Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<淳と亮>過去回想(6)ー背信ー

2016-07-19 01:00:00 | <淳と亮>過去回想(1)〜(10)
”青田淳と河村亮は腹違いの兄弟”という噂が流れた後、淳は自身の考えを変え、

彼らに対する態度も変化させて行った。

あの時から、俺はお前達と少し距離を置くようにした。

自分の意思をはっきりと父に伝えるためにね。




突然冷たくなった淳に亮は苛立ち、静香は途方に暮れた。

それでもそうするしかない、限られた選択肢の中で、淳は淳なりに足掻いていたのだ。

高校生だった俺に出来ることは、それくらいしか無かったから









誰も居ない廊下で、淳は一人窓の外を眺めていた。

ここは皆からの好奇な視線も、ヒソヒソと囁かれる噂話も届かない。

けれど、淳の胸中は常にざわざわとざわめいていた。



「あの‥」



すると背後から、弱々しい声がした。

声のした方をじっと見ていると、オドオドとした男が一人近づいて来る。



「あの‥」



俯きながら「あの」を繰り返すその男に、淳は向き合って声を掛けた。

「何?」

「いやその‥聞きたいことが‥あって‥」



男はクラスメートであり、亮と同じピアノ科の学生だった。

淳は見せかけの笑顔を飾りつつ、彼の発言を優しく促す。

「何かな?大丈夫だから、言ってみなよ」







彼は幾分逡巡していたが、やがておずおずと口を開いた。

「も‥もしかして河村亮も‥

君の家から援助を受けてるの?」








柔和な笑顔を保てない程、その質問を前にして淳は絶句した。

明らかに表情の変わった淳を見て、ピアノ科の学生は狼狽える。

「い‥いやその‥

君のお父さんが‥この前家に訪ねて来られて‥」




「僕‥コンクールにも出られずに落ち込んでたから‥励ましに来て下さったみたいで‥」

「大丈夫ですよ」



そして彼は、スポンサーである淳の父親が家に訪ねて来た時のことを話し出した。

「大きな賞を取ることを期待して援助している

わけではないですから。負担に思う必要は無いですよ」




「ご子息が私の夢を広げてくれることの方が何倍も嬉しいですから。

私は元々クラシック音楽が好きなもので、それで援助の手を広げているだけなのです。

同じ高校と別の高校のピアノ科にも、同じ様に援助している子らがいるのですよ」







淳は黙って彼の話を聞いていた。

ピアノ科の学生はボソボソと喋りながらも、淳に聞きたいことを確実に口にしてくる。

「皆ご両親は健在だし、お金持ちだし‥。

青田君にいつも引っ付いて、家のこともよく分からないのが河村亮だから‥」




「その上あんな噂まで‥」



ピアノ科の学生はそこまで口にしたものの、

淳の前で口にすべき話題では無かったと気づき、すぐさま訂正した。

「あっ勿論嘘だろうけど!」



淳はまだ何も返さない。

ピアノ科の学生は、それを自身の発言を許容しての態度だと理解し、言葉を続ける。

「それでもしかしたら河村亮がそうなのかもって‥。それって‥本当なの?」



そう言ってチラと淳の顔を見た彼の表情は、どこか優越感を感じさせるものがあった。

気弱なその態度の中に、嫌悪している相手の弱点を見出した時特有の小狡さが、見え隠れしていたのだ。



はっ、と淳は小さく息を吐き捨てた。

彼が浮かべた表情は、淳が飽きるほど目にして来た、相手を出し抜こうとする小者の表情だ。



いつもなら当たり障りない言葉でやんわりと否定しただろうが、

もう状況は違って来ていた。

目の前に居るその小狡い人間は、淳の返事を期待を込めた表情をして待ち侘びている。







河村亮という人間が作り出した影が、今意志を持って動き出そうとしていた。

その光を飲み込もうと、鬱々とした感情を従えながら。

「調べてみなよ」



否定も肯定もしない、それでいて影を先導するその言葉が、

事態を何倍ものスピードで進行させて行く。



「おい、河村も援助受けてるらしいぜ」

「え、マジ?」「何何?」



「おい、お前どうして何も言わねーの?

かくしてねーでアイツらに援助してるって言えばいいじゃんか」




「マジで天使かっつーの!」



淳は何も言わずただ笑顔を浮かべていた。

”天使”は自らの手を汚さずとも、背信に動く影が、いつか光を飲み込むからと‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<淳と亮>過去回想(6)ー背信ー でした。


少し短めの記事で失礼しました。

ピアノ君(今は”ショパン”でしたね)が淳に、亮が「援助を受けてる」という裏を取りに行った場面でしたね。

これを静香が覗いていたんですねぇ。



だんだんと抜けていた過去エピが埋められて行くのはゾクゾクしますね!


次回は<淳と亮>過去回想(7)ー父の抑圧ー です。

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2 Comments

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Unknown (ろむせん)
2016-07-20 08:25:08
結局左手事件に関して淳は 何もしていなかったのかな?ショパンなら言われなくても勝手に調べただろうし。ちょっと疑っててごめんよ…

いつも拝見してます。ライン漫画再開でつい書き込みしてしまいました。今から保健室の淳のダークスマイル、皆の反応が楽しみです(笑)
返信する
淳がピアノ君に言った (どんぐり)
2016-07-23 18:18:13
「調べてみなよ」という言葉は
私だったら同じように言っただろうなと思ってしまいました。(私も腹黒…(^^;))
その心は… 
ピアノ君は、“自分(=ピアノ君)”が(ピアノ君自身)を助けるために、今、僕を利用しようとしている。オドオドと下手に出ているつもりでも小狡さダダもれで、父親が援助していようがいまいが僕(=淳)には何の関係もないのに、僕が息子だからと味方につけて亮をおとしめようと利用するつもりである。
僕から言質をとるつもりなんだろう? どうせ自分に都合の良いところしか興味がないんだろうに。そんなこと僕に聞かずに自分で調べてみればいいだろう!! 
  ↓
「そんなこと自分で調べろよ」
という塩梅です。(うーん、これではめんどくさがっているだけですね。失礼しました)

師匠の
> 河村亮という人間が作り出した影が、今意志を持って動き出そうとしていた。

この語り…。ゾクゾクしました。
さざなみに侵食されてきた岩がくずれかかっているように…、
淳くんが感じている恐怖を、私も感じることができたと思いました。
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