ウィトラのつぶやき

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現代の中国とローマ帝国

2017-11-17 10:54:01 | 社会

5年に一度の中国の共産党大会が終わって習近平国家主席の独裁体制が明らかになってきた。私にはこの動きが共和制から帝政に移行した時期のローマ帝国と重なって見える。ローマ帝国は紀元前8世紀に王政からスタートしたがすぐに共和制に移行した。その後紀元前数十年の頃に帝政に移行している。帝政の基礎を作ったのはカエサル(シーザー)であり、実際に実行したのはオクタビアヌスである。その後476年に西ローマ帝国が滅びるまでがローマ帝国の時代と言えるだろう。カエサルの頃のローマは地中海沿岸全体を領土とする巨大国家になっていた。多くの周辺国家と小競り合いが続いており、政治交渉も間断なく続いている。それを全体を俯瞰して判断する人物が必要だと判断してカエサル、オクタビアヌスが「皇帝」という地位を定義して、独裁体制を作り上げた。帝政に移行してからもローマは「元老院から皇帝が指名される」、という形を残しており、世襲制にはしていない。元老院が中国共産党幹部、習近平が皇帝という位置づけと重なって見える。

現在、世界のほどんどの国は選挙を採用する議会制民主主義を採用しているが、習近平国家主席は「中国流の統治の仕組みでやる」と宣言している。中国共産党の幹部も、元老院メンバーも選挙で選ばれるわけでは無い。ローマの場合はローマ市民の中から家柄や納税額などをベースに選ばれており、その中から皇帝が選出される。中国はローマ帝国の仕組みを詳細に研究していることは間違いないだろうと思う。

ローマ帝国の歴史を見て感じることは、皇帝の良し悪しで国の状態が大きく変わることである。ローマ皇帝の半分くらいは任期途中で暗殺されている。そして、暗殺の首謀者が次の皇帝になるわけでは無く、別途人気の高い人物(特に軍に人気のある人物)が推挙されている。ローマ帝国は曲がりなりにも400年以上続いたが、良くないトップを排除する仕組みを作らない限り、中国の体制は長続きしないだろう。習近平の粛清にはこの意味もあると思うが、トップを変える仕組みではない。そこを共産党内でどういう議論がされているか、知りたいところである。

世界の大部分の共産党政治が破たんしたのに、中国の共産党がここまで成功してきているのは人材育成の仕組みができているからだと思う。ある中国人に聞いたのだが、中国共産党の人事評価は、上司、同僚、部下と関係者すべての意見を聞いて総合的に評価する「360度評価」を徹底しているとのことである。別の中国人の人からは、候補者を絞るのは360度評価であるが、その中で誰を選ぶかは上司の恣意的な判断が大きく影響しているそうである。両方が真実だろうと思う。共産党員は30代、40代で地方の村長や市長になって人民のために尽くすことを徹底的に叩き込まれるそうである。ヨーロッパの「ノブレス・オブリージェ」に相当する精神がここで培われるのだろう。それでも権力を手にすると、賄賂を贈って儲けようとする人は後を絶たず、腐敗は必然的に進むと思われる。パナマ文書に習近平の親戚の名前が出ていたという話もあり、習近平の腐敗撲滅運動がどこまで実際に効いているのかは不透明だと思う。

民主主義にも多くの問題がある。私は民主主義が絶対だとは思っておらず、中国が今後どのように進むのかに関しては大きな興味を持ってみている。ここまでは中国共産党は全体として非常にうまくやっていると思っており、おそらく習近平の時代は大丈夫だと思っているが、その次に引き継ぐときに、何が起こるかが興味深いと思っている。その頃には自分は認知症になっているかもしれないが・・・