ウィトラのつぶやき

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山中教授の文化勲章受章に思う

2012-11-13 08:34:13 | 社会

少し前のことであるが、ノーベル生理学賞を受賞した山中伸弥教授が文化勲章を受章した。ご本人は「大変光栄に思う」と言っておられるが私はこれに違和感を覚えている。

私は文化勲章は長年にわたる、科学技術や文化に対する貢献に対して国がねぎらいの気持ちを示すものだと理解している。山中教授はまだこれからの人である。今贈らなくても、今後研究を続けて、定年で大学を退官したときに贈れば良いではないかと思う。今贈るよりそのほうが効果は高いと思う。

調べてみるとWikipediaに「慣例として、その年にノーベル賞を受賞した者で文化勲章未受章である者には、文化勲章が授けられる」とある。この慣例がおかしいのではないか、と思う。ノーベル賞を受賞したら自動的に文化勲章も贈るというのは、自分での評価を放棄し、文化勲章をノーベル賞の下位に位置づけることではないだろうか。ノーベル賞受賞者はそのことで既に高く評価されている。何も重ね打ちをする必要はないように思う。

一般的にはノーベル賞の受賞者は大学の名誉教授などの高齢者である。このような人で、文化勲章をもらっていなかった人に対して「国が見逃していた」と考えて文化勲章を贈ることはおかしくないと思う。しかし、自らの判断を放棄して、「ノーベル賞を受賞したら自動的にその年に受賞」というのはいかがなものかと思う。自ら判断をしたくないという日本人の特質が表れたものだろうか。

逆の印象を持つ賞の与え方もある。今年の日経イノベーター大賞の特別賞をドコモの尾上常務が受賞した。内容は今急速に普及が始まっているLTEを構想し実用化に結びつけたというものである。私は尾上常務を良く知っており、彼がドコモを引っ張り、世界を引っ張ってLTEを実用化に結びつけたことを良く知っているので、尾上氏の貢献に異論はない。しかし、LTEは尾上氏一人が引っ張ってきた訳ではなく多くの人が引っ張ってきた。尾上氏は既に常務にまで上がっており会社で十分に評価されている。今更、尾上氏にイノベーター大賞を与えなくても良いのではないかと思っている。

「日本を元気にする」という賞の趣旨から言えば、同じLTE関係者にイノベーター大賞を与えるのでも、今後一層の活躍が期待できるもっと若い人に与えても良いのではないかと思う。こういった賞は、権威主義的にならずに評価をしてほしいものだと思っている。