Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<雪と淳>覆われた瞼

2016-04-19 01:00:00 | 雪2年(学祭後~保健室にて)


ぼんやりと目を開けた雪は、目の前に立っている人の方へとゆっくりと焦点を合わせた。

瞬間、彼女の目が大きく見開かれる。



雪はモゾ、と身体を動かした。

朦朧とした意識の中で。







完全に覚醒する前に、その瞼は大きな手の平で覆われた。

淳は横たわる彼女に向かって、呪文のようにこう囁く。

「まだ寝てな‥」








彼のその声を聞いても、雪はその手を振り払ったりしなかった。

代わりに、小さな声でこう呟く。

「まだ行ってなかったの‥」



雪は、淳を聡美と混同していた。

瞼を覆っているその手に、雪はゆっくりと自身の手を伸ばす。



先ほど見た、聡美の泣き顔が雪の脳裏に浮かんでいた。

雪は消え入りそうな声で、聡美に向かって言葉を紡ぐ。

瞼を覆うその手を、優しく撫でながら。

「優し‥いね‥早く行って‥」



「ありがとう‥」









彼女の瞼を覆っている手が、燃えるように熱かった。

しかし自身の手に伸ばされた彼女の手は、氷のように冷たい。



淳は自身の手で半分以上隠れた彼女の顔を、ただじっと見つめていた。

先ほど彼女が口にした「ありがとう」が、鼓膜の裏に反響する。







弱々しく動いていた彼女の手は、やがて動かなくなった。

再び眠りに就いたのか、ゆっくりと雪の手の力は抜けて行く。








彼女の手が滑り落ちても、淳は暫くその体勢のまま動かなかった。

その動きが完全に止まるまで、淳は瞼を覆い続ける。



そしていつしか、その手を外した。

雪が再び深い眠りへと落ちて行ったのを確認してから。








暫し淳は彼女の寝顔をじっと見ていた。

が、やがてゆっくりと前を向いた。

胸の中では、説明のつかない感情がざわざわと騒いでいる。







彼女の瞼を覆っていた左手が、まだほのかに温かい。

淳は手を腰に当てながら、布団から半身を出した雪にもう一度視線を落とした。

すると彼女のジーンズのポケットから、紙切れがはみ出しているのが見える。



淳はそれをそっと取り出し、何が書いてあるかを眺めてみた。

表面には家庭教師のバイト先の連絡先、裏面には「英語塾のアシスタント」という文字や、

彼女が書き込んだ「勉強時間確保」という文字が読める。



今彼女が抱えている様々な問題が、その紙切れの上に溢れていた。

淳はそれを半分に折ると、彼女のポケットにそっと仕舞い直す。






そしてめくれていた布団を引っ張って、身体全体が隠れるように掛けてやった。

風が入り込まないように、布団の端をぎゅっと押さえる。



再び仰向けで眠っている彼女の口からは、すぅすぅと健やかな寝息が聞こえて来ていた。

顔色は相変わらず悪いが、もううなされてはいないみたいだった。







何をするでもなく、淳はただその場に佇み続けた。

外ではまだ風が鳴っているのか、隙間から入って来たそれでカーテンが揺れている。



淳は腕を組んだ体勢のまま、揺れるカーテンをじっと見つめていた。

風で揺れるこのカーテンのように、自身の胸の中に揺蕩う靄を、

可視化出来る何かがあればいいのに。




自身の感情を波立たせ、胸をざわめかせるその感情の正体について、淳は改めて考え始める‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<雪と淳>覆われた瞼 でした。

まさかの「まだ寝てな」アゲイン!



212話にも出てきましたね。



こういった過去があるから、

「君も俺も変わってないだろう」というのが淳の結論なのか、となんとなくシックリ‥。



全てつながっているのですね‥。


次回は<雪と淳>その正体 です。


☆ご注意☆ 
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
極力使われないようお願いします!

人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!