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法律に関する情報等を掲載します。
なお、情報等の正確性の最終判断は、皆様方でお願い致します。

小さな会社だけど、監査役の権限を会計監査+業務監査にしたい!

2006-04-29 | 中小企業のための新会社法
グループ会社の子会社管理についてよく相談を受けますので、ここで回答しておきます。


【大原則】
会社法381条1項では、監査役は、会計監査と業務監査の両方を行う権限がある旨規定されています。


【例外】
ところが、会社法389条1項では、「公開会社でない株式会社(監査役会設置会社・会計監査人設置会社は除く)」では、「定款」で、監査役の権限を、会計監査に限定することができる旨規定されています。
ここまでは、一般的な書籍にもよく記載されています。


【整備法で経過措置が!】
整備法とは、正式には「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」といいますが、長いので、ここでは単純に整備法といいます。
この整備法53条では、旧商法特例法上の「小会社(=資本金が1億円以下かつ負債が200億円未満の会社)」は、監査役の権限を会計監査に限定した定款を定めたものと「みなす」とされています。
従って、小会社は、否が応でも、監査役の権限は、会計監査に限定されていることとなります。


【業務監査まで拡大したいのであれば定款変更を!】
もっとも、グループ会社の場合、通常は、親会社の役員等が監査役となり、子会社の経営状態を監視しているのが実情です。
特に、会社法で内部統制義務を課せられている大会社からすれば、監査役の権限拡大は必須のものと言えるでしょう。

ところが、法律を勉強した人であれば陥る「罠」がここに潜んでいます。
それは「みなす」という規定です。
法律を勉強した人は、「みなす」とされている以上、反対の事を定めてはダメなのでは?と思ってしまうのです。

しかし、この整備法の立法担当者は、次のように解説しています。
「定款の変更を禁止するような定めがない限り、あるものとみなされた定款の定めについて、これを定款変更手続きによって変更することは差し支えない」

色々と書きましたが、要は、定款変更さえ行えば、監査役の権限を業務監査まで拡大することがOKということです。


【定款変更の際の注意点!】
ただ、単純に監査役の権限を拡大する旨の定款変更を行ってしまうと、思わぬ落とし穴に落ちてしまいます。

それは、定款変更を行ったばっかりに、法律上の要件を満たす監査役が選任されていない!!という事態に陥ってしまうことです。

つまり何を言いたいかというと、
○定款変更前まで=監査役の権限は会計監査のみ(会社法施行前であっても商法特例法で権限は会計監査のみと定められています)
○定款変更後=監査役の権限は会計監査+業務監査
という権限変更が生じます。

ところで、今まで選任されていた監査役は、あくまでも会計監査のみを行う監査役として選任されていました。
裏を返せば、業務監査権限まで付与することを認めて、株主より監査役として選任されたわけではありません。
そのため、監査役の権限拡大を図った瞬間、今までの監査役は不適任者となり、監査役を退任したことになってしまうのです!!
従って、定款変更の決議後、必ず監査役の選任決議を行う必要があります。
この点は注意が必要です。


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経営組織(機関)に関する改正概要

2006-04-01 | 中小企業のための新会社法
1.経営組織の柔軟化
 いままでの株式会社では、株主総会、取締役3人以上、取締役会を構成、さらに監査役…と人数が多い。
 今後は株主総会は必要だが、取締役1名(オーナー)、監査役も不要とスリム化が図れ、余計な役員報酬も不必要に。


2.取締役・取締役会
○自己破産で復権していなくても取締役への就任が可能→技術・能力のある人は、経済的な再起更正のチャンスも。
○取締役の解任は普通決議でOK
 これまでは株主総会の3分の2(特別決議)→過半数
○株主譲渡制限会社なら取締役の任期は2年(最長10年)&株主から選任可能
 但し、有限会社から変更する場合は要注意。(任期なし→2年)
○取締役の責任一部免除制度
 無過失責任なら義務を免除。取締役の責任は報酬額で制限。
○取締役会の持ち回りの書面決議、電子メール決議可…(事実上の現状追認!>)
 ただし取締役の同意と監査役が意見のないことが必要。


3.監査役
○権限は業務監査と会計監査
 ただし株式譲渡制限会社であれば会計監査のみにすることもOK。
○任期は原則4年。(株式譲渡制限会社であれば10年まで延長可能。)


4.会計参与…取締役と共同して計算書類の作成・説明・開示等を行う。
 決算等の信頼性が高まるので、銀行からの融資が得やすくなるメリットはあるが、定款を変更して公認会計士(監査法人含む)と税理士(税理士法人を含む)を頼む費用が発生するので、そのあたりは費用対効果をみて導入すべし。





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会社設立に関する改正の概要

2006-04-01 | 中小企業のための新会社法
1.資本金規制が撤廃
 ただし、既に設立済みの確認会社(いわゆる1円会社)の場合、定款変更が必要!!(定款変更がないと、5年以内に資本金1000万円集めないと解散)


2.類似商号規制の廃止(「会社の目的」についても記載基準が緩和)
 いままでは登記時によく似た商号がすでにあると受け付けてもらえなかった。
 しかしインターネット等の発達で、小さな企業でも全国に広告ができるようになり、規制自体が意味をなさなくなりつつある。
 ただし同住所同商号はダメ。会社設立はできるが、「不正競争防止法」「商標」の網はかけられる。


3.合同会社が新たに認められた。(個人事業と株式会社のイイトコどり)
○LLC(合同会社)
 対象:合弁等の共同事業 税務処理は法人税
 メリットは設立費用が安い程度…。使い方も難しいのでは??
○LLP(有限責任事業組合)→会社ではない。
 対象:産学連携等の共同事業 税務処理は構成員の所得税


4.発起設立の場合は払込金保管証明が不要
 従来資本金を払い込んだという銀行の証明はなかなかやってくれず、またコストも10万円程度かかるので、設立の弊害になっていた。
 募集設立(定款に署名した発起人以外も設立に加わる場合)は引き続き必要。


5.有限会社が設立不可!
 新会社法から有限会社の文字が消えるため、新たに有限会社として起こすことができない。
 株式会社になることのデメリット
 ・取締役の任期が、無制限→2年(最長10年)となり、登記手数料がかかる。
 ・決算公告が必要になる。




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会社法を理解するためのキーワード

2006-03-21 | 中小企業のための新会社法
あえてキーワードしてあげるのであれば、

①定款自治
②株式公開会社、株式譲渡制限会社の意義

になると思います。


①「定款自治」について
→定款とは会社の事業目的や組織を定めたものです。

 新会社法は必要最小限のことしか決めていません、そこで、あとのことについては会社の定款で書いたら、あとはある程度自由にしてかまわないというのが基本的スタンスとなっています。
 しかし、「その自由」を定款に入れる(定款変更を行う)ことをしない限り、会社法のメリットを受けられません!!(ゼッタイ必要)



②「株式公開会社」→株式の売り手と買い手が自由に売買している会社。(上場とは関係なし)
 「株式譲渡制限会社」→全ての株式の売り買いを会社が制限できる会社。


*今後は会社は次の4つに区分できます。

 A.大会社で株式譲渡制限会社
 B.中小会社で株式譲渡制限会社
 C.大会社で株式公開会社(一部譲渡制限を含む)
 D.中小会社で株式公開会社(一部譲渡制限を含む)

 大会社は資本金5億円以上または負債200億円以上
 中小会社は資本金5億円未満かつ負債200億円未満



 なお、有限会社という形態は会社法からはなくなってしまう(なお、特例有限会社という形で従前の有限会社は存続します)。





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会社法は何のために制定されたの?

2006-03-21 | 中小企業のための新会社法
【法務省のHPによると…】
・最近の社会経済情勢の変化への対応等の観点から、最低資本金制度、機関設計、
合併等の組織再編行為等、会社に係る各種の制度の在り方について、体系的かつ
抜本的な見直しを行っています。
・商法第二編、有限会社法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する
法律等の各規定を、現代的な表記に改めた上で分かりやすく再編成し、新たな
法典(会社法)を創設しています。


まず知っておきたいのが、
そもそも新会社法に対する「旧会社法」は存在しない!ことです。

今までは、『商法第二編「会社」+商法特例法+有限会社法』など色々な法律にまたがって規定されていましたが、
  ↓
H18.5以降は『会社法』として、一つの法律にまとまります。



なお、あえて会社法制定の目的を分かり易く考えるのであれば…

いままでの法律は企業も動きづらく、またコストもかかった。そこで、無駄な
手続きを省き、コストの削減を図ること。

にあると言って良いと思います。





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