ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

国益?それとも

2016-04-14 14:36:58 | 日記
環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案をめぐる国会審議が、立ち往生している。その原因は、野党民進党の審議拒否にある。TPPの交渉過程に関する情報開示が不十分だというのが、野党の言い分だ。読売と日経はこの事態を社説で取りあげ、批判的に論じている。


まず読売であるが、社説が異を唱えるのは、「情報開示が不十分だ」という野党の審議拒否の理由に対してである。そもそもTPPに署名した12か国は、「発効から4年間は交渉過程の公表を禁止することで合意した」のだ。交渉過程の詳細を明らかにすることは、この合意に明確に違反するのだから、できるわけがない。政府に対する野党の要求は、「的外れ」で「呆あきれるばかりだ」とこの社説は述べるが、むしろ無理難題をふっかけるようなものだと言ったほうが適切だろう。

TPP加盟国が交渉過程の公表を禁止することになぜ合意したのかといえば、それは、TPPが「貿易の自由化を大幅に進める内容だけに、各国とも国内に様々な反対勢力を抱える」からである。交渉過程のやり取りを一方的に公表すれば、相手国に迷惑をかけて、関係悪化を招きかねない。それに、自国の交渉戦術の手の内をさらすことにもなるから、国益を損なう恐れもある。


読売の社説はこのように論じたうえで、交渉の結果のほうに審議の目を向けることの重要性を説き、早く審議の席に戻るよう野党を促している。



日経の社説はどうか。こちらは、野党による審議拒否の底意を「選挙目当て」の「党利党略」と見たうえで、「党利党略と国益のいったいどちらが重いのか」と書くが、ここには、TPP承認案の審議を進めることが国益にかなうのだ、との認識がある。TPPの意義は何か。日経はこう書いている。「TPP参加国の世界経済に占めるシェアは約4割である。その規模で貿易自由化を進めることは、日本のみならず世界の発展の礎となる。TPPには「中国にルールをつくらせない」(オバマ米大統領)という戦略上の意味もある。こうした原点を再確認したい。」
これはいわば総論の部分、タテマエの部分である。総論には賛成でも、各論の部分、ホンネの部分になると、国内各団体の利害が錯綜して、意見の一致が見られない。これを好機として、野党は勢力を拡大しようとし、だからこそ政府は、交渉過程の情報を隠して、強引に事を進める必要に迫られもするのだろう。


アイディアリスト(独語ではイデアリスト、理想主義者、観念論者とも訳される。頭でっかちのこと)であれば、総論の部分を錦の御旗のように振りかざすだろうが、それでは現実の問題は解決しない。

レアリストの目で現実的に考えれば、読売が主張するように、交渉の結果のほうに着目し、それが自分たちにとって利益になるのかどうか、長い目で見た場合にはどうか、といった議論が不可欠になる。

ここでも利害が分かれ、審議が錯綜するようなら、その利害の調整は安倍さん、そのときこそあなたの出番ですよ。
コメント
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