Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

一筋の水流

2016-08-05 01:00:00 | 雪3年4部(忠告と真実〜二人の休日)


亮は一言呟いた。

「静香」と。



あの輝かしい未来へと続いていた道を歪ませたのは、

あの忌々しい事件への糸を手繰り寄せた先に居たのは、

紛れも無く自身の姉だった。

「静香‥」



心の奥底から、炎のように激情が溢れ出す。

亮は無意識の内に、大声で姉の名を叫んでいた。

「静香ぁぁぁぁぁっ!!!!」



「静香!静香!静香っ‥!」



今にも掴みかからんといった勢いで、鬼のような形相をした亮は走り出した。

けれどその激情の中に流れる、一筋の水流が亮の足を止める。

「‥‥‥‥」



「‥‥‥‥」



突然立ち止まった亮のことを、通行人達は怪訝な表情をして見つめていた。

まるで燃え盛った炎が一瞬で消えたような、不可思議な光景を目にしながら。



亮は空を仰ぎながら、掠れた声でポツリと呟く。

「姉ちゃん‥」



その一筋の水流は、亮の瞳から流れ落ちた。

「あ‥そりゃねぇよ‥姉ちゃん‥」



たった一人の肉親。

たった一人の家族。

けれど亮の未来を閉ざしたのは、紛れも無く彼女だった。

「そりゃねぇよ‥」



次から次へと溢れ出す感情が、亮の頬を濡らし、流れて行く。

気がつけば空に、満月が浮かんでいた。








とっぷりと暮れた街を、雪は疲れた身体を引き摺りながら歩いていた。

今日もこんな時間になっちゃった、と一人呟きながら。



すると視線の先に、見覚えのある姿を見つけた。

「宴麺屋赤山」の近くの路地に、佇んでいる彼の姿を。







河村亮は店の明かりを見上げながら、瞳からボロボロと涙を流していた。

長い時間泣いていたのだろうか、目は赤々と充血している。



やがて亮は自身を見つめる雪の姿に気が付いた。

しかし彼は何も言わずに、ただ彼女に背を向ける。







立ち尽くす雪を残して、亮は涙を拭いながら、ただその場から去って行く。

だんだんと遠ざかるその背中を、雪は追いかけること無くただ見送った。



河村氏の涙を目にするのは二度目であった。

初めて目にした時の記憶が、雪の脳裏を掠めて行く。



たった数カ月前のことなのに、もう随分前のことのような気がしていた。

雪は俯いたまま、自身が進むはずの方向へと踏み出す。

多くのことが変わった。



私は彼を慰めはしなかったし、河村氏も当然のように私を避けた。



店のドアを開けると、「おかえり」と母の声がした。

帰るべき場所へ帰って行く私達。

河村氏は、一体どこへ帰るのだろう?

時に身の丈以上のさざ波が日常を揺らしたとしても、

いつもそうであるように、




河村氏もきっと乗り越えて行けると、私は信じている。



キィ、と暗闇の中でドアが開いた。

自室から出て来た姉は、リビングに居る弟へ声を掛ける。

「何よ‥」



「いつ帰って来たの?」



亮は電気も付けずに、無言でテーブルに突っ伏していた。

姉からの言葉に何も言わぬまま、ゆっくりと顔を上げる。







泣き腫らしたような疲れた顔を、静香は暗闇の中で微かに目にした。

静香の心の中に一筋の水流が、つぅと流れ落ちる‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<一筋の水流>でした。

皆さま、二週間ぶりです。

予定日までもうすぐですが、まだ産まれてないのでなんとかアップ出来ました

ただ正産期の身体+育児が思いの他しんどくて、なかなかコメントのお返しなど出来ず‥申し訳ない気持ちでいっぱいです。

特別編のリンクを貼って下さったCitTさん、なかなかお礼も言えずすいませんでした。

楽しく拝見いたしました!ありがとうございました


出来る限り、残りの今週分も頑張りますー!


そしてそして!今日8月5日は‥

我らが河村氏のお誕生日ーーおめでとう



本編では辛い展開になっちゃってますが‥。彼が心から笑える日が来ますように‥!

次回は<逆転(1)>です。

☆ご注意☆ 
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!

人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています〜!