ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

米朝交渉 round 7

2018-08-12 14:39:13 | 日記
北朝鮮の非核化をめぐる米朝交渉は、完全に暗礁に乗り上げたようにみえる。
その思いを強くしたのは、次の記事を読んだからである。

北朝鮮の非核化をめぐる交渉で、米国が再三にわたり北朝鮮側に提案を伝え
ているものの、いずれも拒否されていることが11日までに分かった。複数の
外交筋が明らかにした。
外交筋によれば、米国側は「完全に検証された非核化という終着点」に至る道
筋について具体的な提案を行ってきた。だが、北朝鮮側は「強盗的」だとして、
こうした提案をすべて拒否したという。
                       (CNN 8月11日配信)

米国が提案した非核化のための具体的提案は、いわば交渉の各論部に当たる。
その各論部で合意が得られないとなれば、米朝交渉は総論部から一歩も前に進
まないことになる。

北朝鮮が非核化を実行しなければ、米国が対北圧力を強めることが予想される
が、経済制裁を米国がどれだけ強化しても、それは今の北朝鮮には何の意味も
持たない。中国とロシアの協力があれば、我が国はどんな兵糧攻めの包囲網も
突破できる、ーー北朝鮮はそう高を括り、自信を強めているのだ。

米朝交渉は「非核化」の暗礁に乗り上げ、なんの成果も得ないまま、失敗に終
わるのだろうか。私はすっかり悲観的な気持ちに傾いていた。だが、ちょっと
待てよ、ーーそう思わせる記事に出くわした。


北朝鮮外務省は9日、一部の米政府高官が、6月に行われた米朝首脳会談の精
神を尊重していないとして非難する声明を発表した。
声明の中で北朝鮮は、自らについては「実質的な非核化の措置を取り、核実験
やICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験を中止している」と述べ、朝鮮戦
争当時の米兵の遺骨を返還するなど「寛大な措置」も講じていると主張。これ
に対して「米国は、国際制裁と(北朝鮮に対する)圧力を扇動することによっ
て、我々の期待に応じた」と批判した。
                       (CNN 8月10日配信)

ここで非難されている「一部の米政府高官」とは、ボルトン米大統領補佐官と、
ポンペオ国務長官のことを指しているのだろう。
注目すべきは、北朝鮮がこの2人を「一部の米政府高官」と呼び、トランプ米
大統領とはっきり区別して、一緒くたにしていないことである。CNNの記事が
書くように、この声明は「トランプ大統領に非難の矛先を向けること」はして
いないのである。

北朝鮮はトランプ大統領を敵視しないばかりか、ふたたび彼と直接会談するこ
とに期待を寄せてすらいる。次のような情報もある。

トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が再
び会談する可能性を、北朝鮮側が強く期待していることが7日までに分かっ
た。北朝鮮側の事情に詳しい当局者が語った。
                       (CNN 8月7日配信)

だが、金正恩がトランプ大統領とふたたび会談したとして、そこから何が始ま
るというのか。米朝交渉はふたたび振り出しに戻り、その先には堂々めぐりの
膠着状態が待っているだけではないのか。

はたしてそうだろうか。話を整理してみよう。北朝鮮はこう主張している。
「朝鮮戦争の終戦宣言が先になされなければならない。米国が終戦宣言に合意
しなければ、我が国は非核化を実行しない」。

とすれば、話は簡単ではないか。アメリカがまず終戦宣言に合意すれば良い。
それだけのことである。終戦宣言が交渉の重要な要石(かなめいし)になって
いる。北朝鮮がそれを熱望し、アメリカがそれを躊躇する理由は、ただ一つ。
アメリカが終戦宣言に合意すれば、アメリカは在韓米軍を駐留させておく大義
名分を失い、米軍を韓国から撤退させざるを得なくなる。そういうことだ。

これは北朝鮮にとっては、身近でリアルな脅威の消失を意味する。だから北朝
鮮はそれを熱望し、交渉の第一前提にすえるのだ。
一方、アメリカが懸念するのは、在韓米軍の撤退が 北朝鮮の軍事的プレゼンス
の増大につながることである。また、対中国の軍事戦略上の問題もある。そうい
う懸念はたしかにあるが、それでも、北朝鮮というキ▼ガ▼が核ミサイルという
巨大な刃物を手にするよりは、ずっと良いに決まっている。
中朝の軍事的プレゼンスの増大を恐れ、北朝鮮の非核化を座視するというのでは、
本末転倒もはなはだしい。

トランプ大統領は去る6月12日のシンガポール首脳会談の前に、朝鮮戦争
(1950〜1953年)の終結を宣言する合意文書に調印する「可能性がある」と
述べた。だから北朝鮮は、トランプ大統領と直接会談すれば「終戦宣言」とい
う成果が得られると踏んでいるのだ。

さて、この交渉、この先どうなりますことやら。
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