ウィトラのつぶやき

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アメリカの日中鉄鋼に対するダンピング課税

2016-06-23 11:31:33 | 経済

今週はイギリスのEU離脱の国民投票、参議院選挙の告示、大手各社の株主総会と話題が豊富だが、その中で私が気になっていた話題で中国の鉄鋼輸出に関するニュースがあったのでこれを取り上げたい。

アメリカ政府は日本と中国の企業の「冷延鋼板」と呼ばれる鉄鋼製品の輸出に対してダンピングであるとの認定を出し、中国製品には265%、日本製品には71%の反ダンピング課税を行うと決定した。注目すべきは中国製品に対してはこれに加えて輸出支援金相殺のための256%を課税するという点である。中国製品に対しては500%を超える課税となる。この輸出支援金というのは中国政府が国内の鉄鋼メーカーに対して輸出を奨励して支援金を出しているものである。つまり、中国の鉄鋼企業は通常の売価の1/3程度の価格で輸出できていたことになる。

私は以前、鉄鋼の価格低下は製鉄業を独占しようという中国政府の戦略ではないか、と書いたが、その形跡は明らかに認められていると思う。中国政府は公式には鉄鋼を減産するというようなメッセージを発しているが、その一方でこのような輸出支援金を出しているし、EUがアメリカと同様に鉄鋼のダンピングの調査を開始したときには対抗措置をちらつかせている。

本来は貿易は自由化されることが望ましいが、故意に価格を下げて市場を独占し、その後で一気に価格を高騰させる、というようなことを国家レベルで行う国があれば、対抗措置を取らざるを得ないだろう。新日鉄などの個別企業では対抗しきれない動きだと思う。中国は過去のレアメタルで成功して、次は鉄鋼分野を狙っているのだと思っている。

今回は一部の特殊な鉄鋼製品だけの適用であるが、中国政府の出方によっては適用製品は拡大して鉄鋼製品全体に及ぶ可能性もある。これに対して中国政府が対抗措置を発動するのか、静かにしているのかは不明だが、対抗措置を発動するとお互いの動きがエスカレートする可能性が高い。現在のところアメリカが先行しているがヨーロッパ、アジアと同様の動きが広がるのか、一部の国は中国側につくのかも不透明である。

日本政府は今のところ具体的な動きを見せてはいないが、先日の伊勢志摩サミットの議題に上った案件であり、基本的にはアメリカに追随する動きになると思う。イギリスのEU残留問題の結果に関わらず、経済のブロック化の芽がここにも出ていると思う。


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