ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

北朝鮮と人権問題

2018-06-15 12:09:58 | 日記
シンガポールの米朝会談で、トランプ米大統領は北朝鮮の金正恩党委員長
に対し、拉致問題を重大視する安倍首相の考えを伝えた。これに対し、金
委員長は「安倍首相と会ってもいい」と述べたという。

こうした会談の経緯を承け、日朝会談に臨む腹を固めた安倍首相は、拉致
被害者家族と面会し、次のように述べたという。「拉致は日朝の問題。米
朝会談を機会と捉え、北朝鮮と直接向き合いたい」。これは、人権問題
向き合い、拉致被害者全員を早期に帰国させようとする決意の表明であ
る。

北朝鮮と人権問題といえば、つよく私の脳裏に残った記事がある。お笑い
アメリカ人タレント・パックン(パトリック・ハーラン)が、TV番組で次
のように述べたという。
「僕が一番怒っているのは、人権問題には触れもせず、残酷な指導者と対
等に付き合うような会談を行ってしまったこと。会談は譲歩を引き出すた
めの手段でもあったのに、同じ数の国旗を並べ、同じものを食べ、一緒に
庭を歩いた。絶対やってはいけないことだし、歴代大統領だったら、しな
かった。」

パックンは怒っている。これは感情レベルの素朴な反発である。この反発
の感情は、金政権に家族を殺され、命からがら脱北したという、ある朝鮮
人女性の次の言葉にも見て取れる。NBCテレビで放映された一場面であ
る。
「金正恩は許せない。モンスターです。世界平和とか核廃絶とか言ってい
ますが、本性はテロリストで独裁者です。トランプ大統領はなぜあんな男
と会うんですか」

金正恩は側近を次々粛清した凶暴・残虐な過去を持っている。日本人を何
人も拉致した金王朝の後継者でもある。「人権の否定者」という負の側面
を、この若い指導者から拭い去ることはできない。

人権には曲げられない鉄のルールがある。人権を侵害した者は、彼が侵害
したのと同じだけの人権を奪われ、それ相当のペナルティーを科されねば
ならない。「目には目を。歯には歯を」の原則
である。

この原則に照らせば、多大の人権侵害を行った金正恩には、フツーの人権
を持つフツーの人間と同様の扱いをしてはならない、ということになるだ
ろう。イスに腰をかけて対等の会話を交わしたり、同じテーブルを囲んで
同じ料理を食べたり、といったことは、この男に対する「あってはならな
い」接し方なのである。

しかし、である。今問題になっているのは、いかにして核を放棄させる
か、いかにして拉致被害者を日本に帰国させるかである。シンガポールで
の会談は、まさにこの懸案を解決に導くための、国家指導者との直接交渉
の場にほかならなかった。対等な接し方がいけないとすれば、では、トラ
ンプ大統領はどうすれば良かったのか。ピストルを突きつけて、あるいは
相手を拷問台に縛りつけて、「おい、どうなんだ、なんとかしろ!」と脅
しても、埒が明くものでないことは、火を見るよりも明らかである。

交渉が交渉として成り立つには、対等な者同士の忌憚のない対話が欠かせ
ない。「対等の者として扱う」のは、方便としての嘘、つまり相手を対話
の場に引き出すための、手段としての見せかけ( pretense )なのである。

北朝鮮の非核化が実現するかどうかは予断を許さない。拉致問題の解決は、
成功を祈らずにはいられない。怒ってばかりでは、事は始まらないのであ
る。
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« シンガポール会談の成否を問... | トップ | 拉致問題をビジネスとして »

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事