翌日。
<糸井>
はい。先輩の仰る通りです。卒験頑張って下さい!
差出人”糸井直美”からのメールを読みながら、柳瀬健太はニヤリと笑みを浮かべた。
直美からの卒業試験攻略情報が、健太に余裕を与えている。
するとそんな健太の横を、テキストを睨みながら歩く柳楓と佐藤広隆が通りがかった。
今や数々の因縁のある二人に対し、健太は「こいつらめ」と呟きながら顔を顰め舌打ちする。
しかし健太には余裕があった。
次の瞬間パッと笑顔を浮かべ、二人に向かって笑い掛ける程に。
「よぉ!試験がんばろーな?なっ!」
そのままルンルンと去って行く健太の後ろ姿を見て、柳は気分を害したようだ。
「うう‥アイツのせいで俺胃炎になったかも‥」「無視無視」
なんといっても今日は、卒業試験の日なのだ。
胃を庇いながら歩く柳に、淡々とテキストに目を通す佐藤。そして意気揚々と歩いて行く健太。
様々な四年生達が一様に、卒業試験の催される教室へと入って行った。
問題用紙が配られても尚、健太の余裕は変わらない。
これで卒験パスすれば、もう面接、卒業とトントン拍子だ。
したら時計代でも何でも‥
この試験に合格すれば、輝かしい未来が待ち受けているー‥。
そんな誇らしい気持ちを胸に、健太は問題に目を落とした。
しかし。
「えっ?」
思わず目を丸くする健太。
次の瞬間、思わず叫んでいた。
「何だこりゃ?!全然違うじゃねーか!!」
「そこ、静かに!」
うっ、と言葉に詰まりながら、健太はもう一度問題用紙に目を通す。
「‥‥!」
しかしそこには、まるで予想外れの問題がズラズラと並んでいた。
テ、テキストの既出問題から出るんじゃ‥??確かにそう糸井が‥!
あの時糸井直美から聞き出した情報への自信が、
健太の保持していたその余裕が、ガラガラと音を立てて崩れゆく。
冷や汗と脂汗をダラダラとかきながら、健太は目の前が真っ暗になっていくのを感じていた‥。
「‥‥‥‥」
しかしながら、予想通り相手が行動する確率というのはどれほどのものなのか
青く澄み渡る空を見上げながら、雪はそんなことを思った。
手に持った携帯電話に表示されているのは、柳楓とのメッセージのやり取りだ。
卒験頑張って下さいね、柳先輩
うん、サンキュ。
健太の様子見てたら、糸井の過去問惜しかったな〜って思っちった。
ま、俺も頑張んなきゃだけど!
大丈夫ですよ。勉強頑張ってましたから、無問題です。
メッセージを打ち終えた雪は、一人授業へ向かうために歩き出した。
もう秋の空気は随分と冷たい。
ふと、見覚えのある風景に目が止まった。
数日前、ここで彼女と交わしたやり取りが蘇る。
「‥‥‥‥」
彼女とは、糸井直美のことであった。
立ち止まる雪の視線の先に、参考書に目を落しながらこちらに向かって歩いてくる直美が居る。
やがて雪の視線に気付いた直美は、弾かれたように駆け出した。
過去問騒動で村八分になってしまった直美。
風の噂で夜間授業の方へ移ったと聞いた。
その場に立ち尽くす雪の目の前から、
だんだんと直美の背中が小さくなって行く‥。
「直美さん!」
雪はその背中に思わず声を掛けた。
ピクッ、と身を強張らせながら直美は足を止める。
「直美さん、ちょっと待って下さい」
「少しお時間ありますか?ね?」
そう言って雪は、実はあの時直美を呼び止めたのだった。
二人は場所を変えて、あの過去問騒動のことを話し合う‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<逆転(1)>でした。
4部38話でキャンパス内で直美を見掛けた雪が、実はあの後声を掛けていたことが判明!
またしても時系列マジックですね〜。
次回は二人の話し合い、<逆転(2)>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
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<糸井>
はい。先輩の仰る通りです。卒験頑張って下さい!
差出人”糸井直美”からのメールを読みながら、柳瀬健太はニヤリと笑みを浮かべた。
直美からの卒業試験攻略情報が、健太に余裕を与えている。
するとそんな健太の横を、テキストを睨みながら歩く柳楓と佐藤広隆が通りがかった。
今や数々の因縁のある二人に対し、健太は「こいつらめ」と呟きながら顔を顰め舌打ちする。
しかし健太には余裕があった。
次の瞬間パッと笑顔を浮かべ、二人に向かって笑い掛ける程に。
「よぉ!試験がんばろーな?なっ!」
そのままルンルンと去って行く健太の後ろ姿を見て、柳は気分を害したようだ。
「うう‥アイツのせいで俺胃炎になったかも‥」「無視無視」
なんといっても今日は、卒業試験の日なのだ。
胃を庇いながら歩く柳に、淡々とテキストに目を通す佐藤。そして意気揚々と歩いて行く健太。
様々な四年生達が一様に、卒業試験の催される教室へと入って行った。
問題用紙が配られても尚、健太の余裕は変わらない。
これで卒験パスすれば、もう面接、卒業とトントン拍子だ。
したら時計代でも何でも‥
この試験に合格すれば、輝かしい未来が待ち受けているー‥。
そんな誇らしい気持ちを胸に、健太は問題に目を落とした。
しかし。
「えっ?」
思わず目を丸くする健太。
次の瞬間、思わず叫んでいた。
「何だこりゃ?!全然違うじゃねーか!!」
「そこ、静かに!」
うっ、と言葉に詰まりながら、健太はもう一度問題用紙に目を通す。
「‥‥!」
しかしそこには、まるで予想外れの問題がズラズラと並んでいた。
テ、テキストの既出問題から出るんじゃ‥??確かにそう糸井が‥!
あの時糸井直美から聞き出した情報への自信が、
健太の保持していたその余裕が、ガラガラと音を立てて崩れゆく。
冷や汗と脂汗をダラダラとかきながら、健太は目の前が真っ暗になっていくのを感じていた‥。
「‥‥‥‥」
しかしながら、予想通り相手が行動する確率というのはどれほどのものなのか
青く澄み渡る空を見上げながら、雪はそんなことを思った。
手に持った携帯電話に表示されているのは、柳楓とのメッセージのやり取りだ。
卒験頑張って下さいね、柳先輩
うん、サンキュ。
健太の様子見てたら、糸井の過去問惜しかったな〜って思っちった。
ま、俺も頑張んなきゃだけど!
大丈夫ですよ。勉強頑張ってましたから、無問題です。
メッセージを打ち終えた雪は、一人授業へ向かうために歩き出した。
もう秋の空気は随分と冷たい。
ふと、見覚えのある風景に目が止まった。
数日前、ここで彼女と交わしたやり取りが蘇る。
「‥‥‥‥」
彼女とは、糸井直美のことであった。
立ち止まる雪の視線の先に、参考書に目を落しながらこちらに向かって歩いてくる直美が居る。
やがて雪の視線に気付いた直美は、弾かれたように駆け出した。
過去問騒動で村八分になってしまった直美。
風の噂で夜間授業の方へ移ったと聞いた。
その場に立ち尽くす雪の目の前から、
だんだんと直美の背中が小さくなって行く‥。
「直美さん!」
雪はその背中に思わず声を掛けた。
ピクッ、と身を強張らせながら直美は足を止める。
「直美さん、ちょっと待って下さい」
「少しお時間ありますか?ね?」
そう言って雪は、実はあの時直美を呼び止めたのだった。
二人は場所を変えて、あの過去問騒動のことを話し合う‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<逆転(1)>でした。
4部38話でキャンパス内で直美を見掛けた雪が、実はあの後声を掛けていたことが判明!
またしても時系列マジックですね〜。
次回は二人の話し合い、<逆転(2)>です。
☆ご注意☆
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半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
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まさか更新されてるとは思いませんでした!
とても嬉しいです!
御出産の方は....?
主様の体調が心配です
これからどんな展開になっていくのか、
まだまだ楽しみです〜!
出産間近で色々大変な中、ありがとうございます!
今回、ヤツのテンパリ顔を拝めて満足です\(^^)/(笑)
ずっと大嫌いだった直美、まさかのグッジョブ!?だとしたらあのベンチでの会話なかなかの名演ですね。
その情報を一蹴した佐藤・柳先輩の男が上がります。あのとき雪ちゃんだけやけに冷静だったのは、わかってたからなのね。
そしてそれをそそのかしたのが雪ちゃんならやっぱ淳君に似てきたなあ。
親戚(子供含め)の訪問で
それはそれは長い何日間でしたので、
私はとってもお久しぶりな気分です。
そろそろ安定期らしいですし、
私もここに翻訳載せます。
多分正確じゃない&yukkanen様より遅いですけど・・・
https://sites.google.com/site/cheesetrapenglish/s4/no188