ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

特許を書く訓練

2009-04-24 14:45:04 | 昔話
会社に入社してしばらくすると、研究所に勤務していると特許を出願することを求められる。

私は、以前書いたように理学部上がりであり物事の理解はできていても自分でモノを作るのは得意でもなかったので、特許を書くにはどうすればよいかについては見当もつかなかった。

しかし、上司は部下に特許を書かせるように指導することが求められており、上司と打ち合わせをしてほとんど誘導尋問のような形でアイデアを出してそれを特許に書け、と言われた。内容も今では記憶していないが自分のアイデアというよりは上司が既にアイデアを持っていて練習のために書かせるというような感じだった。

ほとんど貰ったようなアイデアでも、それで特許を一度書いてみるとずいぶん色々なことがわかる。特許は「従来技術の問題点」を明確にして、この特許ではどこを改良するか、というところから入る。ほとんどの特許はこのパタンである。そして、なれてくると、「従来技術の問題点」が明確になれば半分は特許はできたようなものだ、という感覚になる。問題点が分かればそれを解決する工法を考え、実施例を考えて書く。

たいていの場合何らかの解決策を見つけ出すことはできるので、解決策を考えるのが20%実施例で具体的にどうやって解決するかを考えるのが30%という感じになる。 このアイデアを考えて特許としてまとめる、という一連の手法は3回くらい特許を書けば身につけられる。しかしそれで終わりではない。

特許性のあるアイデアであっても実際に使われる有効な特許はきわめてまれである。しかも出願した特許が特許庁の審査を通って登録され、実用化されるには長い年月がかかる。その間に周囲の技術なども変わるので出願当時自分が有効だと思ったのと別の側面が実用上有効になったりすることが良くある。 従って、その特許のメンテナンスというのが極めて重要な仕事である。

しかし、発明者にとってはメンテナンスは苦痛になることが多い。特許を書いて5年もするとたいていその特許のことは忘れてしまっている。仕事も変わっていることが多いだろう。その頃になって特許庁から反論が来たから何とかしろ、と特許部門から依頼がくる。思い出すだけでも時間がかかるし、そう簡単に回答できるものでもない。しかもその時抱えている仕事とは直接関係のない内容である場合がほとんどである。

これをきちんと対応することは、特許を有効にする上では非常に重要である。普段の仕事が忙しいような場合には、私は土曜になどの休日に会社に行って処理をしていた。

もうひとつ重要なポイントは特許部門の人を味方につけることである。大きな会社にはたいてい特許部門というのがあって、特許として通りやすい書き方はなにか、どういう反論をすれば受け入れられるか、どういう状態になったらあきらめざるを得ないかなどに関して様々なノウハウを持っている。

自分で良い特許だと思ったのに「前例がある」などといって特許庁から反論が来たような場合には、この特許部門の人に相談するのが良い。彼らは事務手続きも行っているが特許を良くすることが本来の業務だと思っているので相談に行くとたいていの場合快く相談にのってくれる。そこで、「こういう反論が来たのだが、自分としてはこの部分が少し違うと思うのでもう少し粘りたい。どうやったら粘れるだろう」などと相談する。 そうすると、自分ではあきらめざるを得ないと思っていたようなところまで頑張れるような書き方を教えてくれたりする。

人間関係も構築できて後々役に立つ。 特許のメンテナンスに前向きに取り組むことが特許活動にとっては極めて重要だと思う