今は昔、もう二昔も前のことである。テレビの深夜討論番組で「なぜ人を殺
してはいけないのか?」と、素朴な問いを投げかけた若者がいた。出演して
いたインテリ連中のだれもこの問いに答えられなかったことから、この出来
事は当時、世間に大きなセンセーションを巻き起こした。本ブログではもう
一つの素朴な問いについて考えてみよう。「人はなぜ嘘をついてはいけない
のか?」
きのう本ブログで、私は次のように書いた。「子どもたちが平気で嘘をつく
社会。そんな社会に未来はない」と。これを読んで、「人はなぜ嘘をついて
はいけないのか?」と疑問をいだいた人もいることだろう。
これは倫理学史上の有名な問いであり、ドイツの18世紀の哲学者・カント
の倫理学説に発している。では、カントはこの問いに対して、どう答えてい
るのか。彼は商売の例をだして、「嘘つきは結局バカを見る」と答えている。
100円で仕入れた商品を、500円で仕入れたと嘘をついて、600円で
売ったとしよう。500円の儲けがでる。嘘をつかずに150円で売ったと
すれば、儲けはたったの50円。
これだけを見れば、嘘をついたほうがたくさん儲かるように見えるが、そう
ではない。「あの店は嘘をついているぞ。あの商品が600円だなんて、イ
ンチキに決まっている」。そんな噂が広まれば、客は激減し、儲けも激減す
るだろう。商売敵が近所に店を出し、同じ商品を150円で売るようになれ
ば、だれもがこの店で買い物をするようになり、嘘つきの店は閉店必至であ
る。「正直者が馬鹿を見る」という言葉があるが、そうではなく、「嘘つき
は馬鹿を見る」。だから、馬鹿を見たくなかったら、嘘をついてはいけない
ということである。
このカントの説明を聞いて、うん、なるほど、と納得する人は少ないだろ
う。有難い道徳の教えを損得勘定から説明するなんて、どうなのかなあ、と
疑問に思う人も多いだろう。それに、損得を考えれば、みんなが結託し、談
合して「この商品の仕入れ値は500円です」と嘘をつけば、みんなが多く
の儲けにあずかれ、みんなが幸せになれるという理屈になる。談合や協定に
基づく価格調整、つまりカルテルは、今では独禁法によって禁止されている
が、な〜に、みんなで渡れば怖くない! みんなが嘘をつくようになれば、独
占禁止法という法はあっても、まるで無いに等しい状態になり、そこには無
法者が跋扈する一種の無法状態が出現する。そのとき馬鹿を見るのは、仕入
れ値が100円の品を600円で買わされる客のほうだということになる。
わざわざこんな(蛇足のような)話を書くのは、今の日本の権力中枢が、平
気で嘘をつく無法者たちのアジトになってしまっているからである。法治国
家の土台をくつがえしかねない今の日本の権力構造が、一刻も早く潰え去る
ことを願う天邪鬼爺である。
してはいけないのか?」と、素朴な問いを投げかけた若者がいた。出演して
いたインテリ連中のだれもこの問いに答えられなかったことから、この出来
事は当時、世間に大きなセンセーションを巻き起こした。本ブログではもう
一つの素朴な問いについて考えてみよう。「人はなぜ嘘をついてはいけない
のか?」
きのう本ブログで、私は次のように書いた。「子どもたちが平気で嘘をつく
社会。そんな社会に未来はない」と。これを読んで、「人はなぜ嘘をついて
はいけないのか?」と疑問をいだいた人もいることだろう。
これは倫理学史上の有名な問いであり、ドイツの18世紀の哲学者・カント
の倫理学説に発している。では、カントはこの問いに対して、どう答えてい
るのか。彼は商売の例をだして、「嘘つきは結局バカを見る」と答えている。
100円で仕入れた商品を、500円で仕入れたと嘘をついて、600円で
売ったとしよう。500円の儲けがでる。嘘をつかずに150円で売ったと
すれば、儲けはたったの50円。
これだけを見れば、嘘をついたほうがたくさん儲かるように見えるが、そう
ではない。「あの店は嘘をついているぞ。あの商品が600円だなんて、イ
ンチキに決まっている」。そんな噂が広まれば、客は激減し、儲けも激減す
るだろう。商売敵が近所に店を出し、同じ商品を150円で売るようになれ
ば、だれもがこの店で買い物をするようになり、嘘つきの店は閉店必至であ
る。「正直者が馬鹿を見る」という言葉があるが、そうではなく、「嘘つき
は馬鹿を見る」。だから、馬鹿を見たくなかったら、嘘をついてはいけない
ということである。
このカントの説明を聞いて、うん、なるほど、と納得する人は少ないだろ
う。有難い道徳の教えを損得勘定から説明するなんて、どうなのかなあ、と
疑問に思う人も多いだろう。それに、損得を考えれば、みんなが結託し、談
合して「この商品の仕入れ値は500円です」と嘘をつけば、みんなが多く
の儲けにあずかれ、みんなが幸せになれるという理屈になる。談合や協定に
基づく価格調整、つまりカルテルは、今では独禁法によって禁止されている
が、な〜に、みんなで渡れば怖くない! みんなが嘘をつくようになれば、独
占禁止法という法はあっても、まるで無いに等しい状態になり、そこには無
法者が跋扈する一種の無法状態が出現する。そのとき馬鹿を見るのは、仕入
れ値が100円の品を600円で買わされる客のほうだということになる。
わざわざこんな(蛇足のような)話を書くのは、今の日本の権力中枢が、平
気で嘘をつく無法者たちのアジトになってしまっているからである。法治国
家の土台をくつがえしかねない今の日本の権力構造が、一刻も早く潰え去る
ことを願う天邪鬼爺である。










