Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

噛み合わない真実(2)

2016-01-20 01:00:00 | 雪3年4部(賭け~温かな痕跡)


授業終了後、なぜか雪は柳瀬健太に呼び止められ、空いている教室へと連れて来られた。

そこに居たのは糸井直美で、彼女は不本意そうな表情でこう言ったのだった。

「だからあたしは自販機の所に行って来ただけなの!

そしたらその間に誰かがあたしの席に過去問を置いていったんだって!

何度説明したと思ってるんですか!」




いきなりそう説明した直美の話を、白目になって聞く柳と雪。その隣には健太と典。

直美は身振り手振りを交えながら、健太に向かって声を荒げている。

「それで騒ぎが収まったら返そうと思っていたんですよ!」



するとそれを聞いた典が、直美に向かって質問した。

「それじゃどうして雪ちゃんに返さずに破いたの?」



思わずビクッと怯む直美。

「それは‥!」



直美は俯きながら、苛ついた口調で言葉を続けた。

「突然変な噂が立って‥

事が大きくなった上に、雪ちゃんとは元々仲が良くなかったのもあって‥

あたしの仕業だって言われるかと思って‥つい‥」




追い詰められた直美は、柳を始めとする「雪側」の人間に向かって怒鳴り散らした。

「きっとこうなるだろうと思ったからよ!皆で寄ってたかってどうしようって言うんですか?!」

「は~いストップストップ~」「いや俺は赤山ちゃんをガードしに‥この男がいるから‥



すると柳瀬健太は幾分大仰な態度で、直美の前に躍り出た。

「とりあえず糸井は赤山に謝った方が良いな?な?ほらほら!

まぁ丸く収めようぜ?だから俺、こういった場を設けたんだよ」




「これからはこんなこと無いようにな!ははは!」

「どういうことですか?!」



すると健太のそんな態度が、直美の逆鱗に触れたようだ。

「今後こんなこと無いようにって‥あたしが何かしたとでも?!

呆れますよ本当!ありえない!」
「うおお!」



直美はそう言って健太の手を振り払うと、皆に向かってこう言い切った。

「あたしの話を信じようが信じまいがどうぞご勝手に!

あたしは間違って無いから!!」







直美はそう言ったきり、一度も振り返らず教室を後にした。

その後姿を、柳瀬健太はまるで軽蔑するかのような目付きで見ている。



直美が去ってから、健太は直美のことをブツブツ悪く言った。

すぐに得になる方に立場を変える、この人の常套手段だ。

「アイツだって同じ穴のムジナだな。持ってる過去問独り占めしやがって」

「あ~はいはい、わりと仲良かったのに誰かさんも貰えなかったですもんねー赤山ちゃん行こー

「クッソこいつ‥」



しかしそんな健太の本性など、もう皆お見通しである。

柳は勿論、皆健太には辟易していた。

「もう止めて下さい。健太先輩が直美さんにこんなことする理由なんて‥」



するとその雪の言葉に、異論を唱えた人間が一人。

「アンタ、おかしくない?」「え?」



黒木典だった。

典は雪の態度に違和感を覚え、それをすぐに皆の前で口に出す。

「だってアンタ学科長に話しに行ったのに、

どうしていきなり優しくなってるの?一番大騒ぎしなきゃいけないのはアンタのはずでしょ?」




雪は典の言葉を聞きながら、実際には話してないんだけど‥と真実を心の中で思ってみたが、

口には出さずに違う理由を説明した。

「直美さんの話聞いてみたら、本当っぽいから‥」

「あんな言い訳信じるの?大学生にもなって、誰が盗んでわざわざ他人の席に置くのよ?

それこそ陰謀説じゃないの!」




しかし典は聞く耳を持たない。

けれどここで、学科長の元に乗り込んだ健太の話をするわけにもいかない‥。

だって健太先輩が‥ 「赤山ぁ」



すると二人の間に、健太がまたしても割り込んで来た。

「俺がよ~~く説得してみるからよぉ、あんま気にすんな。な?」

「あ、触んないで」



健太は、いつも変なところで介入してくる。

雪は今の状況とこの場の空気の両方を読みながら、言い出すなら今だと決心した。



「健太先輩」



そう呼びかけて、胸を張った。

鋭く切れ長のその目が、健太を見据える。



そして雪は瞬きもせずに、一息でその言葉を言い切った。

「気を回して頂いてありがたいですが、もう結構です。

これは私の問題ですから、これ以上は関心を寄せないで頂けると幸いです」




その言葉を聞いた健太は、想像通り顔をしかめた。

「はぁ~~?」



しかし健太が暴言を吐く前に、ガード柳が雪の背を押しここからの退出を促した。

「そういうこと!どーしてこの人最近急になれなれしくしてくるんでしょ~ね~?

赤山ちゃん行こ!勉強会勉強会!」







教室の外には、佐藤や海など、雪主催の勉強会メンバーが彼女を待っていた。

胸の中にはわだかまりがまだ残っているが、雪は健太に背を向ける。

「‥‥‥」「行こう」






去り際に目にした健太の顔は、明らかに曇って口元には不満が現れていた。

彼に対する疑心のせいで、姿全体がどこか陰って見えるほどにーー‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<噛み合わない真実(2)>でした。

あ~モヤモヤしますね‥

しかし本当健太は信頼の置けない人間ですね(今更ですが)

コロコロ立場変えて、あわよくば青田過去問GETを狙ってるんでしょう‥

はやく‥はやく先輩!休学ノートに健太の名前を!!

そして柳が健太から雪を守るガードマン化している‥!

きっと電話で淳から頼まれたんだろうな。

柳、大好きな淳からの頼みだからはりきって「まかせとけ!」って引き受けたんだろうな。

‥と考えると微笑ましくてたまりません(笑)


次回は<私の傍には>です。


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噛み合わない真実(1)

2016-01-18 01:00:00 | 雪3年4部(賭け~温かな痕跡)
「ううう‥」



雪は携帯を握り締めながら小さく呻いていた。

先ほど久しぶりに連絡をくれた萌菜が食事に誘ってくれたのに、

グルワの集まりの為に断りのメールを入れなければならなかったからである。

「どーして会おうって連絡はこんな時ばっかり来るの‥萌菜‥申し訳ない‥



雪は溜息を吐きながら、携帯越しに教室内の風景を眺めてみた。

段差のある講義室の上段に座った雪からは、下段に座った学生達が良く見えるのだ。



特に目につくのが、一人で座る糸井直美と、彼女を見てヒソヒソと話をする黒木典とその友人だ。

「オフレコ」は今日中にも皆に広まるだろう。雪はじっと彼女らを眺めている。



糸井直美は所在なさそうに座っていた。

いつもは典を始めとした友人達とワイワイ楽しくやっているのに。



すると雪の視線を感じたのか、おもむろに彼女は後ろを振り返った。

そして雪が自分の方を見ていることを知ると、悔しそうに歯を食い縛って下を向く。



「‥‥‥‥」



直美は勢い良く前を向くと、それきり雪の方を見ようとはしなかった。

雪の心の中に、モヤモヤとした感情が膨らんで行く。

一体どういうことだろう



私が学科長に話をすると耳にした途端、訪ねて行って大騒ぎしたという柳瀬健太。

どう考えても愚かな泥棒のパターンなのに‥




でも、実際過去問を破いて捨てたのは糸井直美‥



何度考えてみても、辻褄が合わない。

雪は机に突っ伏して低い声を上げる。

「あ~‥頭イタ‥







雪は頭を机に付けたまま、ぼんやりと皆の方を眺めてみた。

皆この間の騒ぎなど無かったかのように、すました表情で座っている。

皆‥



皆はどう考えてるんだろう



雪は再び、一人で座る糸井直美の後ろ姿をじっと見つめた。

幾分投げやりな気分が胸を掠める。

このまま直美さんが盗んだということにしようか

そしたら、誰もそれ以上興味を示さないだろうか




このまま心に蓋をして、今の流れに身を任せるのも一つの方法だろう。

何をどうすべきかなんてマニュアルは無い。

雪自身も、明確な信念があるわけではないのだ。

ていうか、怒りを感じて私なりに誘導してみたけど、

絶対に捕まえて何をどうこうしようってのは無かったわけで‥




雪自身にも迷いが出て来ていた。

胸と頭の中に、モヤモヤとしたものが依然としてあるのは変わらない。

でも‥それでも‥



それでも心の奥で、「それはおかしい」と声がする。

いつだって雪は誤魔化せないその叫びに、翻弄されながら生きているのだ‥。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<噛み合わない真実(1)>でした。

短め記事で失礼しました!

モヤモヤしますね~‥。ここ最近ずっとですねこんな展開‥。早く脱出してほしい‥!


次回は<噛み合わない真実(2)>です。


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涙の理由

2016-01-16 01:00:00 | 雪3年4部(賭け~温かな痕跡)
タン!



A大学の構内に、萌菜隊長が降り立った!

「ははは!勉強ばかりしている哀れな子羊達め!私が食事を与えてやろうではないかっ!」



そう言った萌菜隊長の元に、哀れな子羊達がわさわさと集まり、皆涙ながらに隊長に感謝するだろう‥!

「ってなハズだったのに‥」



チーン‥

現実では、萌菜は携帯を片手に一人寒空の下であった。

萌菜は何度目かの携帯チェックをしながら愚痴をこぼす。

「太一、あのガキ返信遅いっつーの。雪は‥」



見ると、雪からのメールが届いている。

萌菜が心を弾ませながらそれに目を通すと‥。

ごめん!私今日はグルワの集まりがあってダメなのTT

今度おごるから!ほんっとにごめん!




あえなく撃沈‥。

チッ!



萌菜はくさくさしながらアテもなく構内を歩き始めた。

「おのれ~驚かせようと思ったのに~」



「今日はそういう星回りの日‥」



その時だった。

向こうに、見覚えのある女の子が見えたのは。



伊吹聡美。

萌菜は彼女の姿を見て、思わず声を上げた。

「おお!」



「ハッロ~!」



そう言って近づいて来る萌菜に、聡美はビクッと身体を強張らせた。

しかし萌菜はお構いなしに、フレンドリーな態度で話し掛けてくる。

「やっ!こんなとこで会うとは!おひさ~」

「あ‥どうもです‥いや‥こんにちは‥あたし太一から連絡貰って‥」

「おっ!アイツちゃんと連絡したんだ?」



するとその萌菜の言葉を聞いて、聡美が目を丸くした。

「え?」



その聡美の反応の意味を、瞬時に理解する萌菜。

「‥ああ、」



「今日は皆で集まって遊ぶってことにしたくて、太一にアンタにも連絡してって頼んだんだ。

ダイジョブ?気まずいことない?」




”気まずいことない?”その問いの真意が、聡美の心に深く刺さる。

「あ‥」



聡美はそれ以上言葉を続けることが出来ずに、ただそのまま固まった。

萌菜はそんな聡美の様子に気づかずに、軽い調子で言葉を続ける。

「てか太一ってガキのくせに何気にジラしたりするんだよねぇ~。

生意気なのが魅力っての?」




「あ、そうだ。アンタもファッションに興味があるんだよね。

アパレル関係のお店考えてるんだっけ?」




「ちょうど太一も仕事してることだし、一緒に来てみ?

遊びに来たついでに色々話もー‥」




萌菜がそこまで言葉を続けた時だった。

それまで黙り込んでいたその女の子が、急に話し出したのは。

「‥太一と」



「ん?」



萌菜はにこやかに、その続きを促す。

けれど聡美は引き攣った表情のまま、ただ下を向いていた。

「太一と萌菜さんは、すごく良く似合ってる」







さすがにこれには、萌菜も違和感を覚えた。

萌菜は聡美の肩にもたれかかっていた手を外し、若干キョドりながら首を傾げる。

「へ?」「あ、いやその‥萌菜さんはすごくカッコ良いし‥

背も高いし、大人っぽくて‥太一にもすごく良くしてくれるって思う‥。

あ‥あたしが言うのもおこがましいけど‥」




言葉を続ければ続けるほど、震えて行く声。

「だから‥太一のこと‥」



潤んでいく、瞳。

「よろ‥しく‥」



そこからあふれてこぼれる、彼女の恋心‥。





その涙の粒が落ちるのを、萌菜はスローモーションでも見るかのように目にしていた。

しかし気がついた時には、聡美は彼女に背を向け、そそくさとその場を後にする。

「あ‥あれっ‥ゴメン、風邪引いたかな?!もう行くね!」

「えっ?!」



呼び止める萌菜の声に、振り返りもしない聡美。

「ちょ、待ってよ!あの‥砂糖‥じゃない、聡美ちゃん!」



そのまま走って行ってしまった聡美の背中を、萌菜はあんぐりと口を開けてただ眺めていた。

え なに 今の‥



これはまずいぞ、と本能が告げている‥。

「わ‥私‥やらかしちゃっ‥た‥?」



萌菜は青い顔をしながら、その場で一人声を上げた。

あの涙の理由は、あの言葉の意味は‥。

えええ?どうしよ?!えええ



そしてそんな萌菜のことを、離れた場所から見ている一人の男が居た。

彼は勿論、先ほどの萌菜と聡美のやり取りも目にしているのである。



太一は目も口もポカンと開けながら、ただその場に突っ立っていた。

あの時聡美が流した涙の理由が、彼の心を支配して行く‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<涙の理由>でした。

聡美、泣いちゃいましたね~

そして今まで私、こんな流れだと思ってたんですが‥↓

萌菜、太一から聡美への恋心を相談聡美→太一への恋心を奮起させる為に故意に太一と仲良くしてみせる

という感じかと思ってたんですが、なんと全くの無自覚だったんですね‥。

そして最後の太一の驚いた顔これは一波乱ありそうですね~~


次回は<噛み合わない真実(1)>です。

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2016-01-14 01:00:00 | 雪3年4部(賭け~温かな痕跡)
「‥‥‥‥」



同期の話が一区切りつくと、雪は適当な言い訳を口にして一旦廊下へと出た。

胸中は絶賛モヤモヤ中である。

私の物をビリビリに破いて捨てたっていうんだから、

ムカツクのは間違いない。とことんバラしてしまいたいけど‥でも‥




糸井直美へ感じる憤り。

しかしそれと同じくらい、それを躊躇する気持ちが胸を占める。

いざ怒りを露わにしようとすると‥

どうしてもちょっと‥




その正体は、頭の端では思い至る。

思い至るが、それに達する為の確信が‥。

「おい」



下を向いていた雪の視線の先に、見覚えのある靴があった。

「あ、遠藤さん」



雪が挨拶をしようと口を開こうとすると、遠藤は周囲を気にしながら彼女の手を引いた。

「ちょっとこっち来い」



二人は壁際に移動すると、遠藤は小さな声で口を開く。

「お前がこの前言ってた頼み事だがな‥」



「ビンゴだったぞ」



遠藤の目は確信に満ちた眼差しをしていた。

その目を見ながら、雪は以前自分が遠藤に頼み事をしていたことを思い出す。

「あ」



遠藤は話を続けた。

「まさか学科長をマジで訪ねて来る人間が居るとは思わなかったよ」

「えっ?!」

「一目で分かったぞ。後ろめたいことがあるんだろうってな」



心の中にある靄の中から、確信が段々と顔を出す。

雪は続きを促した。

「それじゃ‥」

「ああ」



「柳瀬健太だ。

ヤツが学科長に「過去問泥棒の話はお耳に入っておられるでしょ?

学科のことが心配だから、どうか泥棒を捕まえて下さい」

って言いに来たんだ。ビックリする程のオーバーアクションでな」




確信は、核心を連れてやって来る。

雪はだんだんとハッキリしていく事態の真相を今、目の当たりにしていた。

「まぁ学科長は「こちらとしては把握して無い、学生達でわきまえながら‥」

とかなんとか言ってだな‥てか柳瀬はそもそもあの話をー‥」




それから遠藤が続ける言葉の続きを、雪はよく覚えていない。

彼が去り際、「とにかく、アイツ俺と年近いくせに何でああなのか分からんなと言っていたくらいーー‥。









雪の心は表情と共にフリーズしてしまったかのようだった。

その後授業を受けたものの、その内容は恐ろしい程サッパリ忘れてしまった。

「雪ねぇ~」



気がつけば、腕の中に小西恵が居た。

恵は雪に抱きつきながら、彼女のお姉さん的存在に甘える。

「あたし一睡も出来なかったよぉ~課題したり勉強したりでぇ~~」



「大学は大変だぁ~」



恵は雪の腕の中で、すりすりと頬や頭を摺り寄せた。

雪はそんな恵の頭を撫でながら、彼女が抱える重荷を痛いほど共感する。
(雪の目の下もクマで真っ黒だ)

「そうでしょそうでしょ‥」



けれど辛い状況ながら、どこか満足そうに見える恵。

彼女は腕の中で、束の間の安息に身を委ねている。



そんな恵の姿を見ている内に、抱えていたモヤモヤが、

雪も束の間吹き飛んでいく気がした。



雪は温かな気持ちで、ギュッと恵を抱き締める。

 



恵は嬉しそうに「へへ~」と声を出した。

雪の脳裏には、こちらを見てニコニコ笑っている幼き恵の姿が浮かぶ。

この子があんな子供だったのが、昨日のことみたいに感じる



けどこんなにも早く大学に馴染んでるなんて



雪は恵の頭を撫でながら、誇らしい気持ちが湧き上がるのを感じた。

いつだってハッキリして、芯の強い子



そしてそれと同時に思うのは、今の自分はどうなのかということだ。

私は‥



すると突然、恵がバッと身体を離した。

「あ、そうだ雪ねぇ!」



「蓮が大学に来たみたいなんだけど、会わずに帰っちゃったみたいなの」

 

恵の口から出た蓮の名を聞いて、雪は心の中にある気掛かりだったことを思い出す。

しかし恵は蓮の行動の真意が気になって、それどころではないようだ。

「どーしたのかなぁ?もしかして店で何かあったとかじゃないよね?!おじちゃんが病気だとか‥

「ううん、何も無いよ」






心に引っ掛かっていたそれを、口に出す時が来たのかもしれない。

雪は暫しの時を置いた後、とうとうそれを切り出した。

「恵」



「ん?」「うん‥」



それでもちょっと、自分を見つめるその無垢な瞳を前にすると、気持ちが若干怯んだ。

雪は苦い気持ちを押しながら、ポツリとこう口に出す。



「もう蓮とあんまり会うなって言うのは、

恵にとって失礼なことだっていうのはよく分かってるけど‥」




「蓮とアンタのためにも‥

私は、蓮がアメリカに戻って無事卒業出来れば一番良いって思うんだけど」




「恵はどう思う‥?」







恵はその大きな瞳を、雪の切れ長の瞳に向けながらその話を聞いた。

恵の心の中にも引っ掛かっていたその問題が、だんだんとあるべき方向へ転がり出していく‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<芯>でした。

雪ちゃん、遠藤さんに「学科長の元へ訪ねて行く人がいるかもしれない。その時は教えて下さい」と頼みごとをしていたんですね~。

ただその描写が無かったので、若干戸惑った私です‥。そこまで手を回していたとは‥恐ろしい子‥!


そして恵にとうとう切り出しましたね、雪ちゃん。

蓮はアメリカ戻るべきだと恵が言うのが一番効果ありますからね~。さぁどうなるか‥。


次回は<涙の理由>です。


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晴れない心

2016-01-12 01:00:00 | 雪3年4部(賭け~温かな痕跡)


鬼気迫る表情で雪が相対しているのは、終わらせなければならない課題達である。

集中! 集中! 集中!



燃え上がるゴォォという音が聞こえそうなくらい、雪の気迫は凄まじかった。

けれど心の中にある靄が、その炎を小さくする。

直美さんが‥うう‥気になるけど‥とりあえずPass



過去問盗難事件の容疑者が、雪の頭を悩ませる。

しかしそれとは関係なしに、目の前に積まれたタスクが彼女を追い詰めるのだ。

まだこんなに残ってる。終わらせにゃ‥



うああー



そしていつしか空が明るくなるまで、雪は勉強に励んだ。

鳥の囀りが朝の空に響く。



雪の父はむっつりと黙りこんだまま、いつまでも椅子に腰掛けていた。

持病の腰痛がこのところ特にヒドイのだ。



そんな父とは対照的に、母は出掛けるための準備に着々と取り掛かっていた。

家のことと自分のことを要領良くこなしていく。



そして母は、心配そうな顔で夫に声を掛けた。

「あなた、腰はどう?今日は家で休んで‥」

「!!」

 

すると夫は、クワッと目を見開きながら妻に対してこう言ったのだった。

「お前一人で店に立たせられるか!」



お前一人で行かせはしない、共に店に立とう‥!

そんな夫の言葉に、妻は目を潤ませる。

「あなた‥」



ジーンと感動する妻と、気まずくて咳払いをする夫。

そんな仲睦まじい夫婦の隣を、寝不足の娘が通り抜けて行く。

「学校行ってきまーす‥」



クマで目の下は真っ黒だ。店のことや父の腰のことは気になるが、

やるべきことが山積している今は、そうも言っていられない‥。

気掛かりだけど‥さ‥



雪は後ろ髪を引かれながら、大学へ登校した。

そして一限が始まる前の時間、この二人が肩を並べて座っている。



佐藤広隆と小西恵だ。

本来もう一人隣に座るはずなのだが、佐藤の右隣にはまだ誰も居ない。

 

チラチラと空席を見る佐藤に、小西恵が声を掛けた。

「静香さん来ないみたいですね」



思わず佐藤の口から、「はは‥」と乾いた笑いが漏れる。

するとそのタイミングで、携帯がメールを一通受信した。



急いで文面を確認する佐藤。

しかしそれは願っていた相手からではなかった。

先輩、静香さんどこに居るか知りませんか?



赤山雪からの、静香の所在を尋ねるメール。

佐藤はメールを見ながら、心の中がモヤモヤと煙っていくのを感じる。



彼女がどこに居るのか、もう授業には出てこないつもりなのか、それともこのままフェードアウトしてしまうのか。

尋ねたいことは佐藤の方こそ沢山あった。

佐藤は誰にも聞こえない声で、不貞腐れたようにこう呟く。

「‥知らないよ」



そして佐藤は携帯をポケットに仕舞った。

一方雪は、鳴らない携帯を持って首を傾げている。

「どうして返信が無いんだ?本渡さなきゃなのに‥

「雪ちゃん!」



すると同期の子が、後ろから声を掛けて来た。

「おはよ」「うん、おはよう」



「アンタ今日も朝ごはん抜いて‥?」



そう問う雪の質問には答えずに、同期は険しい表情をしながら身を屈めるようにして隣の席に座った。

そんな同期の様子に眉を潜める雪に向かって、その子は突然話を切り出した。

「直美さんだったらしいじゃん?」



雪の肝がヒヤリと冷える。

「‥へ?」



しかし同期は雪の様子には頓着せず、耳にした最新の情報を口にし始めた。

「直美さんだったんでしょ。そんな人だと思わなかったわ~。マジで極悪じゃない?

アンタにあんなこと出来るなんてさぁ」




「あたしたちが直美さんとトラブったのにも、ちゃんと理由があるんだからねー?」



雪は固まりながら、その同期の子が話す言葉の一部始終を聞いていた。

そういえば、以前彼女達を見て自分が思ったことは‥。

三年生になってから直美さんと離れた子達。

変なゴタゴタがあったって聞いたような‥




元々彼女らが持っていた直美への不信感が、今回の事件で火が付いたようだった。

仕掛けたのは自分だが、事態はいつだって予測不能な方向へと転がって行く。



雪は苦々しい、晴れない気持ちで同期の話を聞いていた。

事が運んで行く程に、心の中が靄で煙って行くようだ‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<晴れない心>でした。

いたわり合う赤山夫婦でほっこりした回でしたね~



けれど物語全体としては、モヤモヤ~っとしたものが漂う回でした。

早くキッパリスッパリした話が読みたい‥!


次回は<芯>です。


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