OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

つながらない権利

2024-12-22 23:57:03 | 労働法

先日「労働基準関係法制研究会 」の資料を見ていたところ「つながらない権利」のことが議論されており、面白いと思いました。審議会の資料をみると、情報通信技術による常時アクセス可能性からの労働者の保護の文脈で論じられるのが、いわゆる「つながらない権利」の問題である。諸外国ではフランスにおいて、2016年の労働法典改正により、法制化がなされている。 時間や場所にとらわれない働き方の拡大を踏まえ、労働者の心身の健康への影響を防ぐ観点から、勤務時間外や休日などにおける業務上の連絡等の在り方について、どのように考えるかとされ、各国の制度制定状況が整理されています。

現状制度があるのは、フランス、スペイン、イタリア、ベルギーとあり、ドイツ、EU、イギリス、アメリカは制度はないものの検討はされており、特にEUは、2021年1月の欧州議会で「つながらない権利に関する欧州委員会への勧告に係る決議を採択」しています。

つながらない権利が提唱されたのは2002年頃のようで、その理由はもちろんネットやメールなどが当たり前になってきたということで、さらにその後SNSやLINEなども一般的になり、確かにいつでもどこでも繋がっているという状況になったのですが、いつでも仕事の連絡が可能になったという状況にもなったというわけです。

ドイツがなぜ法制化していないかということが同資料には載っていますが、2つの理由から立法処置の必要性自体について懐疑的な立場とされています。1つは労働者は労働時間外の自由時間において使用者等からのアクセスに応じる義務はなく、使用者は自由時間中の労働者に労務提供を求めてはならないことについて配慮義務を負っているため「つながらない権利」はすでに法的に保障されているということです。もう一つは使用者や顧客等からの常時アクセス可能な状態から労働者をどのように保護するかは各事業所の実情に応じて決定されるべき問題であり個々の事業所レベルの判断にゆだねるのが適切という考えです。

労働基準関係法制研究会の12月10日の報告書案では、考え方を「整理し、業務方法や事業展開等を含めた総合的な社内ルールを労使で検討していくことが必要となるため、話し合いを促進していくための積極的な方策(ガイドラインの策定等)を検討することが必要と考えられる。」とされています。つながらない権利は「労働からの解放に関する規制」の中で休憩、休日、勤務間インターバル、年次有給休暇と並んで取りあげられており、今後の労務管理の新たなテーマとなると思います。

私自身の経験で恐縮ですが、今から20年以上前にまだスタッフも数名という時代に、もともと受講生で親しかったスタッフだったということもあり、休日にショートメールをしたところ、後で「休日にメールされるのは嫌だ」といっているというのが耳に入り、それからはかなり気を遣ってきたと思います。あの頃はまだ連絡できるツールもそれほど多くなかった時代ですが、確かに今はいくらでも連絡でき、また相手が確認したかどうかも既読で分かる場合もあるのですから、いつ会社から連絡があるかわからないと思えばやはり休まらないのだろうと思います。現在うちの事務所では在宅勤務の日の労働時間以外はPCを開いてはいけないことになっているので、私は翌日事務所にほとんどいないなどの場合夜かなり遅い時間でも「おはようございます」とはじまるメールをしています。これは翌日の朝見てるんだよね?というメッセージなのですがやはりだめでしょうか。チャットは緊急時以外は時間外に連絡するのは役員くらいで、時間外の連絡にならないように注意しています。しかし、このところ外出も多く、事務所に夜まで戻れないときなど、伝えようとして既にスタッフは退勤していることも多く、その時間帯にはチャットは厳禁と考えているのでなかなか伝えるチャンスがなくて困るということが結構あるのが実態です。その場合は付箋にメモをしてデスクに貼るというアナログな対応にしています。

さて、今年も残り10日を切るところまで来ました。今年は事務所移転という大仕事も無事終了し、来年は落ち着いて少しのんびりと仕事をしたいと思っています。と言っても1月から2月にかけてかなりセミナーの仕事が多く入っており、体調管理をしっかりして乗り切りたいと思います。まずは今年1年間ブログを読んでいただきまして有難うございました。来年もよろしくお願いします。来週は年末年始期間ということでブログはお休みしますのでよろしくお願いします