このたび「新都市」という雑誌の12月号に
「遊学城下町松代歴史と文化を活かしたまちづくり」
と題して松代のまちづくりの展望を書かせていただきました。
その中で「歴史まちづくり法」に関連する提言をした部分を
抜粋してご案内いたします。
「歴史まちづくり法」の適用による松代のまちづくりを展望
NPO法人夢空間松代のまちと心を育てる会
行政や住民による松代のまちづくりは大きく進展し、全国的に行われた平成の大合併で周辺部となった地域の振興をどのようにしていったらよいのか、松代にモデルを求める市町村が増え、全国各地からの視察が増えてきている。しかしながら、松代においても少子高齢化が進行し、今後のまちづくりの課題も多い。そこで松代が現在抱えているまちづくりの課題を整理し「歴史まちづくり法」の松代の適用を視野に入れながらその課題にいかに取り組んでいったらよいか整理してみたい。
歴史遺産の集積
松代は地域全体が歴史的遺産の集積地であり個別の文化財保存を考えるだけでなく、地域全体の保全をトータルに考え、その上で個別の保存対策を考える必要がある。その意味でも今年11月に施行された「歴史まちづくり法」は松代にとって願ってもない新たな法律である。
①歴史的建造物の保全と活用
松代町内にある江戸から昭和にかけての保存したい歴史的建造物も、所有者の高齢化や無人化によって保全をするのが難しくなってきている。歴史的建造物の悉皆調査を早急に行い、その現状を把握して残すべき歴史的建造物の保全活用策を立てたい。そのためにも松代全体を歴史的風致地域として歴史まちづくり法を松代に適用し、総合的なビジョンを立てた上で、個々の歴史的建造物の保全活用を図りたい。歴史的建造物の活用も街並み環境整備事業などの国の補助事業を活用して整備すると今まで物販が出来なかったり、営業的な取り組みが出来ないなどの制約があったが歴史まちづくり法の適用によって制約も緩やかになり活用の幅も広がっていくと思われる。松代では武家屋敷の山寺常山邸、樋口邸、前島邸などの整備が図られているが、観光客にとっても、地元住民にとっても、どこも同じような活用では魅力に欠けてしまう。食事処や喫茶空間、ギャラリー、ふるさと偉人館、体験工房、お土産や地場産品販売、武家屋敷体験宿泊所、観光客や地元の人々のふれあい交流空間などの民間活力の活用によって多様な活用がなされていけば松代の魅力は飛躍的に増していく。今後保存整備活用が予測される金箱邸、酒井邸、真田勘解由邸、大草邸、八田邸、松下邸等を民間活力も導入しながら魅力ある整備を図っていきたいものだ。
②増えてきている空き家の現状調査を行なって、有効活用のために田舎暮らしを志向する都市部の人々に貸し出したりする仕組みを構築する必要がある。
③地割、町割の保全
松代は江戸時代の絵地図を片手に迷わず歩けるほど、江戸時代の道路網や、地割、町割が今日によく伝わっている。特に武家屋敷地域だった地区においては伝統的な環境がよく保全されている。現在では4町が長野市伝統環境保全地区指定されているが、国の重要伝統的建造物郡保存地区指定も視野に入れて、更なる保全を図りたいところだ。
④泉水路の保全と復元
松代には江戸時代に整備された水路網が今日まで良く伝わっている。個人の庭の池から次のお宅の池につながる水路網(泉水路)は2008年4箇所が国の登録記念物として登録され貴重な文化遺産として再認識されている。しかしながら上流地域の農業に伴う農薬使用や、下水道未整備等による水質の悪化、水量不足、池の管理(泥あげなど)が行き届かないなどの理由で、池を潰したりして水路網が途中で切れてしまう事例も増えてきている。現状調査をした上で、里山保全や井戸掘りなどによる水質の向上、水量確保等の対策を講じた上で泉水路や泉水の復元を図りたい。
⑤里山の保全と活用
松代は三方が山に囲まれ、北には千曲川が流れていて、自然が豊かな地域である。周辺の里山においても高齢化が進み、農地も休耕されたりして荒地が増えつつある。しかしながら清野、西条、豊栄、東条、寺尾各地区は古代からの歴史がある地域であり、歴史的文化財も豊富にある。再度歴史的文化遺産を再調査し、歴史遺産を保全して活用していく方策を立てたい。エコツーリズム、グリーンツーリズムなどへの関心が高まる中、松代の里山も多いに活用を進めたい。トレッキングコースの整備やゆるやかな里山歩きコースの整備や里山歩きツアー、収穫体験ツアー等の定着化を図ることによって、里山の魅力を高め、松代全体の中で里山の価値を高める取り組みがほしい。
⑥道路の真ん中にある川の復元
江戸時代の絵師が描いた松代の町内絵図を見ると川が道路の真ん中を通っている。時代とともに川は道脇に寄せられていった。現在松代の裏柴町に道路のほぼ真ん中に川が流れている地域がある。この水路はすでにコンクリートブロックで整備されていているが、石積みの水路に復元することによって情緒あふれる水路によみがえり、地域の人々の散歩コースとしても心いやされ、観光客にも喜ばれるまち歩き人気スポットになるであろう。
⑦松代城の楼閣復元
松代城は日本100名城の一つに数えられている国史跡である。文化庁の補助によって太鼓門などの復元整備が図られてきた。もともと天守閣はなかったようであるが、楼閣は絵図などで確認されている。写真や設計図が出てこないと復元は難しいと言われているが、町のシンボルとして楼閣が欲しい。
⑧真田宝物館の建て替え
真田家の宝物を保存し公開する長野市真田宝物館も老朽化し、建て替えが計画されている。真田宝物館は松代全体を博物館として捉える「松代まるごと博物館構想」からすると中枢の博物館である。松代周辺部の里山や、武家屋敷、町屋、寺町ゾーンにある歴史的遺産をサテライトの拠点として町全体を博物館とみなすことで町全体の活性化を目指している。歴史まちづくり法の適応によって真田宝物館を建て直し、松代まるごと博物館の中枢センターとしての機能を持たせたい。
⑨電線の地中化
松代は歴史的文化遺産が集積し、街並み環境整備事業で街並みも整備されてきて映画のロケ地としても活用されるようになってきている。しかしながらせっかく整ってきた街並みも電線が張り巡らされて情緒を壊している場所も多い。そこで、歴史まちづくり法の適用により歴史的街並みの人気スポットの電線地中化を図りたい。
⑩住民参加のまち歩きガイド養成
真田宝物館を松代まるごとミュージアムのコアセンターとして確立させて、周辺に配置したサテライトミュージアムとをつなぐ「発見の小径」を整備し、まち歩きを促進して町の回遊性を高め賑わいを創出していくために住民参加のまち歩きガイドを養成したい。町内数か所にまち歩きガイドの拠点を配置し町民みんなが学芸員となって松代のまちを紹介し、松代のファンづくりをしリピーターを増やし地域を活性化させたい。
以上の提言をさせていただきました。
ソフト事業の提言とともに
少しでも具体化できることを願っています。
「遊学城下町松代歴史と文化を活かしたまちづくり」
と題して松代のまちづくりの展望を書かせていただきました。
その中で「歴史まちづくり法」に関連する提言をした部分を
抜粋してご案内いたします。
「歴史まちづくり法」の適用による松代のまちづくりを展望
NPO法人夢空間松代のまちと心を育てる会
行政や住民による松代のまちづくりは大きく進展し、全国的に行われた平成の大合併で周辺部となった地域の振興をどのようにしていったらよいのか、松代にモデルを求める市町村が増え、全国各地からの視察が増えてきている。しかしながら、松代においても少子高齢化が進行し、今後のまちづくりの課題も多い。そこで松代が現在抱えているまちづくりの課題を整理し「歴史まちづくり法」の松代の適用を視野に入れながらその課題にいかに取り組んでいったらよいか整理してみたい。
歴史遺産の集積
松代は地域全体が歴史的遺産の集積地であり個別の文化財保存を考えるだけでなく、地域全体の保全をトータルに考え、その上で個別の保存対策を考える必要がある。その意味でも今年11月に施行された「歴史まちづくり法」は松代にとって願ってもない新たな法律である。
①歴史的建造物の保全と活用
松代町内にある江戸から昭和にかけての保存したい歴史的建造物も、所有者の高齢化や無人化によって保全をするのが難しくなってきている。歴史的建造物の悉皆調査を早急に行い、その現状を把握して残すべき歴史的建造物の保全活用策を立てたい。そのためにも松代全体を歴史的風致地域として歴史まちづくり法を松代に適用し、総合的なビジョンを立てた上で、個々の歴史的建造物の保全活用を図りたい。歴史的建造物の活用も街並み環境整備事業などの国の補助事業を活用して整備すると今まで物販が出来なかったり、営業的な取り組みが出来ないなどの制約があったが歴史まちづくり法の適用によって制約も緩やかになり活用の幅も広がっていくと思われる。松代では武家屋敷の山寺常山邸、樋口邸、前島邸などの整備が図られているが、観光客にとっても、地元住民にとっても、どこも同じような活用では魅力に欠けてしまう。食事処や喫茶空間、ギャラリー、ふるさと偉人館、体験工房、お土産や地場産品販売、武家屋敷体験宿泊所、観光客や地元の人々のふれあい交流空間などの民間活力の活用によって多様な活用がなされていけば松代の魅力は飛躍的に増していく。今後保存整備活用が予測される金箱邸、酒井邸、真田勘解由邸、大草邸、八田邸、松下邸等を民間活力も導入しながら魅力ある整備を図っていきたいものだ。
②増えてきている空き家の現状調査を行なって、有効活用のために田舎暮らしを志向する都市部の人々に貸し出したりする仕組みを構築する必要がある。
③地割、町割の保全
松代は江戸時代の絵地図を片手に迷わず歩けるほど、江戸時代の道路網や、地割、町割が今日によく伝わっている。特に武家屋敷地域だった地区においては伝統的な環境がよく保全されている。現在では4町が長野市伝統環境保全地区指定されているが、国の重要伝統的建造物郡保存地区指定も視野に入れて、更なる保全を図りたいところだ。
④泉水路の保全と復元
松代には江戸時代に整備された水路網が今日まで良く伝わっている。個人の庭の池から次のお宅の池につながる水路網(泉水路)は2008年4箇所が国の登録記念物として登録され貴重な文化遺産として再認識されている。しかしながら上流地域の農業に伴う農薬使用や、下水道未整備等による水質の悪化、水量不足、池の管理(泥あげなど)が行き届かないなどの理由で、池を潰したりして水路網が途中で切れてしまう事例も増えてきている。現状調査をした上で、里山保全や井戸掘りなどによる水質の向上、水量確保等の対策を講じた上で泉水路や泉水の復元を図りたい。
⑤里山の保全と活用
松代は三方が山に囲まれ、北には千曲川が流れていて、自然が豊かな地域である。周辺の里山においても高齢化が進み、農地も休耕されたりして荒地が増えつつある。しかしながら清野、西条、豊栄、東条、寺尾各地区は古代からの歴史がある地域であり、歴史的文化財も豊富にある。再度歴史的文化遺産を再調査し、歴史遺産を保全して活用していく方策を立てたい。エコツーリズム、グリーンツーリズムなどへの関心が高まる中、松代の里山も多いに活用を進めたい。トレッキングコースの整備やゆるやかな里山歩きコースの整備や里山歩きツアー、収穫体験ツアー等の定着化を図ることによって、里山の魅力を高め、松代全体の中で里山の価値を高める取り組みがほしい。
⑥道路の真ん中にある川の復元
江戸時代の絵師が描いた松代の町内絵図を見ると川が道路の真ん中を通っている。時代とともに川は道脇に寄せられていった。現在松代の裏柴町に道路のほぼ真ん中に川が流れている地域がある。この水路はすでにコンクリートブロックで整備されていているが、石積みの水路に復元することによって情緒あふれる水路によみがえり、地域の人々の散歩コースとしても心いやされ、観光客にも喜ばれるまち歩き人気スポットになるであろう。
⑦松代城の楼閣復元
松代城は日本100名城の一つに数えられている国史跡である。文化庁の補助によって太鼓門などの復元整備が図られてきた。もともと天守閣はなかったようであるが、楼閣は絵図などで確認されている。写真や設計図が出てこないと復元は難しいと言われているが、町のシンボルとして楼閣が欲しい。
⑧真田宝物館の建て替え
真田家の宝物を保存し公開する長野市真田宝物館も老朽化し、建て替えが計画されている。真田宝物館は松代全体を博物館として捉える「松代まるごと博物館構想」からすると中枢の博物館である。松代周辺部の里山や、武家屋敷、町屋、寺町ゾーンにある歴史的遺産をサテライトの拠点として町全体を博物館とみなすことで町全体の活性化を目指している。歴史まちづくり法の適応によって真田宝物館を建て直し、松代まるごと博物館の中枢センターとしての機能を持たせたい。
⑨電線の地中化
松代は歴史的文化遺産が集積し、街並み環境整備事業で街並みも整備されてきて映画のロケ地としても活用されるようになってきている。しかしながらせっかく整ってきた街並みも電線が張り巡らされて情緒を壊している場所も多い。そこで、歴史まちづくり法の適用により歴史的街並みの人気スポットの電線地中化を図りたい。
⑩住民参加のまち歩きガイド養成
真田宝物館を松代まるごとミュージアムのコアセンターとして確立させて、周辺に配置したサテライトミュージアムとをつなぐ「発見の小径」を整備し、まち歩きを促進して町の回遊性を高め賑わいを創出していくために住民参加のまち歩きガイドを養成したい。町内数か所にまち歩きガイドの拠点を配置し町民みんなが学芸員となって松代のまちを紹介し、松代のファンづくりをしリピーターを増やし地域を活性化させたい。
以上の提言をさせていただきました。
ソフト事業の提言とともに
少しでも具体化できることを願っています。