帰り道、雪と太一は屋台に寄った。
太一が力尽きて帰れないと言ったからだ。
先ほどのハンバーガーはどこへやら、太一は雪の奢りということもあってガンガン食べた‥。
話を聞くと、太一はバスが来ないので地下鉄に乗ろうと、引き返している途中で雪と横山を見つけたらしい。
そして横山を殴ったことは、聡美には内緒にすると約束した。
雪はもくもくと食べる太一の横顔を見ながら、
先ほどから引っかかっている事について考えていた。
「ねぇ太一、青田先輩の携帯番号、知ってたりする?」
知っているけど、どうするつもりですかと太一は尋ねてきたが、
雪は言葉を濁した。
携帯を片手に、太一は「でも今通じないかもしれないっすよ」と言った。
「なんで?」
「青田先輩今海外にいるらしいんで、
たとえ通じたとしても国際電話になっちゃうかもしれないっすね。そうなると番号が違う可能性も‥」
じゃあいいや‥、と雪は番号を聞くのをやめた。
あきらめはやっ!と太一はツッコんできたが、
やはり電話より直接聞いた方がハッキリするだろう。
横山のあの言葉が蘇って来た。
青田先輩だって知ってるんだぜ?
あれが事実だとすれば、
青田先輩が黒幕だとすれば、
これは黙って居られないと思った。
プリント事件の時は無理矢理忘れようと心を抑えこんだが、
今回ばかりはこの状況を説明してもらわなければいけないと思った。
雪は拳を握った。
新学期が、もうそこまで近づいて来ていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
同じ頃、横山は鼻血を拭いながら夜道をひた走っていた。
走っても走っても、心に湧き上がる不安の影を振り切ることは出来なかった。
起訴されたら俺はどうなる?
い、いや赤山は許すと言ったじゃないか‥。それでも噂が立ったら‥
不安と苛立ち、そしてとりとめのない怒り。
横山は携帯電話を取り出すと、通話ボタンを押した。
何回目かのコールの後、「横山?」と通話先の主は電話に出た。
「先輩!」
横山はマシンガンのように喋り出す。自分の感情の、そのありのままの吐露を。
「何でこうなるんすか!先輩の言うとおりにしたのに全然ダメだったじゃないっすか!
全部先輩のせいッスよ!」
事態が飲み込めない、という通話主の言葉にも、横山はひたすら先輩のせいだと繰り返した。
「赤山は録音機まで持ちだして、告訴するって大騒ぎですよ!全部先輩のせいッスよ!
どうしてくれるんですか?!」
通話主は、君は一体何をやらかしたんだと静かに言った。
先輩の言うとおりに‥と横山がまた責めると、
携帯電話からは溜息が聞こえた。
「‥やめてくれ。もう疲れた。いつまで君の話を受け入れれば満足する?」
その言葉に、横山は沸々と湧いた怒りの全てをぶつけた。
「先輩こそ今更どういうつもりですか!さも俺の気持ちを理解してくれるように、
優しく色々俺に言っておきながら、先輩のせいで結局ダメだったじゃないっすか!なんとか言ってみて下さいよ!」
激昂する横山に対して、通話主は冷たい程静かに言った。
「君は、見せかけかそうじゃないかもまともに区別出来ないくせに、文句が多いね」
横山の脳裏に、球技大会での自分の言葉が蘇った。
「てめぇらは見せかけかそうじゃないかもまともに区別出来ないくせに、
デレデレデレデレしてんじゃねーよ!!」
言葉に詰まった横山に、通話主は静かに言った。
これで終わりだと言わんばかりに。
「今度は、君にこの台詞をお返しするよ」
電話は切れた。
そして横山は、新学期になっても大学に戻ってくることは無かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<代償の原因>でした。
次回は淳の視点での、球技大会後からの話です。
太一が力尽きて帰れないと言ったからだ。
先ほどのハンバーガーはどこへやら、太一は雪の奢りということもあってガンガン食べた‥。
話を聞くと、太一はバスが来ないので地下鉄に乗ろうと、引き返している途中で雪と横山を見つけたらしい。
そして横山を殴ったことは、聡美には内緒にすると約束した。
雪はもくもくと食べる太一の横顔を見ながら、
先ほどから引っかかっている事について考えていた。
「ねぇ太一、青田先輩の携帯番号、知ってたりする?」
知っているけど、どうするつもりですかと太一は尋ねてきたが、
雪は言葉を濁した。
携帯を片手に、太一は「でも今通じないかもしれないっすよ」と言った。
「なんで?」
「青田先輩今海外にいるらしいんで、
たとえ通じたとしても国際電話になっちゃうかもしれないっすね。そうなると番号が違う可能性も‥」
じゃあいいや‥、と雪は番号を聞くのをやめた。
あきらめはやっ!と太一はツッコんできたが、
やはり電話より直接聞いた方がハッキリするだろう。
横山のあの言葉が蘇って来た。
青田先輩だって知ってるんだぜ?
あれが事実だとすれば、
青田先輩が黒幕だとすれば、
これは黙って居られないと思った。
プリント事件の時は無理矢理忘れようと心を抑えこんだが、
今回ばかりはこの状況を説明してもらわなければいけないと思った。
雪は拳を握った。
新学期が、もうそこまで近づいて来ていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
同じ頃、横山は鼻血を拭いながら夜道をひた走っていた。
走っても走っても、心に湧き上がる不安の影を振り切ることは出来なかった。
起訴されたら俺はどうなる?
い、いや赤山は許すと言ったじゃないか‥。それでも噂が立ったら‥
不安と苛立ち、そしてとりとめのない怒り。
横山は携帯電話を取り出すと、通話ボタンを押した。
何回目かのコールの後、「横山?」と通話先の主は電話に出た。
「先輩!」
横山はマシンガンのように喋り出す。自分の感情の、そのありのままの吐露を。
「何でこうなるんすか!先輩の言うとおりにしたのに全然ダメだったじゃないっすか!
全部先輩のせいッスよ!」
事態が飲み込めない、という通話主の言葉にも、横山はひたすら先輩のせいだと繰り返した。
「赤山は録音機まで持ちだして、告訴するって大騒ぎですよ!全部先輩のせいッスよ!
どうしてくれるんですか?!」
通話主は、君は一体何をやらかしたんだと静かに言った。
先輩の言うとおりに‥と横山がまた責めると、
携帯電話からは溜息が聞こえた。
「‥やめてくれ。もう疲れた。いつまで君の話を受け入れれば満足する?」
その言葉に、横山は沸々と湧いた怒りの全てをぶつけた。
「先輩こそ今更どういうつもりですか!さも俺の気持ちを理解してくれるように、
優しく色々俺に言っておきながら、先輩のせいで結局ダメだったじゃないっすか!なんとか言ってみて下さいよ!」
激昂する横山に対して、通話主は冷たい程静かに言った。
「君は、見せかけかそうじゃないかもまともに区別出来ないくせに、文句が多いね」
横山の脳裏に、球技大会での自分の言葉が蘇った。
「てめぇらは見せかけかそうじゃないかもまともに区別出来ないくせに、
デレデレデレデレしてんじゃねーよ!!」
言葉に詰まった横山に、通話主は静かに言った。
これで終わりだと言わんばかりに。
「今度は、君にこの台詞をお返しするよ」
電話は切れた。
そして横山は、新学期になっても大学に戻ってくることは無かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<代償の原因>でした。
次回は淳の視点での、球技大会後からの話です。
えっと。
ここで出てくる「青田先輩の携帯」。
もしかして淳、横山にそうしたように、ウザい人間には静香にあげた方の携帯番号を教えているのでは‥?とちょっと怖いこと考えました。