ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

任せられても、困る

2020-09-17 08:28:22 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「本心は」9月8日
 精神科医香山リカ氏が、『「おまかせ」も悪くない』という表題でコラムを書かれていました。その中で香山氏は、長年通いなれた美容室で『「ちょっと変えてみたいけどどんなスタイルがよいでしょう」と尋ねると、美容師さんは「じゃ、おまかせください!」と元気よく応じてくれた』という体験を紹介し、『「ああ、たまには信頼できる人にこうやっておまかせするのは、悪いことじゃないな」とリラックスすることができた』とそのときの心境を語っていらっしゃいました。
 この体験を基に香山氏は、医師として、『とにかくなんでも患者さんに丁寧に説明し、要望を聞きながらいっしょに治療の方針を決めていく』昨今の医療現場の状況について、『長い付き合いの人には「そろそろリハビリを始めて、来月あたりには開所に復職しましょうか。おまかせください。だいじょうぶですよ」とたまに言ってみてもよいのではないか。そう言われて「よし、まかせます」と安心できる人もいるのではないだろうか』と述べられています。
 同感です。学校現場でも、このインフォームドコンセントの考え方が浸透してきています。もちろん基本的にはとても良いことだと考えていますが、弊害も表れているような気がしてなりません。それは、インフォームドコンセントを、自身の専門性への自信のなさへのごまかしに使ったり、責任逃れの手段としたりしているケースがあるのではないかということです。
 いじめをめぐってこんなことがありました。我が子がいじめられていると訴えに来た保護者に対し、担任教員は、「まず把握している事実をお知らせください」「今おっしゃったことの事実確認の方法ですが、どのような方法を希望されますか」「お子様に直接確認してもよろしいですか」「相手側がいじめを否定した場合、その後の対応でご希望はありますか」「いじめが事実であった場合、どのような対応を望まれますか」「お子様とご両親とで希望される対応に違いのある場合、どうなさいますか」「学級の子供たちにはいじめの事実を周知することを望まれますか。その場合、自動的に保護者にも広く伝わることになりますが」「子供はいじめを認めても相手側の保護者が苦情等を申し出てきた場合、直接お話になりますか」などと、過去のいじめ対応から予想される問題点を挙げ、保護者の意向を確かめようとしたのです。
 担任は、専門家として、事前に予想される問題点について保護者に知らせるとともに、保護者の意向を確認し、更に過去の経験から保護者と被害児童の間で臨む対応が異なるケースが多いことも踏まえて、インフォームドコンセントに「忠実に」沿った対応をしたつもりだったのですが、保護者は激怒しました。
 たしかにこの担任が保護者に問いかけたことは、ほとんどすべてのいじめ事案で直面することです。そうした意味で、「的確」とも言えます。しかし、「適切」ではありません。それは、この担任に、自分には自分の考えはあったがあくまでも保護者の意向に沿って対応しようとしたのであって結果については自分だけの責任ではない、という責任逃れの意識があったからです。というよりも、無意識のうちにそうした考えがあり、本人も自覚しないまま保護者に感知され、不信感をもたれたということです。
 教員は、あるいは校長や教委の担当者は、多くのいじめ事例に直面してきていますが、保護者や子供は初めての経験に怯え傷ついて助けを求めてきているのです。それなのに、冷静に意見を求められれば、「そんなこと知るか!俺に考えさせるな!お前がもっとも適切な回答を示せ!」という気持ちになるのは当然です。
 少し極端な例を挙げたかもしれませんが、人間関係を築き、信頼を得た上でならば、「こうしましょう。私に任せてみてください」ということがあってよいと思います。教員にも。

 

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