ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

ICPO総裁失踪事件 その真相

2018-10-10 14:33:38 | 日記
きのうは本ブログで、「ICPO総裁失踪事件」を取りあげた。きょうに
なって、この謎にみちた事件を取りあげた新聞社説が二つある。
一つは、毎日新聞の《ICPO総裁の「失踪」 中国流と国際常識の衝突》、
もう一つは、産経新聞の《ICPO総裁失踪 「蒸発国家」は異常である》
である。

簡単に要約すれば、毎日は次のように書いている。
「孟氏は汚職で無期懲役の判決を受けた周永康(しゅうえいこう)元政治局
常務委員の公安相時代の部下だった。孟氏の摘発も政治と無縁とは言えな
い。」
つまり孟氏は、習近平が権力闘争の一環として進めた反腐敗運動の、その犠
牲になったのではないか、というのである。

こう分析した上で、毎日は次のように主張している。
「中国は民主主義や三権分立、報道の自由などの普遍的価値の受け入れを拒
むが、それでは摩擦が強まるだけだ。せめて国際基準や国際社会の常識に歩
み寄る姿勢を示すべきだ。」
こう述べるとき、毎日はいわばさじを投げた格好である。中国はどうあって
も「民主主義や三権分立、報道の自由などの普遍的価値」を受け入れないだ
ろうと諦めている。アメリカが中国を相手に「人権外交」をくり広げたの
は、今をさかのぼること40年、1977年に発足したカーター政権時代の
ことである。今のトランプ政権下では、到底それは望めないと毎日は見てい
るのである。


産経はどうか。産経はこの事件の「異常さ」の背景に「恐怖政治」の影を見
ている。そこに「権力闘争に絡む可能性」を嗅ぎ取るからである。その上で、
産経は次のように主張する。
「中国が国際的影響力を高める中で、世界の常識に挑むように中国流の荒々
しいやり方が広がっている。安倍晋三首相は対中関係改善を急ぐが、そうし
た中国の問題点から目をそらしてはならない。」

これはいかにも産経らしい主張であるが、(見方によっては)産経らしから
ぬ主張である。アンチ中国の姿勢は、いかにも右寄りの産経らしいが、安倍
首相に物申す姿勢は、産経としては珍しい。


以上、きょうの新聞社説から、「ICPO総裁失踪事件」を取りあげた論説
を紹介したが、もっと詳しいのは、日経ビジネスONLINEに掲載された《国
際機関ICPOの中国人総裁はなぜ消えたかーー人が簡単に行方不明になる中国
という国》(10月10日配信)である。この記事は、「(失踪した)孟宏
偉とはどんな人物か」を明らかにすることによって、「ICPOの中国人総裁は
なぜ消えたか」を解明しようとしたものである。

ところで、孟氏の経歴に関しては、上で述べたように、毎日新聞の社説が次の
ように書いていた。
「孟氏は汚職で無期懲役の判決を受けた周永康(しゅうえいこう)元政治局
常務委員の公安相時代の部下だった。孟氏の摘発も政治と無縁とは言えない。」
日経ビジネスONLINEの記事は、毎日のこの見解を詳細に跡づけたものと言っ
てよい。

それによれば、孟宏偉は「周永康閥の主要メンバーのひとりと目されていた」
人物であるが、この周永康は、「習近平の政敵として2013年に失脚させられ
た」。こうした事実から、「孟宏偉もあるいは失脚させられたのではないか」
という推測が成り立つ。詳しい事実は以下の通りである。
「孟宏偉は(周永康の失脚後)、習近平政権のもとで忠実に職務を果たしてい
た、と思われていた。」ところが「2017年12月に海洋局副局長、海警局長職
が解任され、2018年4月には公安部の党委員から外された。2018年1月に全国
政治協商委員(参院議員に相当)という名誉職に選出されたので、単なる年齢
的な引退だろうという説と、失脚の前触れではないか、という説が出ていた。
結果から見れば、失脚の前触れであったということになる。」

この記事が指摘し強調するのは、今回のような失踪事件は、中国では日常茶
飯事で珍しくないということである。国外のメディアはあれこれ騒ぎ立てる
が、中国の国内では当たり前すぎて騒がれることもない。
「こういった人たち(=政府に批判的な人たち)が毎日のように、音もなく
消えて、時にはしばらくたってからひそやかに日常に戻り、時にはそのまま
忘れさられ、時にはあとから実は逮捕されていたことが公表され、時には事
故死や自殺の遺体と言う形で発見されたりする。」

記事は事実の指摘に終始し、とりたてて何かを主張するわけではない。だが
こうした文章を目にすれば、人は「心せねば」という気になるだろう。言外
に、産経のような主張が含まれているのではないかと思うのは、私だけでは
ないだろう。(そういえば、この記事の筆者である福島香織氏は、産経新聞
の記者だった経歴を持つジャーナリストである。)

ま、そんなことはともかく、中国政府の暗部の、その奥に隠された「牙」の
実態を見せつけられれば、たいていの人は警戒心を抱くのではないか。トラ
ンプ米政権が貿易戦争で対峙しようとしているのは、そういう▲▲▲▲にも
似た、あくどく強(したた)かな政府なのだということを、くれぐれも銘記
する必要がある。
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