▽天気の変わり目になると痛みを訴える高齢者は少なくない。医療サイト『ケアネット』が紹介する名古屋大環境医学研究所の佐藤純准教授の論文に興味をそそられた。以下、まとめる。
◆交感神経を興奮させると慢性疼痛が悪化
▽欧米には、気象要素に関して統計学的な手法で痛みとの相関を解析した研究がいくつかある。それによると、痛みの増悪因子は、気圧、湿度、温度の変化、降雨、雷、風の6つ。「天気痛」の代表例は関節リウマチ、変形性関節症、線維筋痛症、片頭痛など。患者に腰痛、膝痛、片頭痛、肩こりがあると、片頭痛、肩こりは天候の影響を受け、腰痛、膝痛は受けない。筋肉や関節の深部の痛みは影響を受け、皮膚表面の痛みは受けない、といった具合に痛む部位で違いがある。
▽佐藤准教授は愛知医科大の学際的痛みセンターで「天気痛外来」を担当している。外来患者の協力を得て、気圧と痛みの関係を調べる臨床試験を試みた。慢性疼痛患者10人に気圧を下げて、しばらく晒しておいた。全患者が低気圧で疼痛が酷くなった。気圧を元に戻すと、痛みが和らぐ人も、続く人もいた。
▽この結果から、気圧の低さよりも変化の影響が大きい。慢性疼痛には交感神経が関与する「交感神経依存性疼痛」が多い。その患者の多くはストレスが強くなると痛みが酷くなる。気温、気圧、湿度などの変化は、人間や動物のストレス。交感神経を興奮させると、慢性疼痛が悪化する。
◆気圧変化の検出センサーは内耳にある
▽佐藤准教授はいくつかの動物実験を試みた。気圧や温度を下げると血圧や心拍数が上がり、ノルアドレナリンの分泌量が増えて交感神経が興奮した。交感神経を切り取ったラットを低気圧に晒しても、疼痛は酷くならなかった。疼痛患者は自律神経、とくに交感神経が過敏だ。動物は気圧を感じる能力がある。野鳥は天気が悪くなる前に巣に帰る。動物に残る本能的行動が、人間はなくなった。しかし慢性疼痛がきっかけで本能が呼び戻されているかも。
▽気圧が下がると慢性疼痛が酷くなるためには、気圧の変化を検出するセンサーが体内にあるはず。そのセンサーは、内耳にある可能性が高い。証拠は、内耳破壊ラットは低気圧による疼痛がなかった。ムチ打ち傷など首を痛めた患者が、片頭痛、めまい、立ちくらみなどの症状があると、天候次第で痛みが酷くなる。首の交感神経が、外傷などで傷ついて「天気痛」の引き金になっている。
▽天気を変えることはできない。医師が「天気痛」に共感するだけでも、患者の痛みの程度は違ってくるはず。患者に自律神経の乱れを自覚させて、起床と就寝のリズムを整える。昼間は日光を浴び、なるべくストレスがかからない生活をする。自律神経調整作用のある漢方薬を服用するのもいい。








