をピッチに送り出し攻撃の圧力を強めていきます。ヴァンフォーレは仕掛けの軸として期待されていたアダイウトン選手に代えて宮崎選手&疲れが見えてきた三平選手に代えてウタカ選手を投入。これまで前線で組織的なプレスをかけてきた三平選手が下がったことで前への圧力が弱まり、川崎の攻撃の出発地であるDFのビルドアップ地点が以前よりかなり前に設定されてしまったことはヴァンフォーレにとって痛手でしたね。それによってまともに相手の攻勢を受ける場面が増えてきたので、攻守がうまく切り替えられずに防戦一方の展開になっていったと思います。
☆耐えきれなかったアディショナルタイム被弾
押し込まれながらも懸命にディフェンスし耐えるヴァンフォーレ。しかしその状態も最後の最後で崩壊してしまいます。同点で延長戦に入るかと思われた後半アディショナルタイム3分、ゴール前に人数をかけて守備ブロックを形成していたヴァンフォーレ守備陣に対してエリア外で横パスを回す川崎の選手たち。そのパスが右サイドの際選手に渡ると、彼はDFの背後のスペースにクロスボールを供給。そこに素早く走り込んだのが遠野選手でした。そのクロスにダイビングヘッドで合わせると少し反らした軌道はゴール左隅に吸い込まれ、土壇場での勝敗を決める得点となりました。3バックはゴール前を固めウイングバックは手前の瀬川選手を見ていたなかで、孫選手の背後を巻いていくようなカーブのかかったクロスボールの質は完璧の一言。そのクロスを信じて走り込んでいた遠野選手の嗅覚の鋭さとヘディング精度の高さもとても良かったですね。こちらの守備力の問題というよりかは、相手の攻撃のクオリティの高さを褒めるべきシーンだったと思います。
☆引き分け(敗退)の原因は?
この試合引き分けで準々決勝敗退が決まった要因として、選手の蓄積疲労の問題があったと個人的には思います。ヴァンフォーレはリーグ戦の鹿児島戦から中3日で川崎との第1戦に臨み、その第1戦から中3日で第2戦を迎えています。一方の川崎はリーグ戦の札幌戦から中2日で第1戦に臨み、その第1戦から中3日で第2戦を戦いました。川崎は第1戦でリーグ戦から先発7人を入れ替えており、第2戦ではリーグ戦に出場していた選手たちを多く揃えています。選手の試合間隔を考慮してあまり負担のかからない起用をしているのに対して、ヴァンフォーレは第1戦はリーグ戦から先発変更は2人のみ、そして第2戦は3人とそれほど変えずに過密日程を継続路線でチーム編成をしてきたことが分かります。連携面などはメンバーを継続して戦ってきた方が研ぎ澄まされているメリットがありますが、過密日程でメンバーを変えないとどうしても疲労面が心配になってきます。そこの蓄積疲労が第2戦の終盤の時間帯に出てしまった印象がありますね。川崎の選手たちは出場時間的に出ずっぱりではなく計画的に効率よく休めているので体のキレが衰えていない感じがしました。その体のキレの差が守備を固めるヴァンフォーレをこじ開けた川崎とのチーム差だったと思います。
それと後半に効果的な攻撃を仕掛けられなかったのも痛かったですね。三平選手がピッチにいなくなったことで前線での守備の圧力が弱まってしまい、川崎に比較的伸び伸びと攻撃を展開されるきっかけとなりました。それで攻守がうまく切り替えられずに防戦一方の展開に変わったので、もちろん三平選手とウタカ選手でプレーのタイプは違いますが今回はチームプレーができるタイプがFWに欲しかったですね。
…第2戦の結果は1対1の引き分け。これにより第1戦&第2戦合わせた2試合のアグリゲートスコアが1対2となり、川崎の準決勝進出が決定。ヴァンフォーレはこの準々決勝での敗退が決まってしまいました。2022年の天皇杯優勝から始まり、2023年にはアジアの舞台となるACLの大会に出場して周囲の予想をはるかに上回るグループステージ突破を果たします。そしてノックアウトステージ進出を決めたことでこのルヴァンカップのシード権を獲得。今回のプライムラウンド準々決勝での戦いとなったわけですが、2022年10月から続いていた一連の ‘天皇杯特需’ がこれにてすべて終了することになりました。普段J2で戦っているヴァンフォーレにとってこの期間はまさに夢のような舞台で、チームや選手たち&サポーターも含めて日本のトップレベル&アジアのトップレベルを肌で体感できる絶好の機会でしたね。ここで得た経験はクラブにとっての貴重な財産となっていくのは間違いないので、将来的に語り継がれていくことになるでしょう。今回も強豪川崎に対して相手を苦しめるような戦いができていたし、ヴァンフォーレは自信を持って良いと思います。その自信を今後のJ2の舞台でもみせていきたいですね。
2024.09.08 2024JリーグYBCルヴァンカップ プライムラウンド準々決勝 第2戦 vs.川崎フロンターレ
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