ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

ヒュッゲとは何か

2018-02-20 15:15:52 | 日記
今、「ヒュッゲ(hyugge)」という言葉が注目されている。とくにイギリス
やアメリカで話題になっているようだ。いったい何のことかと興味がわいた
が、これはデンマーク語であり、日本語に翻訳するのは難しいという。そう聞
いて、ますますこの言葉の意味が知りたくなった。もともとは「居心地がいい
時間や空間」を意味する言葉だというから、「やすらぎの場」とでも言い換え
られそうだが、それだけでは汲み尽くせない独特のニュアンスが、この言葉に
はあるのだろう。

デンマーク特有のライフスタイル、--それを言い表す言葉が日本語にあるか
どうかが問題だということになる。それを考えるため、この言葉がなぜ脚光を
浴びるようになったのか、ひとつそれを考えてみたい。イギリスやアメリカで
この言葉が注目されるようになったのは、英米で支配的になったライフスタイ
ル、つまり、あくせく時間に追われるビジネスマンのライフスタイルの、その
アンチテーゼがデンマークにあり、英米流の生活様式に疲れ果てたビジネスマ
ンやその家族が、この国に癒しの場を求めたからだと聞く。彼らは時間に追わ
れる生活に疲れはて、北欧デンマークの生活様式(ヒュッゲ)に「やすらぎの
場」を見出したのだ。

近年、日本でもこの言葉が注目を集めているらしい。それは、時間に追われる
会社員の生活様式が、日本の大衆から「やすらぎの場」を奪いつつあることの
証左だと言えるだろう。

では、デンマーク人はどんなふうに日常の時間を過ごしているのか。
「パチパチと音を立てる暖炉を囲みながら、手編みの靴下やセーターを着込ん
だ友達や家族が、コーヒーやケーキを食べてほっこりする。」

「デンマークではあらゆることがヒュッゲになる(・・・)。自分の自転車も
ヒュッゲリ(ヒュッゲ的)、誰かのテーブルセッティングもヒュッゲリ、コペ
ンハーゲンのお洒落な地区ヴェスタブロを散策するのもヒュッゲリだ。」
(The New York Times《日本にもくる?欧米でブーム「ヒュッゲ」とはー
ーデンマーク流の癒やし時間に皆夢中》)

この言葉は大いに示唆的である。つまり、こういうことだ。〈ヒュッゲ的〉
な場所とか、〈ヒュッゲ的〉な物が別個にあるわけではない、ということであ
る。そこに行けばビジネスの時間を忘れることができ、心が癒されるような
〈ヒュッゲ的〉な場所が(温泉旅館のような形で)どこか別の場所にあるわ
けではないのである。
要はその場所に赴く我々の、その物を使う我々の、心の持ち方にあるというこ
とである。

最近、安倍内閣は「働き方改革」と称して、残業時間を減らすなど、労働環境
の改善に取り組んでいる。だが、器(制度)が変わっても、そこに盛り込まれ
る我々の側の意識が変わらなければ、しょせんは馬の耳に念仏である。

たしかに、制度が働き手の意識を変えるという面はあるだろう。あくせく長時
間働いても、会社の業績アップにはつながらず、昇進もできない、ということ
になれば、あくせく長時間働く人はいなくなる。

だが、それによって生み出された時間を、〈ヒュッゲ的〉な場所や物に向ける
術(すべ)を知らなければ、その人はヒマを持て余し、リタイア後の老人のよ
うに、空虚な人生を送るだけである。

人生、どうあがいても、人は必ず歳をとり、いずれは会社を去る時が来る。リ
タイア後のヒマな時間をどう過ごすかを、あれこれ考えるのは、今からでも遅
くはない。ーーさあ、あなた、ひとつブログ書きなどいかがですかな。
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