Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<淳と亮>過去回想(5)ー侵害ー

2016-07-17 01:00:00 | <淳と亮>過去回想(1)〜(10)


亮のコンクールは成功の内に終わったらしいと、上機嫌で帰って来た父親を見て悟った。

淳は亮に祝いの言葉を掛けることもせず、翌日普段通りに登校した。



顔を合わせた友人と軽く挨拶を交わしながら廊下を歩く。

普段通り、いつもと何も変わらない朝に思えた。



しかし。



すれ違った同級生の男二人が、淳の方へと意味深な視線を寄越した。

淳は無言で、彼らの方を向く。







淳と目が合った二人は、

繕うような笑顔を浮かべながら、気まずそうな素振りでその場を離れた。

淳はどこかおかしなその空気を感じつつ、ただその場で首を傾げる。



すると。



同じ様に、そこに居るほぼ全員が淳のことを見ていた。

まるで腫れ物に触るかのように、じっとただ遠巻きに。



明らかに異常な光景だった。ただその場に立ち尽くす淳。

するとそんな淳の元に、クラスメートが血相を変えて走ってくる。

「おい、青田!お前あの話‥聞いたか?」



その先に続く言葉は、出てくる名前は、もう聞かずとも分かる気がした。

「亮が‥」





”外国の女の人と‥” ”異母兄弟” 



目の前が暗転して行くのとは裏腹に、聴覚が研ぎ澄まれて学生たちの囁きが耳に入ってくる。

彼らの噂を繋ぎ合わせるとこうだ。

”青田淳と河村亮は腹違いの兄弟”



”コンクールの日、河村亮が”青田会長は自分の父親のようなもの”と嬉しそうに口にした”



”「自分は実の息子の淳よりも可愛がられている」、とも。”







歪んで行く視界の端に、自身に送られる視線を痛いほど感じていた。

彼らが淳に送るのは、好奇な視線、興味本位の眼差し、



そして、

「可哀想‥」



「義理の兄弟よりも愛情を受けられなかった実子」に送られる、



”哀れみ”








握った拳が、小刻みに震えていた。

淳はその場に立ち尽くし、俯きながら、溢れ出す感情の渦にただ飲み込まれて行く。

理解出来ない



脳裏に浮かぶのは、父親と楽しそうに談笑する亮の姿。

実の家族を差し置いて、亮のコンクールのことを第一に考える父親の後ろ姿。



二人共



結局こうなるだろうと分かってたのに‥



暗く陰る視界の先に、亮がこちらに向かって走ってくるのが見えた。

溢れ出す憤懣の中で淳は、その闇を制御することも忘れてその男を凝視する。



「いや‥オレは‥」



その凄まじいほどの怒りにたじろぐ亮。

そして淳はこう言ったのだ。

”欺瞞って言葉、知ってるか?” と。



良くしてやればやるほど、お前はどんどんエスカレートするー‥。







二人は再び現在へと時を戻した。

淳はあの時のことを回想しながら、自身の思いを淡々と語る。

「それからだよ。俺が考えを変えたのは」



「お前達が来る前から、父さんは俺に対して抑圧的だった。

だからそのせいで態度が変わったわけじゃない」




亮は咄嗟に言葉を返した。

「それじゃどうしてオレらに‥」

「それはこっちの質問だ」



しかし淳は亮の質問を途中で切ると、鋭い眼差しを送りながら逆に問い返す。

「お前、どうしてあの時父さんとの関係をあんな形で話した?」



「それは‥」



亮は思わず言葉に詰まった。

昔会長から言われたあの言葉が、亮の胸を締め付ける。

「私のことは実の父親のように思ってくれ」




「”本当の家族”」



まるで心の中を読まれたようなタイミングで言われた言葉に、

亮はピクリと反応した。



固まる亮に向かって、淳は抑揚のないトーンで言葉を続ける。

「”実の父親のように思ってくれ”、言葉ではなんとでも言えるけど、

本気の愛情なんて感じられなかったろ。完全には信じられなかっただろうし、

でもその言葉を信じたかっただろうし」




「だからあんなこと言ったんだろ。

人が受けるダメージなんて考えもせずに」


「‥‥‥‥」



俯いた亮に向かって、淳は往年の思いを口にした。

自分の父親という一人の男性に対して思う所、そして、亮と静香に対して思う所を。

「父さんが偽善者だってことは、誰よりも俺がよく分かってるさ。

だけど俺が耐えられなかったのは‥」




「お前達が、父さんのその演技を助長し引き立てる役割を担い続けたからだ」



「とても忠実にね」



二人は再び高校時代の回想へと戻った。


彼らが居る以上、自分は常に侵害され続けるー‥。

そう感じ始めた淳は、次第にその態度を変えて行く。



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<淳と亮>過去回想(5)ー侵害ー でした。

亮と静香という小さなさざなみにさらされ続けた淳が、とうとうその際限なさを悟り、

絶望と怒りを感じた‥という場面でしたね。

しかし時系列とエピソードがこんがらがる

亮視点の過去は河村姉弟3<向けられた背中~その日>にまとめてありますので、

どうぞご活用下さいね〜


次回は<淳と亮>過去回想(6)ー背信ー です。

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