若いころ3流の水泳選手の私も、競泳と聞けば血が騒ぐ。今回の北京オリンピックの競泳は、冥土の土産には少々早すぎるが冥土の土産になりそうだ。
今から36年前のミュンヘンオリンピックで、アメリカのスピッツ選手(当時23歳)が競泳で7種目獲得したときは、今後これを抜くような選手は中々出ないだろうと思っていた。しかし今回の北京オリンピックでは、アメリカのフェルプス選手が大会前から8冠を獲るのではと新聞紙上をにぎわしていた。果たしてフェルプス選手は、夢のような8冠を獲得できるか興味津々で見守っていた。個人種目ばかりであれば、それは可能かも知れないが団体のリレーがあるので運もなければならない。リレーで誰か引継ぎでミスをすれば失格になり、はいそれまでよ。
10日の400m個人メドレーを皮切りに、11日400mリレー、12日200メートル自由形、13日200mバタフライ、800mリレー、15日200m個人メドレー、16日100mバタフライと金メダルを獲得していく。特に100mバタフライは負けたのでは?と思うくらい僅少差で、彼のゴールタッチの上手さで金メダルを獲ったようなものだ。これで7冠を獲得したことになり、残るはあと一つ17日の400mメドレーリレーだ。アメリカ、オーストラリア、日本の三国で熾烈なデッドヒート争いを繰り広げた。結末はアメリカが世界新記録で優勝。2位はオーストラリア。日本は北島の頑張りで一時首位に立つも、前回に続き銅メダル。
これでフェルプスは8冠に輝き「水の怪物」から「水の王者」の称号を得た。8冠の内、7冠が世界新記録とは絶句してしまう。あの水着レーザー・レーサーが寄与しているのは間違いないが、それにしても凄い男だ。
オリンピックの競泳は、予選、準決勝、決勝とメダルを獲るには3回泳がねばならない。決勝をにらんで調子を高めていくのだが、これも大変なことだ。遅すぎれば予選落ちになるかも知れない。理想の泳ぐコースは4、5コースである。左右の相手を見ながら泳ぐことが出来、波の影響が少ない利点がある。フェルプスはどれだけスタミナがあるのだろうか。物凄い練習に裏打ちされているからこそ、これだけの種目に出る気が起こるのだろうか。“水の超人”と言われたイアン・ソープ(オーストラリア)は、まだ若かったのに引退したが、フェルプスは次のオリンピックも出る気、満々だ。次の目標は?「今までやっていない種目、練習方法に挑戦する。次の4年間は楽しいものになるだろう」だって。
北島選手も彼を見習って欲しいと思う者は、私でけではないだろう。究極の平泳ぎを会得し、引退するにはもったいない話だ。まだ彼は引退するとは言っていないが、なんとなくそんな気がしてならない。
フェルプスにはスピード社から、北京オリンピックでの8冠に対し、100万ドルの報奨金が贈られることが決まっているが決して高い金額とは思わない。だってゴルフで優勝してもそれくらいの賞金を獲得できるもの。
[参考]
マイケル・フェルプス(Michael Phelps、1985年6月30日 生まれ)身長193センチ、体重88キロ。
[オリンピック でのメダル獲得一覧]
種目 男子 競泳
金 2004年 100m バタフライ
金 2004年 200m バタフライ
金 2004年 200m 個人メドレー
金 2004年 400m 個人メドレー
金 2004年 4x200m フリーリレー
金 2004年 4x100m メドレーリレー
金 2008年 200m 自由形 1分42秒96(世界新記録)
金 2008年 100m バタフライ 50秒98
金 2008年 200m バタフライ 1分52秒03(世界新記録)
金 2008年 200m 個人メドレー 1分54秒23(世界新記録)
金 2008年 400m 個人メドレー 4分3秒84(世界新記録)
金 2008年 4x100m フリーリレー 3分8秒24(世界新記録)
金 2008年 4x200m フリーリレー 6分58秒56(世界新記録)
金 2008年 4x100m メドレーリレー 3分29秒34(世界新記録)