ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

北方領土交渉 その本質

2018-11-15 11:51:53 | 日記
国家はそれ自体、一個の生命体のように〈力への意志〉を有し、それは覇権
という形をとる。国家の〈力への意志〉同士がぶつかり合うとき、衝突は領
土をめぐる紛争となって現れる。日本が直面する代表的なものとしては、ロ
シアとの間の北方領土問題があげられるだろう。

きのう、安倍首相がロシアのプーチン大統領と会談し、この問題に一定の緒
(いとぐち)を見出したようだ。

首脳会談の直後、首相は記者団に対して、平和条約締結後に歯舞・色丹の2
島を引き渡すと明記した日ソ共同宣言に言及した。「1956年の共同宣言
を基礎として、平和条約交渉を加速させる。本日そのことでプーチン大統領
と合意した」。日ロ間で今後、2島の返還交渉が軸となりそうだ。
                      (朝日新聞11月15日)

4島一括返還は無理でも、とりあえず2島の返還を、ということで、そのあ
たりが落とし所になるのだろう。

この問題を解決するために、当初安倍首相がとったアプローチは間違ってい
なかった。北方領土で経済協力を活発にし、これを返還交渉につなげようと
するものだが、これは「国境の壁」を無意味化していこうというねらいに基
づいている。経済の分野では、「国境の壁」などあってなきがごとし、意味
をなさないからだ。

けれども、「では、4島を無国境地帯にしましょう」という話にはならなかっ
た。なぜか。「経済協力の活発化」を「相互依存のネットワークの構築」と
捉えなおせば、その理由は明らかである。相互依存の関係は、局所的な形で
は意味をなさない。国家と国家とが丸ごと相互的に依存しあう関係にならな
ければ、この関係は効果を発揮しないのである。

ところが、そうは問屋が卸さない。ロシアはウクライナ問題、シリア問題、
イラク問題などでアメリカと対立し、経済制裁を課されている。西側の相互
依存的な経済ネットワークから、排除処分を受けている身なのである。西側
の一員であり、アメリカのポチである日本の安倍政権が、ロシアとの全面的
な相互依存関係を構築できるはずがない。

「村八分の状態では、4島返還なんて、できないな。あり得ない話だ」と言
い張るロシアに対して、「ちょっとだけならお付き合いできるからさあ、2
島だけでも返してよ」と日本が言ったとき、ロシアは結局、どう答えるのだ
ろうか。最終決着はアメリカと直談判で、ということになるのだろうか。
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