como siempre 遊人庵的日常

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2016輝け!真田丸アカデミー賞

2017-01-03 22:38:28 | Cafe de 大河
はい、年内に総括するとかいいながら、年を越してしまいました。このままスルーも気持ち悪いので、せっかくですから遅ればせながら真田丸の振り返りをやりたいと思います。


全体の感想と今後の大河ドラマのこと。

 去年の年明け、これは久しぶりに1年間大河ドラマにわくわくできる、と小躍りしたのが遠い日の夢のようですが、夢はやはり夢でした。
 お正月に、NHKでやってる、民放含めて去年の話題番組について現場のプロデューサーや芸人やなんかがあれこれ言う、という座談会形式の番組をみました。それ見てつくづく、「これはもう大河ドラマなんか作りようがない」と思いました。
 いや、作りようがないわけじゃないけど、1年にわたって人気を維持して話題になりつづけるのは、昔の大河ドラマの正攻法のドラマ手法ではどうやっても無理だということです(世帯視聴率なんか何の意味もないのは言うまでもない)。というのは、今時の若い子はスマホで配信されるドラマを見ているわけですよね。この傾向は、年が改まってさらに加速するであろうと言ってました。わたしはスマホでテレビ見たことはないんですが、手のひらでチャチャッと、それこそ5分、10分の暇つぶしに見るのと、1年間決まった時間にテレビの前にすわり、45分動かずに1本のドラマを見続けるのとでは、どっちを前提にするかでドラマの作り方は根本的に変わるであろうと思うのです。
 真田丸が実際どういう作り方をしてるかは知りませんが、どうも、テレビの前で続けてリアタイ視聴してる人を対象にしてるんじゃない、というかそうでない新しい視聴者を相当意識してるだろうというのは、ひしひしと伝わってきました。具体的にいうと、とにかくその場限りの小ネタが多い。本筋の流れを邪魔するくらい多い。
 とにかく、SNSで実況されて話題になったり、拡散されてネタ化したりの「いじられ前提」というコンテンツの性格がすごく強かったと思うんですよね。これはいままでの大河ではなかったことで、最初のうちこそ騙されて面白がってましたけど、だんだん話自体が大きく動かないのでいらついてきて、連打されるネタに怒りを覚えるようになってきました。なにか常に話題になってることで作品的にも優れているように誤解されてしまうけど、そういう誤解を狙ってやってるなら、ちょっともう、大河ドラマとしては勘弁してほしいと思います。
 小ネタばっかりやっていたら当然ながら、1年にわたって滔々と流れていく大きなドラマのスケール感はなくなります。そのスケール感が大河ドラマでいちばん見たいところですし、個人的には真田丸でいちばんガッカリしたところでもありました。
 わたしはきっと古いんでしょうし、もうこの世から消え去ったものを空しく求めているのかもしれません。そういうものは、これからはもう、古いドラマの再放送に求めるしかないのかもしれないけれど、手のひらのスマホ上で見られる前提で、ネタ提供コンテンツとしてつくられる大河ドラマがこれからも見たいかといったら、それはもう結構ですというしかありません。



 といっても、さすがに大河ドラマなので、名作駄作にかかわらず当代屈指の役者さんを集めて、豪華に繰り広げるドラマには見ごたえがあります。忘れられない名場面もたくさんあります。
1年間を振り返りつつ、今年もアカデミー賞形式で、1年間楽しませてくださったスタッフ・キャストの皆様を顕彰したいと思います。


天晴れ主演男優賞 (今年は特に3名様に送ります)

堺雅人(真田信繁=幸村)

 実は最終回直前まで、今年は残念主演男優賞の筆頭候補でした。でも、最終回の雄姿が本当に文句なしだったので、それから最初からの振り返り回想シーンでの若いじぶんが、思わず胸打たれるほどナチュラルに初々しかったので、やっぱり大河の主演男優ってすごいな、選ばれた人だなと思い、あらためて顕彰するしだいです。よく1年間、9割以上受けにまわってドラマを回してこられたと思います。大河ドラマの主役としては主役にふさわしい見せ場がもっともっとあって良かったと思いますけど…。それでもなんとかなったのは、やっぱりこの人だったからなのでしょう。お疲れ様でした。

草刈正雄(真田昌幸)

 大河のキャストが発表になったとき、このキャストだけでもう何もいらない…と涙がにじむくらい感動したのを覚えています。ドラマの出来がどうであろうと、「真田太平記」で幸村だった草刈さんが昌幸を演じたことの意味深さは揺るがないと思います。ほんとうに、草刈さんの存在だけでドラマ自体が救済された場面が何度あったか…。真田太平記では、草刈さんの幸村が父親の昌幸(丹波哲郎さん)に何気に似てくるのが凄くよかったんですが、こんどは草刈さんが演じる昌幸に堺さんの幸村が終盤なんとなく似てくるという重層さは、長年大河ドラマを見ている身ならではで、うれしくかみしめて見ました。死んで退場してからは思い切りよくほとんど回想シーンにも出なかったのもかっこよかった。

内野聖陽(徳川家康)

 今年の家康は、とにかく伊賀越えの場面で視聴者をわしづかみにしてきました。小心でオロオロしていて、苦手な戦がやりたくないばっかりに頑張って戦の無い世を作ってしまった家康の人生を、終始一貫ぶれずに見せてくれて素晴らしかったです。最終回の幸村との決戦が、伊賀越えの再現みたいな展開で終わるのも納得のオチでした。内野さんも、朝ドラ男優出世組としては、「大河ドラマの主演」から「大河ドラマのトメ枠」というところまで極められ、後進の男優陣に先鞭をつけられた功績も大きいと思います。


天晴れ主演女優賞


長澤まさみ(きり)

 最初のうちはどーなるんだろうと思い、この子が面白くなったら拍手してやるというくらい、痛くてウザい邪魔者キャラだったのが、最終回では拍手してました。すばらしい。最初から強烈な違和感を放って、最初から最後までいつも居た彼女が、結局一番終始一貫していて、その奇妙な一貫性で物語を大きくまとめるという離れ業。これは「新選組!」で捨助(中村獅童さん)が近いことやりましたけど、それをさらに昇華させた、ある意味ウザキャラの完成形、大河の架空キャラの完成形として語り継がれていいと思います。長澤まさみさんも、大河ドラマでは長年ろくな役に当たりませんでしたが、こんな形で輝くとは思いませんでした。


天晴れ助演男優賞

殊勲賞 村上新悟(直江兼続)

技能賞 近藤正臣(本多正信)

敢闘賞 星野源(徳川秀忠)

 この枠争いは毎年熾烈で、今年もいっぱい顕彰したい人はいるけれど、涙を呑んで選んだのがこのお三方。村上新悟さん、見事なブレイクでした。今後30年救済は不可能だろうと思われた愛の兜の泣き虫武将のダメージを見事上書きして、直江兼続を救ってくださった功績は多大なものがあります。おなじみ近藤正臣さん、NHKで見ない年はないくらいですけど、それでも加野屋の大旦那にも今津屋の番頭にも混ざらずに本多佐渡を演じきったのはさすがと思います。そしていま最旬の星野源さん。やっぱり勢いある人は違う。フレッシュでどっかヘンな秀忠で、すごく新鮮でしたし、最後はグッときました。


天晴れ助演女優賞

殊勲賞 斉藤由貴(阿茶の局)

技能賞 草笛光子(とり)

敢闘賞 長野里美(おこう)

 意外ですけど、いわゆる定型のヒロイン枠というのがあまりいい出来にならず、あまり狙ってない感じの周辺の人たちが輝いて、その輝きに便乗的に出番やエピソードが増やされてストーリーに味を添えたのが印象的でした。特に斉藤由貴さんは、美しくて知的で感じもよく、でも徹底的に食えない、熟練の生保レディーみたいですごくよかった。コントを決してドタバタさせないエレガントなたたずまいもよかったです。草笛光子さん、まったくお変わりありませんがなに食ってらっさるんでしょうか。置物みたいな婆さんだけじゃなく活劇もいきいきこなしてらして、すごいの一歩先を行く、ある種の衝撃をもって見てました。そして、みごとなブレイク長野里美さん。まさかあの役のあのキャラでブレイクするとは思いませんでしたが、病弱で老けて見えた女性が家の危機とともにどんどん元気になり、美しく変貌していくすがたは意外性もあり、目を瞠るほど。こんな女性キャラ過去の大河にもいなかったと思います。


残念主演男優賞

大泉洋(真田信之)

 決して大泉洋さんが悪いわけではないのですが、とにかく信之をこんな人にしてしまったのは、個人的にも許せなかったです。改名のところと、犬伏の陣で決別を宣言するところはすごくよくて、ああこれで救済されたと思ったのですが……。なんなんでしょうか。製作者の勘違いした、真田太平記の逆をやって滑ってしまった浅はかな企画にほとんどみんな絡んでいて、犠牲者としか言いようがありません。

小日向文世(豊臣秀吉)

まさか小日向さんに残念賞を進呈するとは思いませんでした。とにかく、この秀吉がストーリーとは関係なくよくできていすぎて、ストーリーの許容範囲を超えて長く引っ張って話をもてあそんでしまったので、中盤迷走し、それがこのドラマの敗因の大きな要素だったと思います。


残念主演女優賞

(今年は該当者なし)


残念助演男優賞

殊勲賞 遠藤憲一(上杉景勝)

技能賞 寺島進(出浦昌相)

敢闘賞 哀川翔(後藤又兵衛)


 この残念枠も選ぶの大変でした。決して役者さんの罪ではないので、脚本上のキャラクター的に破綻したり、うまく落とし前をつけられなかったり、思ったほどうまくキャラが立たずに滑って終わってしまった代表格としてこのお三方を上げたいと思います。やっぱり、大河ドラマは人間のドラマでもあるので、人間のからみをそんなに深く濃い因縁をからめて描けてなかったから、このように浮きっぱなしで終わってしまうキャラクターも出てくるのでしょうね。


残念助演女優賞

殊勲賞 吉田羊(稲)

技能賞 高畑淳子(薫)

敢闘賞 八木亜希子(小野お通)


総じて女性の描き方はコケていて、あまりうまくいってなかったのですが、吉田羊さんの稲姫は、ずーっと鬼瓦みたいな顔してた印象で、もっと可愛いところも上手く描くやり方があったんじゃないかと残念。高畑淳子さんは、予想外の身内の騒動に持っていかれちゃったみたいでこれも残念。面白かったんですがねえ。あと、八木亜希子さん。ご本人の意図したところではなかったにしても、真田太平記のファンには決して許せないメガトン級の爆弾を落としてくださいましたね。全編通して一番腹立ったという意味では、チョイ役にかかわらず他を圧倒しておられました。


 それでは、もう来週から新しい大河ドラマも始まってしまいますけど、以上を持ちまして2016年を彩った真田丸の関連企画はすべて終了といたします。長らくお付き合いくださいまして、どうもありがとうございました。