グループ会社の子会社管理についてよく相談を受けますので、ここで回答しておきます。
【大原則】
会社法381条1項では、監査役は、会計監査と業務監査の両方を行う権限がある旨規定されています。
【例外】
ところが、会社法389条1項では、「公開会社でない株式会社(監査役会設置会社・会計監査人設置会社は除く)」では、「定款」で、監査役の権限を、会計監査に限定することができる旨規定されています。
ここまでは、一般的な書籍にもよく記載されています。
【整備法で経過措置が!】
整備法とは、正式には「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」といいますが、長いので、ここでは単純に整備法といいます。
この整備法53条では、旧商法特例法上の「小会社(=資本金が1億円以下かつ負債が200億円未満の会社)」は、監査役の権限を会計監査に限定した定款を定めたものと「みなす」とされています。
従って、小会社は、否が応でも、監査役の権限は、会計監査に限定されていることとなります。
【業務監査まで拡大したいのであれば定款変更を!】
もっとも、グループ会社の場合、通常は、親会社の役員等が監査役となり、子会社の経営状態を監視しているのが実情です。
特に、会社法で内部統制義務を課せられている大会社からすれば、監査役の権限拡大は必須のものと言えるでしょう。
ところが、法律を勉強した人であれば陥る「罠」がここに潜んでいます。
それは「みなす」という規定です。
法律を勉強した人は、「みなす」とされている以上、反対の事を定めてはダメなのでは?と思ってしまうのです。
しかし、この整備法の立法担当者は、次のように解説しています。
「定款の変更を禁止するような定めがない限り、あるものとみなされた定款の定めについて、これを定款変更手続きによって変更することは差し支えない」
色々と書きましたが、要は、定款変更さえ行えば、監査役の権限を業務監査まで拡大することがOKということです。
【定款変更の際の注意点!】
ただ、単純に監査役の権限を拡大する旨の定款変更を行ってしまうと、思わぬ落とし穴に落ちてしまいます。
それは、定款変更を行ったばっかりに、法律上の要件を満たす監査役が選任されていない!!という事態に陥ってしまうことです。
つまり何を言いたいかというと、
○定款変更前まで=監査役の権限は会計監査のみ(会社法施行前であっても商法特例法で権限は会計監査のみと定められています)
○定款変更後=監査役の権限は会計監査+業務監査
という権限変更が生じます。
ところで、今まで選任されていた監査役は、あくまでも会計監査のみを行う監査役として選任されていました。
裏を返せば、業務監査権限まで付与することを認めて、株主より監査役として選任されたわけではありません。
そのため、監査役の権限拡大を図った瞬間、今までの監査役は不適任者となり、監査役を退任したことになってしまうのです!!
従って、定款変更の決議後、必ず監査役の選任決議を行う必要があります。
この点は注意が必要です。
※よろしければこちらもご覧下さい。
インターネット・電子(IT)取引、労務・労使・労働問題、フランチャイズ、債権回収を中心業務にしている弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の法律情報ページ
【大原則】
会社法381条1項では、監査役は、会計監査と業務監査の両方を行う権限がある旨規定されています。
【例外】
ところが、会社法389条1項では、「公開会社でない株式会社(監査役会設置会社・会計監査人設置会社は除く)」では、「定款」で、監査役の権限を、会計監査に限定することができる旨規定されています。
ここまでは、一般的な書籍にもよく記載されています。
【整備法で経過措置が!】
整備法とは、正式には「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」といいますが、長いので、ここでは単純に整備法といいます。
この整備法53条では、旧商法特例法上の「小会社(=資本金が1億円以下かつ負債が200億円未満の会社)」は、監査役の権限を会計監査に限定した定款を定めたものと「みなす」とされています。
従って、小会社は、否が応でも、監査役の権限は、会計監査に限定されていることとなります。
【業務監査まで拡大したいのであれば定款変更を!】
もっとも、グループ会社の場合、通常は、親会社の役員等が監査役となり、子会社の経営状態を監視しているのが実情です。
特に、会社法で内部統制義務を課せられている大会社からすれば、監査役の権限拡大は必須のものと言えるでしょう。
ところが、法律を勉強した人であれば陥る「罠」がここに潜んでいます。
それは「みなす」という規定です。
法律を勉強した人は、「みなす」とされている以上、反対の事を定めてはダメなのでは?と思ってしまうのです。
しかし、この整備法の立法担当者は、次のように解説しています。
「定款の変更を禁止するような定めがない限り、あるものとみなされた定款の定めについて、これを定款変更手続きによって変更することは差し支えない」
色々と書きましたが、要は、定款変更さえ行えば、監査役の権限を業務監査まで拡大することがOKということです。
【定款変更の際の注意点!】
ただ、単純に監査役の権限を拡大する旨の定款変更を行ってしまうと、思わぬ落とし穴に落ちてしまいます。
それは、定款変更を行ったばっかりに、法律上の要件を満たす監査役が選任されていない!!という事態に陥ってしまうことです。
つまり何を言いたいかというと、
○定款変更前まで=監査役の権限は会計監査のみ(会社法施行前であっても商法特例法で権限は会計監査のみと定められています)
○定款変更後=監査役の権限は会計監査+業務監査
という権限変更が生じます。
ところで、今まで選任されていた監査役は、あくまでも会計監査のみを行う監査役として選任されていました。
裏を返せば、業務監査権限まで付与することを認めて、株主より監査役として選任されたわけではありません。
そのため、監査役の権限拡大を図った瞬間、今までの監査役は不適任者となり、監査役を退任したことになってしまうのです!!
従って、定款変更の決議後、必ず監査役の選任決議を行う必要があります。
この点は注意が必要です。
※よろしければこちらもご覧下さい。
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