「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(30)

2013年12月23日 | 今の物語
月曜日の午前中、ミウは山田さんを病院に送った後、いつものように隣町まで、荷物を運ぶ仕事の途中、赤谷川の川沿いを走っていた。


12月だと言うのに、なんとなくポカポカした日で・・・川の流れも綺麗だった。

ミウは車を停め・・・川沿いに出て、川の流れを見つめた・・・せせらぎの音が心地よい・・・。


ミウはサトルの事を思っていた・・・ここで、よくサトルに電話した・・・。


ミウは車を脇に寄せて止め、車から降りる。


少し歩いて、川沿いにあるベンチに座る。


ミウは携帯を取り出し、サトルにメールを送る。


「今、電話いいですか?」


というミウのメールに、


「電話待ってます」


の言葉が届いた。


すぐさまミウはサトルに電話をかけ・・・楽しそうに話しだしていた。


「サトル・・・今、わたし、いつもの場所に来て、川のせせらぎの音を聞いているの」


と、ミウが言葉にすると、


「へー、それ、聞かせて・・・携帯で音拾えるかなあ」


と、サトルは元気そうにしゃべってくれる。


「うん、ちょっと待ってて、やってみるから」


と、ミウは言葉にしながら、携帯をせせらぎに近づける。


「聞こえる聞こえる・・・綺麗な音だ・・・やさしい音だね・・・いつか僕も「月夜野」に行きたいよ・・・」


と、笑っているサトルだった。


サトルは「鬱」病から完全に脱出していた。



月曜日の夜、ミウはヨウコとバー「Mirage」で飲んでいた。


「っていうことが昼間にあってね・・・とても嬉しいの・・・」


と、ヨウコ相手に、言葉にするミウだった。


「そうか・・・サトルはそこまで、治ってきたか・・・俺も嬉しいな・・・あいつデカイ男性だからな。そういう男性は頼もしいよ」


と、ヨウコも言葉にしている。


「それにしても、来週はクリスマスイブね・・・」


と、ミウは言葉にする。


「そうだな。もう、そんな季節か」


と、ヨウコは言葉にする。

「そういえば・・・ヨウコは男を作るって、目標を立ててたじゃない?それはどうなの?」

と、ミウは話題を変えている。

「男を作るってのは、そんな簡単じゃねーよ。つーか、田中の事、最近は妙に思い出してよ・・・あれが「本当の恋」だったかなーって、懐かしく感じられてよ」

と、ヨウコは言葉にしている。

「だったら・・・ヨウコの方が探せばいいんじゃない?田中さん」

と、ミウは献策する。

「だけどよ・・・逃げてった男だからな・・・」

と、ヨウコは言葉にする。

「それは、そうか・・・」

と、ミウも言葉にする。


と、その時、ガチャリと音がして、バー「Mirage」の扉が開いた。


そこに一人の男が立っていた。白の上下のスーツに白のハット・・・一見してヤクザ風の細身の男が気色の悪い笑顔をして、立っていた。


「ヨウコ・・・探したぜ・・・お前、こんなところに逃げ込んでいたんだなあ」

と、その男は、ヨウコの横に来ると、そう言った。

「お前は、「女衒のテツ」・・・」

と、ヨウコは息を飲みながら、言葉にする。

「ヨウコ、お前、俺に500万円の借金があるの・・・よもや忘れてはいないよな?」

と、女衒のテツは言葉にした。

「何を言ってるの?あなたへの借金、500万円は、綺麗さっぱり返したじゃない?」

と、ヨウコは言う。

「お前よー借金ってのは、借りっぱなしだと利子がついて、増えるってのを知らねえのか?」

と、テツは言う。

「俺のところの利子は高いからよ・・・まだ、おまえには、500万円の貸しがあるんだよ。それ、即刻、返してくれや」

と、テツは言う。

「そんなお金・・・今は無いよ」

と、ヨウコは言う。

「だったら、いつも通り、働いて返してくれや。ああ、大丈夫、俺、ソープには顔利くからよ。これまで通り、高級ソープで看板娘、やってくれりゃあ、いいから」

と、テツは言う。

「お前のファンが待ってるんだよ。俺もお前を管理してたマネージャーだからよ。各所で言われちゃってよ、お前、ニーズすげえあるんだよ。人気者だな」

と、テツは言う。

「冗談じゃねー。俺はもう、ソープから足は洗ったんだ。二度と行くか、そんなところ」

と、ヨウコは激昂する。

「おめえ、この日本って国は仕事の方が人を呼んでくれるんだよ。おまえはソープの仕事が一番似合ってる。ファンも多い。だからよ、悪いことは言わねえ、復帰してくれ」

と、テツは言う。

「いやだって言ってるだろ!俺は二度とあんな仕事はゴメンだ」

と、ヨウコは強く言う。

「そうか・・・こっちが下手に出てるうちが華だぜ・・・そういうことなら、仕方ねえ。兵隊揃えて力ずくで復帰の後押しと行くしかねえな。お前がそういう態度ならよ」

と、テツは言う。

「一週間やるよ。ちょうど来週の今日はクリスマスイブだ。いい贈り物を高級ソープにしてえからよ。イブに兵隊揃えて来るから、そのつもりでいろよ」

と、テツは言う。

「言っておくが逃げても無駄だ。俺のアダ名知ってるよな、ヨウコ。「すっぽんのテツ」とは俺の事。一度食いついたら絶対離れねえ・・・わかったな」

と、テツは言う。

「じゃ、イブの晩を楽しみにしてるぜ。それからヨウコ。ソープに送る前に一度お前を抱かせてくれ。ソープに出る前に予行演習が必要だろ。へ、楽しみだぜ、それがよ」

と、テツは言う。

「そーか。今年のクリスマスイブの贈り物は、お前と一発出来ることだな。お前の柔肌・・・気持ちいいからな。今から楽しみだぜ・・・じゃ、ヨウコ、あばよ」

と、テツは言い残し、店を出て行った。

「くそー・・・」

と、ヨウコは歯ぎしりをしている。


その様子にミウは・・・ある考えを思いついていた。


「ヨウコ!」

と、ミウはヨウコに声をかける。

「何だ?」

と、ヨウコは少し気分が荒れている。

「わたしに一つだけ考えがある・・・それをやらせてくれない?」

と、ミウはヨウコに言う。

「考えって、何だよ」

と、ヨウコはつっけんどんに言う。

「ヨウコのこの状況を・・・あの「女衒のテツ」って奴をなんとか出来るかもしれない・・・」

と、ミウは言う。

「マジか、それ・・・」

と、ヨウコは思わず、ミウの肩をつかむ。

「わからない・・・わからないけど、試す価値はあると思うの」

と、ミウは言う。

「わかった・・・どうせあいつは・・・逃げ隠れしても、絶対に俺を見つけに来る・・・それが嫌で逃げまわっていたんだけど・・・もう逃げまわるのは飽き飽きしたからな」

と、ヨウコは言う。

「それで決着をつけようじゃないか。ミウを信じてみるよ。俺はもう逃げねえ」

と、ヨウコは言葉にする。

「ヨウコ・・・わたしを信じて・・・」

と、ミウは言う。

「ああ・・・俺はおまえだけは、信じるよ。お前だけはな・・・」

と、ヨウコはミウの目を真正面から見て、そう言った。


ミウはすぐに自分のアパートに帰ると、頭を整理してから、サトルの携帯にメールした。

「ちょっと緊急事態があるの。電話していい?」

と、ミウがメールすると、すぐに、

「うん、いいよ。大丈夫」

と、メールが返ってきた。


ミウはすぐに携帯電話を取り、サトルに電話する。

「もしもし、サトル・・・ごめん、こんな夜遅くに」

と、ミウが言う。

「大丈夫。起きてたから」

と、サトルは答える。

「突然なんだけど・・・サトル、以前、何かあったら、何でも頼んでくれって言っていたわよね?」

と、ミウが言葉にする。

「ああ・・・確かに。大丈夫だよ、それ」

と、サトルは言葉にしてくれる。

「緊急事態なの。わたしの親友がソープランドに売られそうなの」

と、ミウは状況を手短に説明する。

「わたしは親友の為に、それをなんとか阻止したくて・・・でも、手が思いつかなくて、サトルに頼む以外手はないの」

と、ミウは言う。

「了解・・・まあ、この仕事をうまく出来れば・・・結果的にミウの為になるんでしょ?」

と、サトルは言う。

「うん。わたしの為に、この仕事、引き受けてくれる?」

と、ミウが言うと、

「もちろん。全然大丈夫。大船に乗ったつもりで、いて、ミウ・・・僕はこれからは、僕が大切にしている人達の為に仕事をする・・・そう決めたんで、全然オッケー!」

と、サトルは言う。

「だから、今、僕が一番大事だと考えている、ミウの為に、僕は仕事をするんだ。新たに生まれ変わった新しい僕としてね」

と、サトルは言う。

「大丈夫、全然心配しなくて、大丈夫だから・・・あなたの笑顔が見たいから」

と、サトルは言ってくれる。

「サトル・・・」

ミウは胸がいっぱいになって、言葉を出せなかった。

「ミウ・・・少し時間くれる?折り返し電話するから、ほんのちょっと待って・・・」

と、サトルは言ってくれる。

「ミウ・・・素敵な仕事を僕にくれて・・・ありがとう」

と、サトルは言って、電話は切れた。

「サトル・・・」

胸が一杯になった、ミウは、そのサトルの言葉に、涙を流していた。


数十分後、ミウの携帯にサトルから電話がかかってきた。

「ええと、細かい情報の確認させて・・・その女衒の男・・・「女衒のテツ」だけど・・・本名わかる?それと過去使っていた電話番号の情報とかあるかなあ?」

と、サトルはテキパキと情報を確認してくる。

「えーと、その情報・・・わたしの親友ヨウコって言うんだけど、そのヨウコに確認してみるから・・・折り返し電話するわね」

と、ミウもテキパキと対応し・・・すべての処理は終わりを迎えた。


「じゃ、そういうことで・・・必要な情報はこちらから流すから・・・安心していてくれ・・・ということだって。ま、大丈夫っしょ」

と、サトルは言葉にしていた。

「ミウ、もう、僕は大丈夫だ・・・それにこの仕事を完璧にこなせれば・・・それこそ本格的な復活の契機にすることが出来るしね」

と、サトルは言葉にしてくれる。

「この仕事をきっかけに、僕は完全に蘇る・・・もう「鬱病」なんて誰にも言わせることはないから」

と、サトルは言葉にしてくれる。

「ありがとう。ミウ・・・僕は素敵なパートナーに出会えたみたいだ・・・」

と、サトルは言い、

「じゃ、また、連絡するね・・・」

と言って、サトルからの電話は切れた。


ミウは泣いていた・・・。頼れる大人の男に復活したサトルに、涙が止まらくなっていたのだ。


嬉しい感情だけに、ミウはただただ泣くだけだった・・・。


つづく


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